返り討ちと暗黒商人
また1件ブクマを増やして頂いてありがとうございます。今日もお楽しみ頂けると幸いです。
メディさんに裏口を教えてもらって移動して、近くの目の届くところに待機してもらう。裏路地に潜んでいた二人は笑いながら立ち話をしていた。
「楽な仕事だな」
「逃げてくる女を確保するだけか」
「髪の毛を切って攫った証拠置いてメッセージカードを残しておけばあとは好きなようにしていいんだとよ」
「へっへっへ。それは楽って言わねぇよ。楽しい仕事だ」
不愉快だった。速攻で制圧する。声を出せないように、街中で出せる速度で近づいて二人とも喉を潰す。足元で目を赤くして喉をおさえてもがいている。
死んでないよね?大丈夫だよね。奴らの服を切って手を縛り、口に咬ませた後、ポーションをぶっかけて治癒する。右手で準備しながら、左手で静かにするようにジェスチャーをする。気が付いた男二人は怯えながら俺のすることを見ている。
アイテムボックスから取り出したのは一抱えするくらいの太さの木材で、準備しているのは風魔法の『風盾』だ。『風盾』は出来る限り薄く作って回転させる。何のおかげかわからないが魔法の条件付け操作がしやすくなっている。『連魔』かな。夢が広がるが、実験はまた今度だ。
立てかけておいた木材を『回転風盾』でスパスパ切りながら説得する。
「さすがに四肢を切り落としたくは無いんだ。大人しく捕まってくれないか」
言い終わる前には頷いていた。
持ち物を取り上げてから調べてみると捕縛係のようだ。縄とか目隠しや口を塞ぐ用の布を持っていた。おまけに薬品まで持っていた。そこまでやるのか~。ははは。
後ろ手に縛り、背中合わせに座らせると縄を繋げた。足も縛ったのでよほど息を合わせないと立つことすら出来ないだろう。逃げられないように言付けだけしておく。
「逃げたらどこまでも追いかけて首を切る」
顔からいろんな水分を出しながら頷いていたので大丈夫だろう。表への対処があるので捕獲だけで今度はそちらに回ることにした。
メディさんには奥の部屋で可能な限りの抵抗をしておいてもらう。俺が侵入を許さなければ逃げるより安全だ。街中に協力者がいる可能性もある。
というわけで表に回るが扉をガンガン叩いていた。
「おい!ちょっと頼みたいことがあるって言ってるだろう!出てこい!」
裏の処理をしている間に穏便に呼び出す振りは終わったようだった。荒いなぁ。扉を壊されたらたまらないからまずは外に出よう。
「はいは~い、今出ますよ」
外に出ると4人が怪訝な目で見ている。メディさんが出てくるはずが、武装した男が出てくればそうなるか。
「なんだ?てめぇは」
「中にいた客ですよ。うるさかったから代わりに出てきたんです。何か御用ですか?」
「あぁ?中に入れろ。もしくは女の店長を呼べ」
「えぇ~?裏も封鎖するような物騒なお客さんには店長は出せないね」
殴りやすい位置に顔がきてたから顔面を殴る。見事に落ちてくれた。行動に移られる前に残りの3人も同じ道を辿ってもらった。
あっけないけどこれにて終了。兵士が来るまでに起こしてさっきと同じようにお話ししておこう。
10分ほどさっきと同じだと芸が無かったので、練習中の風魔法で空を飛ぶ練習台になってもらった。操作が難しいのでとてもじゃないが自分ではやりたくなかった。
4人とも泣いて感動してくれたみたいだった。その後6人まとめてしっかりとお話をした。あとは空中に『風球』を放って破裂させる。流石に通報された兵士が来てくれた。はた迷惑な連中は街の兵士に引き取ってもらった。
☆ ★ ☆ ★ ☆
そして2時間後、俺はまだメディさんの店にいる。ただし、人が一人増えている。増えたのはザールさん。目の前で正座している。見つけてここまで連れてきたのは俺だ。晩ご飯も食べずに探し回った。メディさんはザールさんの前に仁王立ちしている。
俺は探している間にメディさんが作ってくれた晩ご飯を頂いている。メディさんはかなり料理上手だ。このシチューめっちゃおいしい。量が一般的だったのでちょっと足りないけどそれはあとで自分のアイテムボックスから出して食べて補うことにしよう。
「イレブン君、全部終わるまで秘密にしようって言ったのは君でしょう」
「ザールさんがメディさんに内緒にしていたのは別件でしょう。というかメディさんって人がいたことも知らなかったんですから配慮のしようが無いです。それに巻き込まれたメディさんに事情を説明しないわけにいかないでしょ?」
本当は巻き込まれる前にはバレて話してたけど。自分が不利になる可能性が高いからここでは伏せておこう。
「とりあえず話は分かった。あたしに心配をかけないようにってことも。でも標的にされたからにはもうあたしも関係者だ。除け者にされるのはごめんだからね
「分かりましたよ。で、相手はどんなやつらだったんです?」
「ただのゴロツキでしたよ」
「あたしが聞いたのは、兵士たちも手を焼く性質の悪い集団だったらしいけどね。近頃流れてきたよその冒険者らしいよ」
「えぇ?あれで冒険者?兵士の基準も低すぎません?本気で弱かったですよ?」
「それはまた今度で。イレブン君が強いのは分かりましたから」
戦闘スキル以外にもスキルを色々と取得してるからレベルの割にまだそこまで強くないんだけどな。認識がズレているらしい。十分に強い基準か。人間相手って言ってもPVP基準で考えてもいけないか。気を付けよう。
「で、そいつらは誰の差し金だったんです?」
「顔は分からなかったけど、金で釣られたそうですよ。割と激しめに脅して口を割らなかったから嘘じゃないと思います」
「イレブン君基準で激しめ?」
「人の胴くらいの太さの木材をスパスパ切れる魔法を使ったり、空に人を飛ばしてたよ」
魔法って楽しいよね。そ~ら~を自由に…って怒られるか。
「想像が追いつきませんが、まあ口を割らなかったのなら知らないと判断して良いのでしょう」
「続き良いですか?で、日時指定でメディさんを襲うように指示されてたみたい。で、明日メディさんを連れてくるように指定されていたのはユーフラシアから東に出てしばらく行った野原だって」
「……そこでまとめて口封じですかね」
「たぶん。これってザールさんもまとめて恨まれてませんか?」
「理由は聞きたいところですが、既に関係無いところまで来てしまいました。さすがにメディに手を出されて温厚に済ますつもりはありませんから」
「くっ。こんなときばっかり調子良いこと言って…!」
「せめて僕が帰ってからにしてくれませんかね」
さすがに顔見知りが赤面するような場面は俺も恥ずかしいから。見えないところでやってほしい。目元が隠れてるっていっても、もうメディさんが赤くなってるのは分かるぞ。
ザールさんはキメ顔してるけど正座ですよ?そして正座してる相手に顔を赤くするとかどんな状況?
「イレブン君、既に状況は変わりました。手段は問いませんので、徹底的に追い詰めることにしましょうか」
「明日はデテゴさんが死ぬって言われている日でしょう?どんな感じでいくんですか?」
「その前にイレブン君、遅くなりましたがメディを助けてくれてありがとう。感謝してもしきれません。」
「あたしからも。何度礼を言っても言い足りないよ」
「いえいえ気にしないでくださいよ。僕も目的があってここに来ただけですから」
「それです。何の目的があってここに来たのか教えてもらいましょうか」
え?こわ。今まであった中で一番の恐怖をザールさんから感じる。返答を間違うと危険だ。SPポーションについてはメディさんにも言っているからまあ正直に言うしかないか…。
「SPポーションですか。変わった子だとは思っていましたが、そんなに必要なのですか」
「はい。差し当たって1000本くらいは欲しいんですけど、そんな回数を何もせずに原液を飲んだら頭がおかしくなる可能性があるので」
「まああれはそれだけまずいですからね。理由は分かりました。メディのところに来た理由も分かりました。それなら恩があるのは私も同じです。噛ませてもらいましょうか」
「材料調達とか規模大きくしていこうと思ったら相談相手が欲しかったんです。助かります」
「ええ。構いませんよ。説明を聞く限り、イレブン君はSPポーションがあれば更に強く仕上げていくことが出来るんでしょう?」
「えっ、はい…」
お~い。魔法使えないはずのザールさんから黒いオーラが出てるぞ~。
「相手が人を雇って襲撃するという手段を取ってくる以上、こちらも分散しない方が楽です。ですが、イレブン君という手札を切らないのももったいないので―――」
俺が一番いそがしい役割だった。あれ?なんか色々まとめてやり返されてる?
お読みいただきありがとうございました。
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