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11周目始めました

どうしても話が固くなってしまったので、設定を少し変えてもう一度最初から始めることにしました。よければお楽しみください。

恥ずかしいほどの誤字報告を頂いたので修正しました。ありがとうございます

『ホシモノ』の目玉は膨大なスキルと自由度の高さだ。2か月に一度運営が出す新作の魔物を狩るでも良いし、現実にあるものもファンタジーのものも作ることもできるし、様々なスキルを活かして闘技場でPVP、料理大会、オリジナル装備の品評会などなど多彩な遊び方が出来ると話題になった。

本編のストーリーをクリアせずとも遊び込めるようになっているが、本編のストーリーをクリアすれば特殊スキルを身に付けることが出来るからどちらかといえば俺は周回推奨派である。


『俺』は色んな物語を見るのが好きなので、本編を中心に遊んでいた。


「遊べって言われてもな。今までも自分の思うように遊んでたつもりだけどなぁ」

「戦闘で敵うやつはいないけど、お遊びスキルの初歩、料理や細工で遊んだか?」

「スキルは持ってる」

「サブイベントのためにな!それらでもまだまだ十分に遊べるだろうが!」


『俺』と友人の話に挙がっているのは、『ある星の物語』略して『ホシモノ』と呼ばれる据え置き型の機器で超やり込み型のVRMMORPGだ。ハッキリ言ってこの制作チームは頭がおかしい。仕様上本編は一人で遊ぶことになるけれど、とんでもなく自由度の高い遊び方が出来る。スキルを活用すればもう一つの現実世界の出来上がりだ。

一生遊べるRPGと銘打たれて発売されたが、その名に間違いはなかった。課金も出来るが、育成時間の短縮が出来るアイテム一本だけだ。キッズたちは時間をかけてがんばって育て、資金を抱えるが時間の無い大人たちはジャブっと注ぎこむ者もいた。要は公平だといえば公平だ。

キャラ良し、ストーリー良し、音楽良し、操作性良し、更にやり込みは最上級で無限大。新しいものに手を出す気にならないのは唯一のダメなところか。


金はバイトとある事情で一人暮らしをするのに困っていないが、時間は余りまくると噂に聞いた大学生活。そんな生活を始めるにあたって大学合格発表に安心し、引っ越しを終わらせて周囲の環境も確かめた3日後、俺は高1の時に発売された『ホシモノ』に手を出した。発売から3年以上経過していてもまだ人気のあるゲームだったからずっとやってみたかった。

始めてから2年が経過して、『ホシモノ』の世界を満喫していた。途中から目標にしていた事柄はようやく2か月前に達成した。まだ油断してはいけないと思っていたが、そろそろ気を緩めても良さそうだ。そう思っていた矢先に『ホシモノ』を通じて仲良くなった大学同期の友人からある賭けを持ちかけられて負けてしまった。


「お前のは言い訳だ。もう少し他のところにも目を向けてみろって。楽しいことも良い奴もいるって。他人が怖いのは分かるけどな。公式も最後に必ず『遊べ!』って言ってるんだしよ。ま、今のお前は賭けの敗者だ。言うことを聞いてもらおうか」


数少ない、本当に少ない友人に言われた。感情面に関しては友人の言葉を信じる方が良いと経験から学んでいた。ならば今回も言うとおりにした方が良い。

サブイベントはもちろんやっていたが、それは本来のストーリーから少し外れただけのNPCに対してだけだ。


リアルのプレイヤーと交流するイベントについては生来の人見知りが少々邪魔をして、うまく交流できなかった。動きはリアルに近いが表情に関しては現実の完全再現とはなっていなかった。

きちんと顔が見えて少し話が出来て仲良くなれば問題は無い。ある程度見れば分かる。そんなわけでゲームの中で信用できるのは友人から広がった仲間内だけだ。色々と言い訳をしてソロで出来る本編攻略にのみ精を出していた。


結局のところ、長期休みの間は戦闘以外のスキルを鍛えるように言われた。大学生特有のちょっとした賭けだ。食堂で見かけた人たちが何を注文するか。『俺』は冷やし中華で、友人はカレーうどん。

このクソ暑いというのに、指定された人物がわざわざカレーうどんを頼むとは思わなかった。ありえないとは思ったが負けは負けだ。抵抗したとしてもきっと従うことになるだろう。


賭けに負けた代償は長期休み終了間際の建築イベントに参加することになった。予想通りに理詰めで詰められ、白旗を揚げた。

10周もした上で本編クリア済みであれば色々と解禁されている。ただ、金でスキルを上げるのも嫌だったので新たに11周目を始めることにした。

帰宅した『俺』は電源を起動させつつ、長時間集中しても構わないように準備をする。最後にコントローラーを持ち、ゴーグルを頭に乗せる。


「いろいろ遊べって言われてもな…。俺は俺の思うとおりに遊んでるのにな」


そう言って最後の補給とばかりに氷の入ったグラスから麦茶を飲む。飲み終わったらゴーグルをセットする。視界良好、耳も痛くない。スマホはひざの上だから何かあれば震えるだろう。


「1週間集中すればバイトあっても本編は終わるか。まあ11周目始めよ。キャラ設定は原点に戻るとするか…。序盤の戦闘曲も好きだしな」


年齢と種族と性別を色々と組み合わせると本編を進めるキャラが設定できる。体格も色々と変更できるので自分に近づけても良いし、真逆でも構わない。

それでRPGとして成立させられるのだから技術の進歩は凄い。それから周回特典の1つである、『初期設定特殊変更』で選択できる項目を増やし、更に数値設定を色々と行う。種族をスキルポイント偏重型の『変人』に、更に初期ステータスを犠牲にスキルポイントを獲得する。

種族『変人』がネットでの一番のお勧めだ。ステータスの伸びを犠牲にしてスキルポイントを大量取得できるようにする。これが最終的に一番強くなる。

ステータスは最低値から始めても最初の村でレベルを上げさえすれば問題無い。10周完走した経験は伊達じゃない。戦闘に関しては自信がある。今更本編の雑魚敵如きに致死ダメージを負わされるとも思わない。


周回特典はほとんどが特殊スキルとして用意されている。『初期設定特殊変更』を含めて全部10個だけ。これは公式の発表だ。11周目は今までの自分を少し変えようとするきっかけに過ぎない。もし友人がそこまで考えてくれていたのなら…良い友人を持った。


今までの10周で活かすところは活かしつつ、まっさらな気持ちで始めてみる。VRゴーグルを付けて手元は見えないがコントローラーを操作する。

本編の冒険を始めようとしたとき、目の前にはオープニングのムービーが始まる……ことはなく、ただ真っ白な光が広がり、目を瞑っても貫通してくるほど強い輝いた。


第三者の視点で見ると、その日世界から学生が一人、忽然と姿を消した。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「はっ!」


体を起こすとしばらくの期間、人が住まなかったことで寂れてしまったような、木造の家が見えた。視界に入るのは家が多く、少し離れたところには井戸が見える。村の内と外を示す柵も見えた。

なんとなく、見覚えのある場所だった。


「このボロボロな村の光景はグレイブ村…?4番目の町に行く途中の人が住まなくなった設定の村…。え?コントローラー持つ感覚が無い…え?現実?」


頬をつねる。そんなモーションは無かった。というか手に頬を触った感覚がある。もう一度つねる。


「痛い…。俺、自宅にいたよな…?ホシモノの11周目を始めようとしたところで、そしたらムービーじゃなくて目の前が白くなって…」


とりあえず座ってはいられないと土埃を払って立ち上がる。そこで服が今まで来ていた部屋着と変わっていることに気が付く。明らかに安物の服へと変わっている。ドラマでしか見たことがない。いや、ドラマじゃなくてこのデザインは何かで見たことがある。

よく考えてみると目線も若干低くなっているような気がする。『俺』の身長は175センチはあった。高いと言えなくはない…、はずの身長だった。よく考えれば高校の卒業後自転車生活ではなくなり、それ以来少し太ったはずなのにそれも解消されている気がする。手が明らかに自分の手じゃない気がする。


「ふー。落ち着け、落ち着け…」


少し見覚えのある光景であることに、体を抱きしめて震える。必死に自分に落ち着くように言い聞かせて、現実に口には出しても何も起こらないはずの言葉を呟く。


「ステータス」


音もなく見慣れた画面が手の届く位置に現れた。


「マジかよ…」


そう呟いて表示された画面を観察する。パッと見て違っているのは項目としていくつか削られていることだ。具体的にはセーブとロードの文字が無い。表示されたのは現在の自分のステータスだ。さっき設定したばかりだから覚えている。最弱のステータスだ。


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名前:イレブン 種族:変人 年齢:15

レベル:1

経験値:0/5

保有SP 1500P

HP :10/10

MP :5/5

筋力 :1

頑丈 :1

素早さ:1

器用さ:1

魔力 :1

運  :1


攻撃力:6

魔攻力:1

守備力:6

魔防力:3

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名前は捻りもなく、11周目ということでイレブンにした。種族が変人になっているということはそのほかのステータスも設定した通りになっているのだろう。実際最弱が過ぎるほどのステータスだ。

スキルポイントだけが高いが、1500なんて一瞬で消えてなくなる数字だ。本気で強くなろうと思ったらこの100倍あってもまだ足りない。

同じ画面で見れるのは操作キャラの立ち姿だ。間違いない程に初期装備だが、それよりも気になるのは顔だ。


「誰…?」

お読みいただいてありがとうございました。最初は何も動きが無いので面白くはないでしょうが、楽しんでいただけるようにしていきます。

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