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自分が心配しているということは誰かに心配されているということだ

お楽しみ頂けると幸いです。

腕と脚の関節が2つずつ増えた盗賊たちを見下ろして呟く。


「肉体的な苦痛を一度で済ませて気絶させるなんて…。俺はなんて優しいことをしてしまったんだろう。反省しないと」


もちろんだが、遠距離から狙っていた最初の10人も含んでいる。治療された奴の顎は再度砕いて同じ目に遭わせておいた。何か口に含んだもののおかげか痛みだけでは気絶しなかったので全員に魔力の圧をかけて落とした。おかげで周囲が臭い。水分を吸い取って口から注いでおいた。土も含んでいたけど腹痛を起こしたとしても自業自得だ。


服用していた薬が痛みまで消えるものなのか確認しておく必要があるため治療はしない。アジトまで潰した後に確認することにしよう。一般の裏社会に出回っているものなら今後も出会う気がする。人体実験は一度で済ませておきたい。


無駄な呟きと考察をしている間に後ろの盗賊を片付けた女性陣が前に回ってくる。血相を変えてやってきたのはリセルだ。


「魔力が無駄に大きかったけど大丈夫!?」

「あ、強くなって加減が難しかっただけだから」

「あ、そう…、ならいいけど。……そのあたりに転がっている歪な人間らしきものは何?」


リセルがこちらに来るなり俺の行動のチェックに入ってきた。怒られるようなことはしていないはずなので堂々と答える。


「えっとこれか?盗賊たちの動きを封じているだけだ」

「やりすぎ……とも言えないか。あとはこの剣が丸まっているように見えるのは?」

「盗賊の持ってた元刃物、現おにぎりもどきだ」

「おにぎりを作っている人たちに謝れ!念のため聞いておくけどどんな経緯でそうなったの?」

「振り下ろしてきたから受け止めて丸めた」


あ、リセルの顔色が変わった。なんか怒った気がする。


「あのねぇ!自分は私たちに無傷って言っておいて、自分は呑気にケガするかどうかの実験してたわけ!?」

「実験って言ってないのに理解しているのか。さすがだな」


思わず拍手をする。あ~、頭が冷えてきた。冷静になったらいつもはしないことをしてしまったな。


「さすがに性格とか考えてることも分かってきてるからね!付き合いも長いでしょうが!」

「痴話げんかはその辺りでいいか?」

「チワゲンカ!?これがそう見えます!?」

「ご迷惑をお掛けして申し訳ないです」


今度は途中で入ってきたコトシュさんにまでリセルが咬みつきに行くのでちょっとやりすぎたことを自覚する。遅いかもしれないが。


「ごめん。一旦これで分かったから次はもうしない」

「疑問が浮かんだ時にするのは仕方ないけど、もう少し安全な時にしてくれたらこんなに言わないよ!」

「本当にすいませんでした。もう…しません」


断言できないのは自分でも分かっている。攻撃をどこまで無視して良いかを知るためには一度攻撃を受けるしかない。どういった攻撃でダメージを受けるのかは結構大切な情報なんだけどな。悪意がある攻撃の方が通りやすい気がするし。気持ちの面で手加減が入ってないから攻撃の筋にためらいが無いし。仕方ない、今後はリセルにバレないところでやろう。


「バレないところでやろうとか思ってるんでしょ」


なぜ一瞬で見破った…。そこまでバレるとは…。


「本気でバレないところでやってほしい。少しのことでも心配するからね」

「分かった」


本当に心配かけないようにだけ気を付けるようにしよう。ちょっとここまで言われるとは思ってなかった。


…そうか、俺も仲間皆に怪我の1つもしてほしくないのと同じか。多少は仕方ないとはいえ、今後のことは今回の件が治まったら少しは話し合って決めるようにしよう。


「では、いいだろうか」

「「はい。お願いします」」


コトシュさんの話を聞こう。きっとここから盗賊たちを根絶するための作戦だ。こういうところは元軍人だけあって冷静に作戦を積み上げてくれる。話をしている間に手が空いた糸太郎が倒した盗賊たちを縛り上げていく。トワと手が空いている薙刀隊はその手伝いだ。


後方から襲ってきた盗賊たちは様々だった。気絶している者から戦意を刈り取っただけでまだ意識のある者までいる。俺が倒した盗賊たちの様子を見て本気で顔色が悪くなっているけれど。何を安心しているのだろう。全部片付いたらこれ以上の刑が待っているというのに。


理想は俺と出会った瞬間に気絶するくらいの拒絶反応を示さないとね。記憶に犯罪を犯したせいだと刷り込むことで再犯を防ぐことが出来るだろう。最低でもそこまでしないと生かしておく意味が無いだろう。贖罪って言葉を軽く見過ぎだよ。


しかし、死ぬ寸前でも治癒することが出来る魔法のある世界で良かった。魔法が無いと出来ることの幅が狭まってしまうからね。おっと、また余計なことを考えてしまった。コトシュさんの話に集中しなければ。


「イレブンが目の前の奴らを見逃すとは思えなかったので、後ろから仕掛けてきた者たちを何人か逃がす振りをして薙刀隊に尾行してもらっている。そのうち連絡が来るだろう」

「了解です。助かります」


確かに奪うことを楽しんでいる奴を見るとあの強欲の権化であるクソババアの叔母を思い出して冷静でいようと思えなくなる。父や祖父母は良いけど、一滴でもあの叔母と血のつながりがあると思うことが悍ましい。


まあ、こういう思考になるからダメなのだろうな。盗賊に関係する依頼は誰かと一緒に受けることを覚えておこう。


「抑えるのは無理だって分かってるから気を付けようね」

「魔物よりも盗賊相手の方が手がかかるってのも面倒だけどな」

「そういうものだろう。人間相手の方が考えることが多くなるものだ。過去に人間相手に苦労をしていた私が言うんだ。間違いないぞ」

「本当にごめ…、じゃないね。ありがとうございます」


それぞれ慰めてくれたリセルとコトシュさんに礼を言って、しばらく待機する。尾行組からの連絡待ちだ。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


遠くは無いだろうと思っていたが5分もしないうちに連絡がきた。来たというよりも空間接続で俺も監視していたから見ていただけだ。洞窟に入って行くのと見張りをしているやつらがいるのを見ただけだ。

リセルがそっと拳に触れてくる。そのおかげで気が付いた。拳に力が入っていたらしい。ついでに魔力も放出していたようだ。距離的に離れているが無駄に力むのは良くない。


「私と糸太郎、フレンドビーたちも一部は平気だけど、トワもコトシュさんもイレブンが本気で怒った魔力はしんどいから」

「それは本当にごめんなさい」

「だいじょうぶ」

「私には少々厳しかったな。少々抑えてくれることを覚えてほしい」


これは本当に気を付けなくてはいけない。怒るだけで周りに迷惑って相当に危険だ。反省……したらすぐに行かなくては。


「待て待て。一応相手の本拠地なのだから攻め方を考えよう。とは言っても洞窟だからな。中に入って行く潜入組と表で暴れる囮組の2つだな。何かの建物なら何かの工作をすることも出来たのだが…。出来ないなら出来ないなりにやるしかないな」

「誰がどっちというのはありますか?」


リセルが質問すると俺の方を見てコトシュさんが話を進める。


「当然ながらこちらの最強のコマであるイレブンをどう使うかで変わってくる。何があるか分からない潜入組になってほしいが、きちんと自分を抑えることは出来るか?」

「出来ます」


本当は少し迷ったし自信も無いけどそう言うしかないだろう。


「ならばイレブンは潜入組だ。本来なら次に強いリセルは囮にすべきだが、糸太郎がいるしフレンドビーたちもいるからな。万が一の場合を考えてイレブンと一緒に行ってくれ」

「分かりました」

「あとは全員で囮だ。大きいものがあれば囮らしくなるんだがな」

「だったらゴーレムを置いていきましょう。命令も聞いてくれますよ」


そう言ってリセルが精霊たちが何体かで力をつぎ込むことで稼働するゴーレムを出すように言ってきた。囮というには先程の盗賊の力から考えると過剰戦力だが、配慮の必要が無いので素直に言われた通りに出す。


「コトシュさんの言うことを聞くように伝えました。あとはよろしくね」

「どういう原理だ…?」


コトシュさんがゴーレムを見上げて初見のような反応を見せている。……いや、見せたこと無かったかな。


「精霊に中に入って動かしてもらう感じですね。武器に関してはイレブンとロイーグさんが手を加えてます」

「あ~、いや、分かった。くれぐれも殴る蹴る以外の攻撃手段は使わないでくれ。おそらくだがそれで十分だろう。目立たないだけで糸太郎とトワだけでも問題無いはずなんだ」

「まあ確かにそうですね」


トワと糸太郎の外見では可愛くて舐められる気しかしないが、ゴーレムなら相当数釣ることが出来るだろう。


「私は申し訳ないが薙刀やフレンドビーたちに守ってもらって全体を見ておく。それで良いか?」

「はい。お願いします」

「主が仰る通りに致します。薙刀、承知いたしました!」

「では、早速動こうか」


見ている間に盗賊たちがざわついている感じが伝わってくる。


「では潜入組の2人はすぐに出て少し隠れていてくれ。中に入るタイミングは任せる。中の完全制圧が終わったら何かしらの合図をくれ。それまでに外側の制圧も出来ているかもしれないがな」

「了解です。とりあえず空間接続は通っておきましょう。ゴーレムも一度アイテムボックスに戻します」


そして3分後には準備を整えて囮組が盗賊のアジトへと襲撃をかけた。

お読みいただきありがとうございました。

そういえばですが、一日一投稿は年末年始関係なく続けていきます!

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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