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福来の成長とコトシュさんの昇級の後はトワのトドメ

お楽しみ頂けると幸いです。

「福来はどこにいるかな?」


定位置として多いのは空間接続をまとめて設置してある場所なんだが、そこは見たけどいなかった。朝だからここだと思ったのに。

最近は獣人の村付近で隠れていた糸太郎だから心当たりは無いそうだ。


仕方ないので偶然居合わせたフレンドビーたちに聞いてみる。色や持っている物が違うから何か別の種類に進化しているんだろうけど、もう多すぎてどれが何に変化したのか覚えられない。

万花あたりは見ただけで分かるみたいだけど、この世界の鑑定は表示速度に問題があるのか見えない時は見えないしな。


フレンドビーたちの繋がりで居場所を特定してもらって見つかった。どうやら庭にいるそうだ。早速向かってみる。


「福来~、どこだ~?」

「ここにいるよ~」

「あ~、いたいた。リセルもいたのか。ちょっと相談があるんだけど、その前に良いか?」

「なに?あ、おはよ」

「おはよう。今のリセルの声じゃなかったと思うんだけど、誰の声?」


さっきの『ここにいる』って返事はリセルの声じゃなかった。


「ぼくだよ」


そう言って手を挙げるのは抱えられるだけだった大きさから少し成長した福来だった。


「福来がしゃべっただって…!?」

「万花ちゃんたちも話すんだから当然じゃないの?」


そこは当たり前であるかのようにリセルが返してくる。


「いやいやいや!?だって糸太郎は話せないじゃないか?」


俺としては一部の魔物が話せるようになるなら、みんな話せるようになるのではないかと思うのは当然だ。


「糸太郎くんもそのうち話せるようになるかもよ?」

「無責任な言い方だなぁ…」

「だってわからないもの。それよりも話せるようになったのに今まで気が付いてくれなかったことを怒る場面だよ」


俺はそっちのけで福来を抱きしめながら、俺への当てつけのように福来をたきつけている。


付き合いの長い人は俺が無責任な生活をしていてもそんなものと放っておいてくれたが福来は大きな変化があったにも関わらず放置してしまった。これは怒られるべきことだろう。素直に謝るべきだと判断する。


「福来、せっかくの成長に気が付くことが出来ずにすまなかった。こんなのを守護する役目を背負わせて本当にすまない」


心を込めて頭を下げた。


「そんな~気にしなくていいよぉ。話せるようになったの今日だしぃ?」

「ん?」

「ついさっきだよ。話せるようになったの。ご主人が来る前にこのお姉ちゃんもすごく驚いてたよ~」


ゆっくりと顔を上げてリセルの顔を見た。


「テヘペロ」

「リセル!!」


お互いに糸太郎と福来を地面に置くと鬼ごっこの開始だ。


「そこまで怒らなくてもいいでしょ~?」

「人を騙したことについての謝罪は無いのか!」


狭い庭なので動ける範囲は決まっている。逆に狭くて力を込め過ぎると塀か家の壁を壊しかねないので良いハンデだ。


「騙すも何もギリギリ本当のことしか言ってないよ」

「今まで気が付かなかったって部分がギリギリだな」

「だから言ってんじゃん」

「開き直るな!」


捕まえようとしても元からの体の柔らかさと森の中で駆け回ったのであろう身のこなしが功を奏してするりと抜けられる。

あと、何も無くても精霊たちがちょっとした邪魔をしてくるから捕まえる難度が上がる。


「精霊たちの援護をやめさせなさい!」

「勝手に手伝ってくれる良い子に怒ることなんて出来ないよ」

「リセルのやっていることがイタズラだってときは大人しく差し出すように躾なさい!」

「え~~?…ヤ・ダ・ナ」


そうか。イヤか。背後を取って捕まえるつもりだったがそうも言ってられないか。じゃあ一段ギアを上げて追いかけることにしようか。


「あ。それはずるいよ!それに、この1か月ずっと一緒に行動してた私だけが把握してるとかおかしいって思わないと!」

「問答無用だ」


『気功闘術』を発動!力をより繊細にそれでいて力強く使うことが出来るようになる。リセルが必死に逃げようとするが、10秒ほどで肩を掴んで確保する。


「だからずるいってぇ~~」

「ずるくない。お互いに隠し玉はまだあるだろうが!」

「あるけど、…痛い」


強くし過ぎたか?慌てて手を離す。


「まあ嘘なんだけど」

「あのな」

「まあちょっと体を動かしたかったし、細かいコントロールが出来るかの確認だよ」


もっともらしい理由を付けられてしまったが、細やかな操作は苦手としているところなのでその理由を出されると弱い。

色々と弱みを握られ過ぎている気がする。まあリセルに強く出るとかしたいわけじゃないからいいんだけど。


「それで、福来に用があるのはイレブン?糸太郎のほう?」

「あ~、そうだ。糸太郎がな。なんかスゴイ進化をしたんだけど、威圧感みたいなのが凄まじいらしくてな。闇魔法でも『肉球印』で押したらマシになるんじゃないかなと思ってさ」

「威圧感?特に感じないけど…?」


リセルも同行するためにレベルを久々に上げている。魔石も貯まる一方だったので吸収して経験値に変えてもらった影響でレベルが121まで上がって強くなった。そのため糸太郎の見た目の変化は分かっても、不吉さまでは感じていない。付き合いの無い格下だけが感じるのかもね。

変人の俺とは違って神獣の獣人のリセルはステータスの上昇こそ変化は無かったが、強さはかなり上昇している。ついでに俺と実戦形式で稽古を積んだ。余程でなければ負けることはあり得ない。まあそれはどこまで本気で戦うかにもよるけど。


って、リセルの強さはまた今度だ。今は糸太郎の話だ。


「正確には不吉さらしいんだ。俺も全く感じないけど糸太郎自身は嫌がられているのが分かるみたいでな」

「それは嫌だね。…じゃあ暢気に追いかけっこしてる場合じゃないじゃん!」

「煽って始めた方が言うんじゃない!」

「煽られ耐性が無さ過ぎるんじゃない?」


一瞬また言い合いになりそうだったが、こらえる。それこそ何をしているのか分からなくなる。


「あのな~、…いや、やめよう。とりあえず福来、頼めるか?」

「そうだね。福来くん出来る?」

「わかった。ご主人に頼まれたし、いろいろ試してみる。完全に何とか出来るまでは一緒に行動しよっか」


糸太郎は了承したらしくとりあえず福来に対して背中を見せた。俺の言った通りに福来は『肉球印』を使う。


「闇魔法で抑えられるならいいけど、効果がないかもしれないから二人で歩き回ってみる。それでいい?」

「いいぞ。たのんだ」

「わかった~。いこ」


世にも珍しいパンダと蜘蛛が手を繋いで歩いていく光景を見た。何を言っているか分からないかもしれないが、俺は実際にこの目で見た。


「できたらさ~、ぼくもご主人たちが着ている服がほしいんだ。作ってくれる?」


糸太郎がいつも通り○を出している。心なし、任せておけ!と言っているような雰囲気も感じる。


「ほんと~?じゃあがんばるね~」


そして庭には俺とリセルが残された。


「……朝食、行かない?」

「……そうしよう」


とりあえず一緒に食堂に向かった。後会ってないのは早朝訓練中の薙刀は置いておいて、コトシュさんとトワか。今日の朝食担当だし仕方ないよな。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「朝食が美味しい」

「イレブンよ。それは私がマズイものを作ると思って言っているのか?」


怒気を少しだけ秘めながらコトシュさんが聞いてくる。


「そんなつもりは無いです!朝から少しだけ強めに動いたし、あちこち歩いてきたのでおなかがすいていたところにピッタリの味付けが来て喜んでいるんです!」

「別にコトシュさんも本当に怒ってるわけじゃないんだから」

「ならばいい」

「「………………」」


あれってやっぱり怒ってたんじゃないか?

そうかもしれない。言ってくれてありがとう。

おうよ。


目だけで会話をして黙々と食べていく。

メニューは焼きたてのパンと具だくさんスープに好きなだけ取って良いスクランブルエッグだ。希望者にはここにソーセージが付く。

当然ながら取った分は食べきる。もし残したら丸一日食事抜きだ。これに引っかかるような子どもは今のところいないが。


これ以上食べたければ自己責任で自腹を切って購入して食べることになる。レベルが上がった俺が筆頭で、その次はリセルだな。

俺は隠しはしないがリセルは女性らしく体重を気にしつつ食べているようだ。当然ながら気づかないふりはしている。


「そういえばコトシュさんはこの1ヵ月で何かの変化はありましたか?」

「なんだ。ようやく周囲に注意がいくようになったか」

「恥ずかしながら…」

「常に周囲に注意して変化を捉えるようにしておくのが理想の上司というものだ。諫めるにも褒めるにもタイミングが大事というヤツだな」


言ってくれた後に何かを思い出しながら頷いている。妙に実感がこもっているところからコトシュさん自身にも経験があるんだろうなと思う。一応次代を担うと謳われた若手ホープだったらしいし。


「ああ、変化だったな。私は銅級冒険者になったぞ。イレブンの次くらいには早い昇級のようだな。それに福来のおかげで魔力を操るコツみたいなものも分かった」

「それはおめでとうございます。でもなんで福来のおかげなんです?」

「ん?知らないのか?自分の子どもみたいなものなんだからもう少しかまってやるんだぞ」

「はい…。すいません」


なんだかコトシュさんには段々頭が上がらなくなってきているな。


「福来は魔法だけじゃなくて、一部のスキルも込めることができるだろう?『魔力操作』のスキルを押してもらったおかげで感覚を掴んだぞ」


ぽろりと手に持っていたパンが落ちる。皿に落ちる前に掴み直したけども。前から使っていたっけ?魔法ばかり使ってもらっていたからその発想は無かった。

そんなことが出来たら助かるなと思っていたから可能なんだとしたら助かるぞ。今言っていたように俺が身に付けたスキルを仮に身に付けてもらうことが出来るし、くり返せば本当に身に付けることも出来るようだ。

まあ適性はあるだろうから使えるかどうかはその人とスキル次第だろうけれども。


「何というか、俺がいないところで結構な実験をやってますね」

「私だって先頭に立って戦いたかったからな。なんだってやるさ」

「せめて俺のいるときにやってくださいよ。危ないなぁ」


何事も無かったことを喜ぶのか、勝手な行動を嘆けば良いのか…。うん、良かったと思うことにしよう。


「イレブンもリセルお姉ちゃんもイチャイチャにいそがしい。だからコトシュお姉ちゃんは呼ばなかった」

「「なっ!!」」


突然湧いてきたトワとその言葉の爆弾に何を言うべきか出て来ない。完全に言葉を詰まらされてしまった。お互いに見なくても顔が赤いのは分かる。


「こら、トワ」


コトシュさんのたしなめも、一応言ってみた、という域を出ない。本当に一応言いましたって感じだ。


「さっきの庭からこっちに来るときも手を繋いでた。私以外は誰も見てなかった。でもナイショ。これは誰にも言ってはいけない…」

「全部聞こえてるよ」

「はっ……。忍者失格?」

「私には分からないから、知ってるはずのイレブンに聞きなさい」


コトシュさんからいきなり話を振られてしまったが、次の一言は決まっている。


「人の秘密を話すような忍者は失格で当たり前だ!!」

お読みいただきありがとうございました。

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