意外なつながりと彼の余命宣告??
お楽しみ頂けると幸いです。
1日2投稿していたときの誤字報告をたくさんもらいました。いつもありがとうございます。勢いだけだったのが良く分かります。今がマシなのかの自信もないですけどね。
「先程は失礼した!」
バイスは目の前まで来ると腰から直角に折った謝罪をしてきた。悪感情は無く申し訳なさいっぱいというのが近寄ってきたときの表情からも溢れていたので謝罪はしてくるのだろうと思ったが想像以上の角度で折れていた。一応家名持ちの貴族だよな?とりあえずやめさせよう。
「いやいや、待って。それは頭下げ過ぎだって」
「き、気にしてませんから」
リセルも同じことを感じたようで同調している。気まずいったら無いが、周囲はまたやってると言わんばかりの笑顔だ。もしかしなくてもここまでがこの人のワンセットなのか!
その後も何度か言うことでようやく頭を上げてくれた。いつもよりも長いという声も聞こえたのでそれだけリセルに心を奪われたのだと思う。これ以上は聞いてみないと分からないけど。
正直、俺はどうリアクションするのが正解か困る。
「全くもって僕の行動が迂闊だった。謝罪の気持ちをどうか受け取ってほしい」
「受け取ってますから、申し訳ないと思うのであれば頭を上げてください」
「分かった。従おう!」
ゴリ押しの謝罪は初めて見た。耐えきれずにリセルが頭を上げさせることには成功したが。よく見たら俺にも頭を下げていたようで目線が「キミは許してくれたのか」と訴えてくる。
「あ~、俺も受け入れるんで」
「ありがとう!勇気と優しさあふれる行動を取れる上にこんな恥知らずの僕を許してくれるなんてキミたちはなんて良い人たちなんだ!」
「本気で恥ずかしいからやめてくれるかな!?」
打算的に考えてたし、初めはあんたのこと結構疑ってた自分が少し恥ずかしく思ってしまうから!
「では、バイス様。謝罪も受け入れて頂けたことですし、落ち着いて食事といきましょう」
さっき話したお付きの魔法使い、名前はパーヴィだったかな。そいつが寄って来て助言してくる。
「うん、そうだね。よければ一緒にどうだろうか」
どうだろうって聞くならその捨てられた子犬みたいな目はやめろ。
「分かった。リセルも良いよな」(断ったらいつまでも付いて回りそうだし…)
「イイよ。さすがに」(悪意ってよりも善意で言ってるみたいだから断れないよね…)
お互いの言葉の続きを感じ取りながら同席することにした。
席に移動しながら見た感じではロイーグさんたちも先程の乾杯で食事を始めているし、そちらはそちらで任せておいて大丈夫だろう。
まあ純粋に楽しませてもらおう。おいしい料理があればレシピでも教えてもらえるだろうか。今動いているフレンドビーたちにふるまうことも忘れずにしておかないとな。
移動距離もそんなに無いのですぐにテーブルに着く。改めて6人席に座らせてもらう。
「キミたちは酒は飲むのかい?」
「飲めないことは無いが明日も朝から動くつもりだからやめておくよ」
「そうかい。無理はしないようにね」
「ありがとう」
バイスを話している間にパーヴィと他2人が適当に注文をしてくれていた。そこそこ滞在しているようで好みやお勧めがあるみたいだ。
「では、改めて自己紹介といこうか。僕の名前はバイス・キザッシュだ。常に高潔であれという家訓を持っている。察してしまったかもしれないが貴族の生まれでね。家族に迷惑をかけないようにと自分で名を上げる旅の途中なんだ。これ以上はまた後で話すことにしようか。こちらの3人も紹介させてもらおう。僕について来てくれたお付きとは呼んでいるが、腹心、親友たちだ」
この時点で評価を改めることにした。基本的に貴族なんて血しか誇ることをしない自分の力では何も成しえない奴らだと思っていた。そんな奴ばかりではないけどもマイナス目線から入ってしまう存在だと思っていたのは否めない。
しかし、家の命令か単なる心配からかは知らないが一緒にいるお付きをためらいなく親友と呼ぶバイスは良いやつだ。貴族としては失格かもしれないが、友人として付き合うなら面白いやつなのだろうと思う。
わずかに持っていた警戒心を全て捨てて接することにした。わずかにリセルも微笑んだ気がするし。
「こっちの体が大きいのがグーボンだ。重戦士をやってくれているから顔が見れるのは珍しいぞ。体格は見た通り大きいんだが気は小さい。戦闘のときは全く違うけどね」
「よ、よろしくお願いするだ」
「こちらこそよろしく」
「よろしくね」
次は体の小さい人だ。普通の人間というよりはハーフリンクに近いのかな。ギリギリどちらとでも言える感じだけども。
「次はフチョキだ。彼には斥候を担ってもらっている。体格は一番小さいのだが、細かいことが得意だし短剣やら短弓を使ってくれるので牽制が得意だな。魔物の接近に一番早く気づいてくれるのも彼だ。罠とか何となくのにおいで察知することが出来る。斥候としては優秀なことが自慢さ」
「へへ。バイス様、やめてくださいよ」
「優秀なのは事実じゃないか」
「だめだこりゃ。俺はフチョキと言いまさぁ。昔は小さい体に思うところはあったが、今はそれで良かったと思ってる。気にしないでくだせぇ」
リセルに少し目くばせをしたあたりで察したが、何も言わないのが正解のようだ。触れないでおこう。
「わかりました。よろしくお願いいます」
「お願いします」
最後は先程も話した彼だ。
「最後はパーヴィだな。既に少し話してくれていたらしいね」
「ええ。先程お話させていただきました。魔法使いをしております。ちょうど2人とくらべると中くらいだと覚えて頂ければ良いかと。魔法の中では土属性を得意としております」
「そうなんですね。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「なんだい。あっさりしてるねぇ。パーヴィはね、生活魔法をがんばって練習した努力家なんだよ。しかも、役に立つと思ったんでって一言で済ますんだから驚いたよ」
それは凄いことだ。スキルポイントでチートした俺は知らないことだったが、後から知ったことだ。この世界で生活魔法を修めるには相当な苦労が必要とのことだった。
敵を倒せるわけでもない威力の魔法を延々と繰り返すだけで成長させていくしかないからだ。需要は高いが、習得するためには相当な苦労が要求されるのが生活魔法とのことだった。どんな分野でも極めるためには苦労すると言い換えても良いかもしれない。
役に立つと思ったんでの一言で出来ることでは無いし、どこでも引く手あまたの彼が付き従っているバイスに何かあることが分かる話だ。
「それくらいでやめておいてください。魔法使いの手の内を晒すのはご法度ですよ」
「それはごめんなさい」
素直に謝っている本人は事の大きさをちゃんと把握しているのだろうか。人徳があることだけは分かった。
さて、今度はこっちの自己紹介か。
「では改めて、俺はイレブンと言います。魔法も剣もそこそこ使えるんで魔法剣士とでもしておきます。あとは何だろうか」
「単独行動が多くて、ついて行くというか首に縄を付けておきたいと思うことが結構ある問題児です」
「あぁ、それは私たちも思うことがありますね」
「……ちょっと。人の紹介で共感得ないでくださいよ」
リセルの横槍にパーヴィさんたち3人が首を縦に振ることになり、ツッコミはするものの言葉を出すのが憚られる。
「まあ、でもイレブンは結構強いですよ」
「ほう。ならば今の時点でタッツにいるのはもしかして王都の武闘大会に出場するのかな」
「そのつもりだよ」
どうやらここで足止めを食らっているのはバイスたちも同じようだ。
「失礼しますが、まだリセルさんのお話が終わってからにしてくださいね」
「謝られる時間がもったいないから言いますね。リセルと言います。役に立ちそうなスキルはイレブンもだけど色々身に付けました。私自身は魔法使いです!お願いします!」
バツが悪かったなと思った俺とバイスは言葉に詰まって聞きに徹する。そうすると残りの4人で話が盛り上がった。
「なんと薬師かと思っていたら魔法使いが本職でしたか」
「そいつぁすげぇや!なあ、グーの!」
「す、すごい。パーヴィみたい」
「いやいや。あのレベルのポーションを片手間で身に付けるなど私には不可能ですよ。同列に並べては失礼というものですよ」
「そんなにか。俺っちにはわからねぇ世界だなぁ。悪かったな!」
「ご、ごめんなさい」
「謝られることでは無いですよ。たまたま教わった師匠がすごかったんです」
「ほう。差し支えなければどなたですか?」
「言って良いのかな?」
リセルが聞いてくるので考えてみるが、ここで言うくらいなら良いのではないだろうか。
「ユーフラシアのメディさんです」
「「「……あ~…」」」
グーチョキパーの3人が同じリアクションを示した。バイスの方を見ると両手で顔を隠している。
「かの高名なメディ様でしたか」
「ちょっと待って。ツッコミどころが多すぎる」
「バイス様に関しては想像通りかと」
バイスの肩に手を置くと想像以上にビクッと反応をされたが、言うべきことは言っておかなくてはならない。
「MZDS商会の商会長のザールさんとも知り合いなんだけどさ」
「それもすごいですね!」
「パーヴィさん、静かにね」
立ち上げて間もないうちに名を上げているザールさんもすごいが、それを冒険者の身で把握しているパーヴィさんもすごい人の部類に入るだろう。
しかし、本題はそこではない。どうしてもバイスに言っておく必要がある。リセルもそれを察してくれているので止めてくれている。
「ザールさんってメディさんに本気で惚れてるし、メディさんも同じなんだよ。もしバイスがメディさんにちょっかい出したことがザールさんにバレたら、多分血の雨が降る。俺にも止められないから絶対に隠し通せよ」
俺を見た後にリセルにバイスたちの視線が集まったので、ゆっくりと首を縦に振る。同じように顔が青くなって震えていた。
なんで周りがにぎやかにこのテーブルだけお通夜みたいにならないといけないんだよ。
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