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ザールの提案

読み仮名を追記しました。

お楽しみ頂けると幸いです。

「イレブン、戻ってきたよ~」

「おかえり。あの人たちはどうしてる?」


盗賊たちを捕えて手に入れたものを渡したのは3日前のことだ。

この間にしていたことは必要な素材が分かったらすぐに狩りに行くか発掘しに行き素材を吸収させていた。量が量だけに時間がすこぶるかかるが少しずつ強くなっていくし、今までアイテムボックスに死蔵することになっていた魔物の素材が消費できることが嬉しかった。売るにしてもあまり価値もなく、生産系スキルのレベル上げに使うしかないような素材は余っていたのだ。掃除にちょうど良かった。

例えば魔物の爪であれば種類を問わなかったのでドンドン吸収させていった。千本とか余裕で持ってる。強い魔物なら1本で弱い魔物数本分のカウントもしてくれるようだ。あと5回くらいならいける、とかなりながらコツコツ進めている。

何が一番大変かと言えば、意外に吸収させるのに時間がかかることだ。あとどれくらい必要かを確認しながらだからだ。どれくらい投入するかを数字を決めてボタンを押すだけでは無いのが辛い。まあやるけど。


それと、成長武器に関してはザールさんとやり取りをして正式に俺の所有物にしている。

全ての取得物の権利を放棄してもいいし、何ならお金なり寄付なりを行うので成長武器を手に入れることに目をつぶってほしいとお願いした。

元から盗賊たちから取り上げたものは余程のものでない限りは冒険者の懐に入れて良いらしい。何に使おうと自由だと言うならということで商人さん達への補填と助け出した女性冒険者たちや亡くなった冒険者たちへのお見舞い金にすると話すとザールさんに大笑いされた。


「いや~、実にイレブン君らしい!」


なんか喜んでいた。涙流してまで言いたいことはそれか、みたいなことは言った。


配分に関しては商人さんたちには無事だった物資と盗賊たちから取り上げた金品で補填を、冒険者たちの分は女性たちに聞いた上で遺品の装備品や金品を譲ることにした。

残った分のお金の使い道に関してはザールを通してデテゴに伝えてある。彼に任せておけばきちんと使ってくれるだろうと信用できる。


話が横道に逸れたが、そんな時間がかかって仕方が無い吸収をさせていたところにリセルが帰ってきた。


ついでにもう一つ話が逸れるが、少し前から俺は空間接続を緊急時以外は使うことが少なくなった。福来の仕事になった。

福来の毎日の特訓として『肉球印』を使用して主要なところとは繋ぐようにしてある。現状は時間経過とともに途切れてしまうが、最初に比べるとその時間が長くなってきている。

このおかげで俺が定期的にチェックする場所が少なくても済むようになったし、一番は行き来に俺が必要なくなったことだ。フレンドビーたちの交代や指導も積極的に行われるようになったし、自分たちで行きたいところに行けるようになったので福来の人気は高い。

さすがに寝る時間以降まで福来に無理をさせることは無いので、ブラック気味なことにもならないと願っている。


あと、俺にはみんな言いづらかったのかなとちょっと思わなくもない。

……今度こそ本当に話をリセルとの話に戻そう。


「何度見ても面白いね。その吸収していく様子って。私が魔石を吸収するのに似てるかも」

「別にそんな機能は付いてないぞ。現象は似てるけど別のものだろうな」

「だろうねぇ。それで名前は決めたの?」


突かれたくないところを突いてきた。ここで妙に間を空けると更に追撃を食らうことになるので何でも無い振りを装うしかない。


「最終的にどこまで成長するのか分からないと名前って付けづらくてさ」

「名前を付けるのが苦手なだけでしょ」

「ごふっ!」


どちらにしても物理的に脇腹に一撃入れながら痛いところを突かれて吹き飛ぶ。油断していただけに妙に効いてしまった。よろめきながら立ち上がると楽しそうに作業の続きをリセルが行っていく。


「な、なんで攻撃されるの?」

「どんな姿になったとしても壊れない特性があるならずっと使っていくんでしょ。だったらちゃんと名前を付けて可愛がってあげる方が良いに決まってるよ」


言っていることは非常に正しい。それだけにプレッシャーから名前を付けるのにためらいを持ってしまう。


「イレブンが大事にするのは分かってるし、この件も大事にしてくれるのは感じてると思うよ。別に変な名前を付けたところでこのコも怒らないって」

「そうだろうか。そうなると、う~ん。どんなのが良いかな」

「有名どころから名前をもらうのも有りだね。何か良さそうな名前からもらうとか」

「ふむ」


そうなると有名な刀には『天』の字が含まれていることが多かったな。あとは良い感じの文字をくっつけたい…。なんかまとめる的な意味の漢字があったかな…?


「じゃあこいつの名前は『天昴てんりゅう』だ」

「ほうほう。どんな気持ちを込めたの?」

「こいつめっちゃ成長するのに色んなものを必要とするからな。この天にあるものをそこまで吸収するならちゃんとまとめきってくれよって願いを込めてかな」

「福来よりはちょっと分かりにくいね」

「あいつはパンダって見かけだけですぐに決められたからな」


こんなこと言ってはなんだけどあいつの時は苦労しなかった。対象それぞれだと思う。


「まあそれはさておき、名前も決まったわけだし。よろしくな!天昴(てんりゅう)!」

「は~い、おめでと~」


リセルも拍手して祝福を送ってくれた。気のせいかもしれないが少しだけ吸収が早くなった気がする。一旦リセルが横に座って何か用があるようなのでキリの良いところで終わらせた。まだまだ素材はあるけど切り上げることにした。


「で、リセルは何か用があったのか?」

「え?あ、そうそう。ザールさんから呼び出しだよ」

「早く言えよ!」


思わず大声になる。片付けをしていた手を早めて急ぐ。


「どんな話かって、盗賊の話だよな」


把握していない後処理のことだろう。ザールさんに任せたところは盗賊たちの末路だ。あと把握していないのは聞きづらかった女性冒険者たちのことだ。その担当は目の前にいるリセルだ。

しばらくはそっとしておいて方が良いと思ってリセルにお願いした上で獣人の村に預けていた。


「行く前に聞いておくけど、あの人たちの調子はどう?」


この三日間でリセルとは顔を会わせていたが何となく聞きづらかったことを聞く。ザールさんとの話の中で聞くよりは先に聞いておいた方が良いだろう。預かっている以上知らないでは済まされない。

簡単に預かるものでは無いなと反省はする。同じことがあったら同じことをする自信もあるけど。


「畑仕事を手伝ってくれてるよ」


おかしなことが聞こえたなと思って手を止めてリセルを見る。


「畑仕事を手伝ってくれてるよ」


聞き間違いではなかったらしい。片付けは済んだのでちゃんとした格好に着替える。もちろんリセルからは見えないようにしている。


「立ち直り早くない?」

「生きてただけでももうけものって言ってたよ。そんな生娘でもないんだからって。魔道具で身ごもらないようにもしてたしね」

「話を聞いた時にブチ切れた理由俺は何だったんだ」


少し恥ずかしいじゃないか。


「気にする人もいるからね。間違ってもないと思うよ。気を使ったからって話をしたらカワイイって笑ってたよ」


世界が違うからそのあたりの受け入れ方も違うのだろうか。これ以上俺が立ち入るわけにもいかないところだ。仲間たちの命も奪われてしまったわけだし、本人たちから直接聞かない限りは話半分で聞いておこう。


「カワイイって言われて喜んでる?」

「そんなことはないぞ。ほら準備できたし行くぞ」


そう言って手を伸ばす。その手を掴んでくれるだけで少し嬉しい。


「まあ手を繋ぐだけで赤くなっている人にこれ以上の関係はまだ早いのかな~」

「うるせぇ…」


クリスマスの日に肩に頭を置かれただけで身体が熱かった。これ以上はまだ16歳の俺には早い。異世界だから元の世界の倫理観は本当は関係ない。

しかし、俺の中にある常識がまだダメだと声をあげているし、何よりもあまり慣れていないこともあって『リセルと付き合っている』というだけでお腹いっぱいだ。


「俺の中では18歳超えないと結婚は出来ないんだ。それまでは…待っててください」

「はいはい。実は私もそこそこ恥ずかしいから別にイレブンだけじゃないですよ~」


気が付けば俺の身長はリセルよりも高くなっている。俺に顔を見せてはいないけど、耳が赤くなっていることに少しだけ安心した。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「遅くなってすいません!」


ザールさんが応接室に入って来て声をかけられる前に先に声を出しておく。


「お互いに忙しい身ですからね。気にしないでください。少しの遅れくらいでとやかく言う間柄でも無いですし。時間が決まっているわけでも無いですからね」

「ありがとうございます」


キッチリとした時計があるわけでは無いから待ち合わせの時間に関してはそこまで厳密に決まっているわけでは無い。それはまだザールさんも同じようだ。この人に時計を渡したらどうなるかとも思うが、それはもう少し様子を見てからにしよう。


「ともかく、事の顛末だけお伝えしておきましょうか」

「お願いします」


中心部になっていなかった者は死ぬまでメタルマウンテンよりも危険なダンジョンで労働刑に処されることになった。危険だと分かっていて所属したのだから許されることは無いそうだ。あとは配置されたところで待遇が良くなるまで働けば少しは良くなるだろうとのことだ。


そして盗賊たちの中で中心になっていた者たちは吐かせるだけ情報を吐かせたら死罪となる。犯行が悪質で生かしておいて逃げられた場合、再度同じことをする可能性が高い。後はこいつらが後ろで糸を引いている貴族のところに囲われてしまうと厄介なことになるために情報を聞き出してからという制限は付いたが命の期限も切られた。素直に話さない場合は命に関わるレベルの自白剤も投与される。そして死に方も選べない。


「まあ、当たり前ですね」

「おや、分かっていましたが手厳しいですね」

「犯罪者に関しては厳しくいくのは信条なんで」


一人でも殺したら死罪なのは当たり前だ。殺してなくても生きてる方が迷惑な奴はさっさと殺す方が世の中に優しいと思う。この世界の人が死罪だと断じてくれた方が俺が勝手に殺すよりも気持ちが楽だからいいな。


「そこで、情報の抜き取りに関して決まったことがありまして」


ザールさんの雰囲気が少し鋭くなった。もう慣れているから気圧されることは無いけど、これが本題っぽい。俺も姿勢を正して聞く。


「何でしょうか」

「緊張はしなくて良いですよ。情報の抜き出しに関してイレブンにお願いしたいんです。希望するなら最後の処理までお願いすることになります」

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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