装備一式と薬草の買い出し
お楽しみ頂けると幸いです。
場面は変わって翌日のイレブンである。
「デテゴは昨日で快復して体力回復中だろうし、ザールさんも色々と準備をしてくれているんだろう。黒幕はこのまま放っておけば3日後には何らかの行動を起こす。早ければ明日何かあるかな。そうなると俺がすべきことは、安全の確保だよな」
装備を整え直すなどの買い物は先程終わらせた。想定しているのは対人戦。万が一が起こらないようにするつもりではあるが、防御を固めるに越したことは無い。蟻退治は絶対に行うつもりでいる。同じことにはならないだろうが、前回に比べると装備品に関して奮発はしておいた。
鉱物を使うと途端に値段が上がることに驚きである。胸当ての下に着る服から手甲まで戦闘用はこれで全て一新した。以下現在の装備は表示するとこちらである。
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装備
主武器:魔鉄手甲
頭 :魔鉄鉢金
体防具:魔鉄の胸当て
上半身:魔絹のシャツ
腕 :(魔鉄手甲)
下半身:魔牛革のズボン
足 :魔鉄の安全靴
装飾品:女神の腕輪
:ノーマルシンボル
:合成糸のマント
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まず格闘術しかまだ取得していないので手元を抑えるための魔鉄手甲を主武器に据えている。武器を持てば腕装備へと反映される。攻撃も防御も上がる良い品だ。手だけでなく手首から腕までの広い範囲を覆っている。ただの鉄ではなく魔力が染みている魔鉄で鍛えられている分、普通の鉄よりも丈夫だが、魔力はまだ良くできるらしい。それは他の装備品にも言えることだそうだが、今あるものを有効活用できるならそれに越したことはない。
原料の問題をとやかく言っても仕方ない。原産地へ行くことがあればそのとき考えることにする。要は魔法が宿しやすくなるような金属であれば今の俺の戦い方への補強になるからそれで構わない。
魔鉄のことは以上として、鉢金は忍者が額に付けているものだと考えてくれればそれで構わない。何か文字や絵を入れるサービスがあれば利用したが、あいにくと無かったのでそのままだ。器材を揃えれば自分で彫ってみても良いかもしれない。
胸当てはそのままだ。上半身を前後で守れるようになっている。前側だけは腹も若干守ってくれている。鳩尾は守っておきたいしな。
魔鉄繋がりで靴はサイズが合うものがあって良かった。靴底とつま先に魔鉄が仕込んである。蹴りの攻撃力が上がるし、足元の心配をする必要がなくなる。若干足元の感覚についての慣れが必要になるらしく、これは慣れていくしかないと店員に言われた。
あとはシャツとズボンだが、これもある程度収入が安定した冒険者が好んで着るものを選んだ。デザインとしてのセンスも興味も無いので、お勧めの物を選んだ。これに関しては普段使いとしていくつか購入しておいたので着まわしていこうと思う。
魔絹のシャツは前世で着ていたようなロングT感覚で着れるし、魔牛革のズボンは素材は違うがジーパンを履いているような感じだ。いつもその組み合わせで過ごしていたので、久々の着心地を感じて安心する。
最後にマントも良いものにした。丈夫な糸や魔力の籠った糸など複数種類で糸をより合わせて作った糸を更に編み込んである。
物理だけでなく、魔力攻撃に対しても非常に有効な防御を示してくれるので良い買い物だった。これだけは流れもの市で見つけた。
手がかかっている品だし、流れもの市だったため非常に高かったが、今回揃えたものが全て高いので今更である。予備も含めて買い占めさせてもらった。
製作者に還元があるそうなので、少しでも足しになってくれればと願う。
「お金が一気に減ってしまったな。買い物前の5%くらいしか残ってない…。あぁ、食料だけは買い足しておかないと。あとは薬草類もか。材料が無かったら何も作れないしな」
装備品を整えたことで持ち金が一気に少なくなったが、手に入れた魔石なども残っているし、そもそも素材は一つも売っていないので一財産稼げるだけのものは持っている。現金が必要ないから換金していないだけだ。冒険者組合に少しくらい卸した方が良いのかもしれないが、どこで何の情報が抜かれるか分からないのでやめておく。俺が生きているだけでも相手からすれば驚かれる話だろう。そこはバレても構わないけれども。
これからポーション類を作成することになればかかる費用も抑えられるので、あまり使わなくて済む。装備品も現状で言えばこれ以上に良い装備品は見つからなさそうだし、長く使っていくなら良い買い物をしたと思っておく。
とはいえ、王国では良い素材がなかなか手に入らないから値段は高いが、性能はそこそこである。あくまでクリア後と比較の基準なので職人には聞かせられない。前回よりも良いものと考えよう。
ステータスが上がったので、重さによる素早さのマイナス補正がかかることも無いしちょうど良かった。
装備品もいつか自作できるようにしてみても良いのかもしれない。自作までは出来なくても既製品に手を加えて少しでも性能を良くすることも出来るはずだし。
自作出来ない理由は素材が集まらないからだが、技術だけはスキルで何とか出来るわけだし良い考えかもしれない。
まあそれも今回の騒動が無事終了してからの話だ。必要なものをまた買いに来た。
「すいませ~ん」
「あぁ。昨日の坊やか」
調合セットを買った店に来た。店内を見た感じ、取り扱っている薬品は良さそうだし、素材の管理も良いのではないかと推測した。外に採取しに行く時間が取れないなら買うしかない。
格好は昨日とほぼ同じで、煙管で良い香りをさせながら休憩していたようだ。昨日も今日も店員を見かけないから店の一切を一人で仕切っているのだろうか。休憩のところに来たのなら申し訳ないことをした。さっさと用件を済ませてしまおう。
「はい。昨日はありがとうございました。ポーションとか薬類を作っておきたいので素材も売ってますか?」
「気分が乗らなくて昨日から作ってないからね。少し多めにあるよ。どのくらいほしいんだい?」
「金額指定で良いですかね?2000ガル分ほど買えますか?」
「あんたそんなに金持ってるのかい?」
「先に見せておきましょうか?」
そういって両替してあった2000ガル分にあたる大銀貨2枚を見せて目の前に置く。
「簡単に見せるんじゃないよ。ザールの知り合いの中でも飛びぬけて変な奴だね」
「誉め言葉として受け取っておきます」
「揃えてくるから待っときな」
「はい。ありがとうございます」
そう言って店の奥へと引っ込んでいった。その間に店内を見るが、やはりポーション類はかなり質が良さそうだ。品質もなかなかに良いしが特筆すべきは種類の多彩さだ。
解熱剤一つ取っても大人用と子ども用と分けて置いてある。更に子ども用は味も果物ごとに分けて作られている。この心遣いは俺には無かった。デテゴにも味としては良くないものを飲ませている。常識範囲内のはずだ。
文句は言われないだろうが、配慮すべき課題かもしれない。まあポーションに味を求めるのは品質の次の問題だろう。美味しいけど効果が弱いのであれば意味は無いし。
「はいよ、これで準備できたよ。欲しがるなら大丈夫だと思うけど、採取してから時間が経っている物があるよ。なるべく早く使っておくれ」
「分かりました!」
「あと、金額が大きかったからね。あたしの作ったポーションもおまけで付けておくよ。何かの参考にしな」
「研究したらもう買いに来なくなるかもしれませんよ?」
「一人来なくなったくらいで店潰すようなことはしてないよ。固定客もいるんでね」
「それは失礼しました」
一般人向けの薬も作っているのだから毎日の売り上げもあるのだろう。確かに失礼だったかもしれない。
「構わないよ。面白そうな子だし。あんたなら何かやってくれそうかもしれないしね」
「はぁ…。また何かあったら来させてもらいますね」
「あんた名前は?」
「僕の名前はイレブンと言います」
「イレブンね。あたしの名前はメディさ。また来なよ」
「はい。また来ます」
そう言って店を出た。まさかその日のうちに土下座しに来ることになるとは思っていなかった。
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