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楽しい時間はあっという間にすぎるもの!

お楽しみ頂けると幸いです。

「さて、聞き出せましたね」

「そうだね。お疲れさまでした」


元気なのは俺とザールさんだけだ。リセルを始め他の人たちはぐったりしている。


「う~ん。私としては途中で出ておいて正解だったよ」

「ん?そうだったか?」

「そうだよ」


ずっと付いていないといけない牢番さん達も途中から直視は避けていたくらいだったしな。見るに堪えない光景だったのだと思う。


「最初は情報を聞くつもりなかったでしょ」

「正解!分かった?」

「途中でね。だっていつまで待っても遮音の結界を解かないんだもん」

「さすがに分かるよな。だってあいつらもきっと同じことしてただろ?『やめて、助けてくれ』って言われても助けなかったんだから同じ目に遭っても文句言えないよな?しかも俺は何も言われてないにも関わらず殺してないぞ?」

「生かしたところで更にキツイ目に遭わせるんでしょ?」

「当然!」


自信満々に答える俺に頭痛がすると聞き役をザールさんにバトンタッチした。


「どんな目に遭わせるんですか?」

「まずは肉体的な罰はそこそこやったんで、有効活用にもう少し置いておきます。だから精神的に追い詰めます。聞いた内容を確かめたけど嘘を吐いていたな!って感じで」

「さすだにさっきみたいな目に遭って嘘を吐いているとは思いませんけど」

「でしょうね。本当のことを言っていたと思います。だからこそです。『助からない』ってことがポイントですよ。誰にも手を差し伸べてもらえないし、何も信じることが出来ないって思わせるのが目的です」

「……なるほど」


ザールさんは何か思うところがあるのか俺の言うことを反芻して飲み込んでいる。後ろの牢番さん達は分野が違うからか顔色が青くなっている。何かを追求するには仕方ないんだって!人体実験の前に小動物が必ず犠牲になっているんです。奴らは小動物以下のド畜生なので気にせず使うだけです!


「情けをかける必要のないやつに関しては『殺してください』って言ってからが本番です。それを言うまでは反省してませんから。言った時にようやく自分はそれほどのことをしたんだって思いを持ちます。奴らはまだそれを言ってない。つまりまだ精神的に余裕があるってことですよ。だから情け無用なんです。わかります?」

「…魔法の無い世界から来たはずなのに、考え方が本当に激しいですね」

「まあクズなんてたくさんいる世界でしたからね。影響を受けてないとは言いません。さ!帰りましょう!これからの取り組みはザールさんですか?」

「まさか!一応商人なんでね。情報を然るべきところに提供するだけですよ」


最終的には心身共に衰えてきたところで『幻魔法』にあっさりとかけて口を割らせた。奴らには口を割った記憶も残ってないからこれからは無駄な我慢をしてもらう。俺が提案することの準備が整うまでは拷問官の研修に使うらしいよ。あとは幻魔法の取得にも挑戦してみても良いのではないですかと提案もしておいた。


手に入れた情報としては盗賊たちとの指示役になっていた貴族の窓口役の人物像だ。さすがに用心をしていたようで名前はおろか姿すら見せなかったらしい。しかし、窓口役ですらもローブで隠していてもその布地が良かったし、ローブの下に見えた服も貴族の付き人に近いものだったらしい。あとはその護衛の装備品だろうか。金持ちでないと揃えられないものだそうだ。


会うときの場所と符号を手に入れたので、あとは監視と探りを専門とする人にお任せだ。そういう仕事は性格的に合わないし、時間がかかることはしたくない。


「ここからはどんな風にしていくつもりですか?」


ザールさんは俺の雰囲気を察知してくれたのか、これからの予定を聞いてくれた。


「一応考えてましたけど、その話をする前に確認です。聞きたいことは大体聞けていますか?」

「おおよそ聞けていますよ。これ以上話してくれるなら聞きますけど、聞き出した情報も曖昧でした。どう考えても有益な情報を持っているようには思えませんね」


だったら有効活用の部分を伝えておけばいいか。


「学問の発展って数限りない実験に支えられてるんですよ。それと分からないことを無くしていくぞって気持ちが大事なんです。不思議だなで終わらせるんじゃなくて、なぜそうなるんだろうってところとか」


魔法の理論も何となく分かってきた。魔力という精神の使い方の指標に、MPという生物が持っているエネルギーを術式に流し込むことで発生する現象のことだ。ここにスキルやら何やら色んな要素が絡むので俺も全てが理解できているわけでは無い。


それよりも発展させておきたいのは医学薬学の分野だ。


「スキルや魔法はありますけど、疎かにしてはいけないと思うんですよ。やっぱり人の命を救う分野なので」

「それは、そうですね。私も自分の浅学を呪ったことがありますから」


デテゴが毒に侵された時だな。


「特にここは魔物を討伐してもそのまま残らないので体の中身がどうなっているのかを知ることが出来ないですよね」

「なるほど」


ザールさんには言いたいことが伝わったらしい。リセルは耳を手で塞いで聞かなかったことにしようとしている。どうがんばっても聞こえているだろうけど何も言わないでおいてやろう。


「人間限定にはなりますけど何が入っているのかを実際に見てみることと、それがきちんと図示することが出来たら俺がある程度までは講義しますよ。どの臓器がどんな役割をしているのかってことを。すごく簡単にはなりますけどね」


それくらいは大学に合格するための勉強しか無いが、スキルで少し記憶を引き出しやすくなっているし大丈夫だろう。まとめておけば話をするくらいなら出来る。


「薬学の分野でどこまでが認識されているのかは分かりませんが。俺の前の常識では薬と毒は紙一重でした。良い結果をもたらすから薬、悪い結果をもたらすから毒と呼ばれていたに過ぎません」

「それは、メディからも聞いたことが無いですね」

「はい。俺も教えてもらった時にそんな話はありませんでした。だからこそです。本当に薬なのか、毒なのかの投与実験をしてみる方が良いと思います」

「なるほど。根底からひっくり返すような話ですね」

「これが正しいかどうかも断言できませんけど」

「いや、結構。どこかで狂わないと何事も極められません。そういうことで話をしておきましょう!」


何がスイッチか分からなかったけどザールさんは非常に楽しげに鼻歌を歌い出した。これで考えていたことは全部話したぞ。


「何かあれば連絡がもらえるってことで良いんですかね」

「構いませんよ。逆に何かあったときは連絡をしてください」

「了解です!」


良い感じで仕事を終えることが出来たな。

ザールさんとは別れて、またリセルと2人に戻った。相変わらず横を歩いているリセルはフラフラしている。


「私はとにかく疲れたよ」

「まあ少し刺激は強かったかもな。手掛かりは得たからな。これから次第だよ。がんばっていこうぜ」

「本当は喜ばないといけないことは分かってるよ。でもね、あれを少しで済ませるのだけは納得いかないかなぁ」

「なんか言った?」


小さい声で言っても相手に伝わらないと意味が無いんだぞ?


「言っても意味無いから何でもない!」


大きい声でハッキリと言いきられたのでそれ以上に言うのはやめた。


さて、じゃあ他に何かすることがあるわけでは無い。っていうか皆それぞれに目的を持って動いてくれているから俺も自分の強化にがんばってみようかな!ちょっと山籠もり気分でいこうかな?


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


しばらく待てば追加情報の進展があるかと思っていたが、意外に進展も無いまま日々が過ぎていって冬が終わった。まだ寒さは残るが、やはり春ともなると色々と動き出す季節になるそうだ。

移動に時間がかからないので、天昴はミスリルくらいの丈夫さを持ち合わせるようにはなった。武器で負けるということは無いだろう。属性金属やらも相当量注ぎこんだので魔法との親和性も良い。それに思わぬ変化があったので既にこいつは手放せない武器になった。久々に武術系スキルも更新してしまったよ。しかし、ここからの成長に関しては量は少なくなるが質が跳ね上がった。


まず成長に必要だと要求されたのは竜の素材だ。ファンタジーの代名詞である竜つまりドラゴンだ。竜なので分かりやすく言うなら太めの両手両足が付いている西洋竜だ。さすがにそう簡単に見つかる魔物でも無いので少し期間を空けることにした。ガマンも大事だ。

久々に使った自室を出るとまず最初にロイーグさんに出会った。


「おはようございます」

「ようやく落ち着いたな」


起きたばかりの開口一番、いきなり溜息付きでこんなことを言われたら首を傾げるしかない。確かにロイーグさんと会話するのが久しぶりな気がする。




いや~、みんなとの会話自体が久しぶりだな?


「なんか、久しぶりな気がします」

「そうだろうな!」


怒ってる感じはしない。しないけど、心底頭が痛いって顔をしている。


「そんなに俺って無茶してました?」

「してたよ!自覚無いのか、お前は。時々帰って来てたが誰かの顔を見たら速攻で寝落ちするほどギリギリ限界まで体力が尽きるまでの生活をしていたらしいぞ。覚えてないのか?」


覚えているけど、どこまで無茶が出来るのかを確かめるためにやっていたので後悔は無いとか言ったら怒られそうだ。しかし、周囲の目から見てどう映っていたかはそれこそ聞いてみないと分からないのではないか。聞くまでも無いかもしれないけど。


「この一か月の俺ってどんな感じでした?」

「その剣に向かって話しかけるヤバいやつ」


天昴を指差して過不足なくしっかりと教えてくれた。無機物に話しかけるのはせめて周囲に誰もいないか気心の知れた人の前だけにしておきたい。…じゃあ大丈夫か。でもここはひとつ、常識ある人間を演じておこう。


「それはヤバいっすね」

「無理にミケンダの方に寄せるんじゃねえよ」

「あはは…」


寄せたつもりも無かったけどロイーグさんにはしっかりと怒られてしまった。


「違うとは分かってはいるけど何かの呪いにでも憑りつかれたかと思ったぜ。リセルちゃんやテイムの子たちにお礼を言っておきな。『あれは夢中になっているだけです』って言ってくれてたからな」

「ちゃんと言っておきます」


なんて言えばいいだろうか。正気に戻りました記念、とでも言えば良いのだろうか。いつでも狂気にまみれているみたいで少し嫌だな。


「お前が正気を失っている間に俺も少し戦闘に出られるように考えてみたぞ」

「何したんですか?」

「銃をこっちで産出するもので作ってみたぞ。遠距離から攻撃するだけなら俺でも出来るようになった」

「それって量産は…?」


一般に流通するとヤバいものの一位は銃だろう。戦闘の心得が無くても必要以上の武力を持ってしまう。取り扱い注意の危険物だ。絶対に阻止しなくてはならない。


「そのつもりは無いよ。特注で一点もの!作るにしても信頼できる奴にしか作らねぇよ。他の誰に言われても作ることは無いし、作り方も構造も誰にも教えはしないよ」

「なら良かったです」


しかし、ここからがひどかった。


「次は高速起動が可能だったり、色々と武器を仕込めるような腿から下をカバーする足甲だな。魔石という今までの俺には無かったエネルギー源が手に入ったからな。これからバンバンと面白そうなものを開発していくぞ。ちなみに旦那に言われて鍛錬グッズは作ったからな。どんなのか聞きたいか?ん?」

「は、はい」


俺は曖昧な返事を返しただけなのに、そこから20分ほど話に付き合わされてしまった。ロイーグさんの言う旦那とはデテゴのことだから、冬の間に新人冒険者を鍛えるためのグッズを作ったのだろう。誰が使うにしても良さそうなものなので何を作ったのかは使うときにお披露目といこう。


話の要点をまとめるとロイーグさんは俺が魔法でやっているようなことを機械で再現していきたいのだそうだ。俺の前の世界の話をし過ぎたかな。


とにかくまずは地上戦闘が出来るようにして、次に空中戦闘、最後に海中戦闘が出来るようにしたいらしい。福来にも協力してもらうつもりのようだが、まあ迷惑にもならないし役に立つだろうから好きにしてもらえたらいい。


「とりあえずはこの1カ月の皆の変化と確認して謝罪して回ろうかな」


朝食の場にいけば誰かはいるだろうと向かうことにした。

お読みいただきありがとうございました。

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