福来のスキルを確認しよう
お楽しみ頂けると幸いです。
話は飛んで新年はあっさりと迎えることになった。
俺のようにイレギュラーな存在にも年齢が設定されているが、いつ増えるのかと思っていたら新年を迎えると同時に16歳になった。覚えておくことにしよう。
この国では16歳で成人扱いされるのでこれで大人と言っても良いだろう。これで色々と認められる年齢になったということだ。何がと言えば大体一番に挙げられるのは飲酒だけども、どこまでこの体が耐えられるか分からないので少しずつ試していくつもりだ。
思い切り運動した後に飲むと美味しかったというのは確かだからそのうち試すことにする。ただ、先日のパーティで騒ぎに騒いだ自称大人がいたのでしばらくは俺も大人しくしていようと思う。
どんな様子だったかを簡単にまとめると翌朝に覗き魔たちが悶絶する様子が見られたってことくらいだ。
俺が教えた正座で。早めにギブアップをした元軍人と新村長も、獣人の子どもたちに棒でつつかれて叫んでいた。
体の大きいやつは座っている時点で膝から下の感覚がなくなっていることに恐怖を感じていた。徐々に戻ってくる感覚を喜んでいいのか分からなくなるから恐怖で正しいかもしれない。
ちなみに、逃げられないようにしっかりと縄で縛って拘束してあるから身悶えするしか出来ていない。
手乗りサイズの一番小さい奴は無駄にステータスが高いから負荷代わりに重りをかまされていたけど俺には止める権限が無かったので見守るだけだったよ。
保護者とは言わないけど、彼女の同僚が静かに怒ってしまったので。『イレブン様のご様子を隠れて覗こうだなんてうら…、はしたない真似をするのは許されません』って言ってたかな。
「主~、もう覗いたりしませんから~」
「俺にはどうすることも出来ません」
小さい方にはそう伝えて、大きい方にはアドバイスをしておいた。
「どうやったら脚の感覚が戻るのかだけ教えてくれ…」
「勇気を持って足を崩すんだ。かわいい子どもたちが相手をしてくれるからさ」
そろそろあっちの二人も感覚が戻って来て少しこそばゆいくらいになっているようだ。誰か来て強制的に正座させられると思うけどね。
子どもという時に残酷になる狩人たちが次の獲物を心待ちにしているからね。生贄だ。
大人たちが片づけをしている最中に子どもたちがうろちょろすると危ないんだよ。一か所に集めておくにはこれが一番だってことでこの方法が採決された。
翌日の片づけ中に色々と聞こえたのは懐かしいね。ざまあみろとも思うが。
獣人の村では何か簡単な罰を与えるときは正座をすることになったらしい。大人も子どもも関係なく手軽にできる罰だし、子どもでも分かる罰だからね。いいんじゃないかな。
とまあ前回までをまとめるとこんな感じだ。パーティ自体は何度やっても楽しいものだが、日を空けずに何度もやるのは風情が無いので新年に関しては今度ばかりは現状の同行メンバーだけで静かに迎えることになった。人数が少なかったので前回よりも静かなのは当然だね。
あとはクリスマスの時にリセルが安定生産できるようになったコタツをお土産に渡してまわったのでとても良い過ごし方が出来たことだと思う。
当然だけど一度入ると出たくなくなる。ついでに極上の果実で手に入れたミカンを食べると他に何もいらないと思ってしまう。
四角形なら正方形でも長方形でも大きさも自由に作ることが出来るけど、一辺の長さが1人か入れても2人くらいの大きさがちょうど良いと思ってしまうね。
「餅入りぜんざいだよ~」
「リセル。それ待ってた!甘い上にあったかいとか至福~」
「イレブンのには餅が2個入ってるからね」
「ありがとう!最高だな!」
「はいはい。隣に失礼しますよっと」
「寒いから早く入れな」
極一部切り取るとこんな過ごし方をした。
じゃあ話をまた別のところに持っていくとしようか。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「これから福来の鍛錬も同時並行で行っていくぞ。準備はいいか?」
〇を出して応えてくれるのは先輩としてついて来てくれた糸太郎だ。福来も真似して〇を作ろうとがんばっている。腕の長さが足りずにバンザイするだけになっている。は~、かわいい。
守護パンダではなくて、守護パンダのまちがいではないだろうか。福来は生まれてまだ間もないが、最初の両手を広げたサイズから既に抱えて運ぶくらいの大きさになっている。可能ならこれくらいのサイズで止まってもらいたい。
そんな心の声は一旦置いておいてまずは意思疎通ができるから色々と聞いてみよう。
「言葉は分かってるよな。それにスキルも自分の意思で使えていたわけだし、何をするかも分かっているよな?」
バンザイ。くっ!かわっ!
「まず調べてみたところ、『主従関係』ってスキルのおかげで俺と同じスキルが使えるらしい。俺は割と雑に色んなスキルを取得しているから何でも試してみてくれ。どんなスキルがあるかは福来にも分かるのか?」
首をこてん。くっ!かわっ!
「ひとつずつ見せていくのか。それも少し面倒だな。まあ仕方ないか。慣れれば見えるようになると思ってやっていくか。まだ小さいし武術は無理があるな。魔法から見せていくか」
まずは生活魔法から始めていく。
「これが『送風』な。魔力で物理的な力を発生させるから初歩の初歩だ」
バンザイ。の後に小さいおててを前に出すとわずかに『送風』が発動している。
「既に出来てるな…。天才か!?」
かわいい上に天才とかたまらないな。いや、見た目に引きずられ過ぎだろう。自戒せねば。次に行ってみよう。
「これが『着火』だ。物理的なところに加えて熱量の操作だ。攻撃に使うには威力は弱いが、それ以外なら色々と使い道があるぞ」
一通り他の生活魔法を見せた後には火・水・風・土と見せていく。そこで分かったことが1つある。
「見せたものは威力は弱いが使えるようになるんだな。だったら片っ端から全部見せていくか?いや、影響が危険なやつもあるから見せすぎも良くないか。リセルが連れてる精霊のいるやつにしようか。そのあたりにいるからいざというときに手伝ってくれるだろう」
となると見せられるのは光・闇・雷・氷・生命とこれだけ見せればある程度は色んな事が出来るだろう。あとはこれで色々と使っていくうちに慣れていってもらうとしよう。
「一旦これで良いだろう。まだ戦闘をさせるつもりは無いけど、自分や近くにいる仲間が危険な時は助け合うことにしよう。あとはもう一つスキル持ってたよな。肉球印だっけか。なんであの時は俺の空間接続が繋がった状態になったのかな。何でもいいから使ってみてくれないか?」
福来にそう伝えると、ためらいもなく手に魔力を宿して地面に手を付く。印が押されている。きれいな肉球の跡だ。見ているだけでは何も無いが、空気が流れている気がする。
肉球印の上で手をかざしてみると『熱風』が発生している。名前負けの生活魔法で温かい風が出てくる。がんばってドライヤーの風といったところか。普通は手か術者の周囲から発生するものだが明らかに肉球印から発生している。
「つまりは何かに押すことで魔法の起点になるということか。あとは、俺の魔法を起動状態にし続けることも出来るのかな」
クリスマスのときに『空間接続』を繋ぎっぱなしの状態で維持し続けていてくれたからな。使い分けできるとしたらそれで良いとして。検討しておきたいことがあるけど、念動魔法って概念的に難しいからな。もう少し魔法に慣れてからにするか。
「福来に出来ることが何となく分かった。一応注意だけど、火や雷は危ないから気を付けるんだぞ。冬だと水や氷を使って体に浴びちゃうと風邪をひくかもしれないからそこもな。仲間に向かって撃たないように気を付けるんだぞ」
バンザイをしてくれたのでおそらく大丈夫だろう。
「ってわけで糸太郎もある程度なら体力ゴリ押しで何とか出来るだろうから面倒を見てやってくれるか?」
コチラも〇を出して了承してくれた。福来自身も動き回ることになるかもしれないけどこれで糸太郎の上に福来が乗ることである程度は制御できるだろう。しばらくは俺を守るような事件は起きないだろうから先輩を見て成長してもらうことにしよう。
力押しでもいけるだけのステータスがあるものには育成を手伝ってもらいつつ、底上げをしている最中に技術を磨いて何かしらの搦手を開発してもらっている。多少は起死回生の一手があるに越したことは無いので。その中で言うと糸太郎は文字通りの搦手が得意なので福来を任せた。多少使える手段が増えたら一緒にレベル上げにでも行ってもらおう。
俺はリセルのレベル上げ用の魔石でも増やしに行こうかな。
お読みいただきありがとうございました。




