八幡平頂上から「ふけの湯」へ
東八幡平を出る時は晴天だったのに
八幡平頂上は曇っていた。
そのため、見渡すことはできなかったけれど、
広い広い雪原が、広がっているのだろう。
山の天気は変わりやすい。
吹雪の時には1m先も見えなくなるほどだという。
八幡平頂上はあまりにも平坦で広いので、
方向を見失い遭難した人もあったのだとか。
課長は
「だからこうして、ロープを持ってるんですよ」と
腰に付けたロープの輪を叩いてみせた。
平坦な八幡平頂上をスケーティング気分で滑り終えると
いよいよお待ちかねの林間コースに入る。
もう、こうなったら、ボーゲンさんの出番ですよ。
早速、隊列など気にせず、みんな思い思いに滑り始めた。
林間コースにはゲレンデスキーとは
全く異なる楽しさがあった。
木々とお話でもしているような
時として射し込む木漏れ日と戯れているような
かなりの距離を滑り降りた時、
「ここから先は谷だぞ」先頭から声が聞こえた。
その声のもとへ近づくと
確かに谷のように前面が深く落ち込んでいる。
「もう少し下流の方へ行って渡りましょう。」
と言うことで、谷川沿いを滑っていった。
すると、谷川の向こうに建物が見えた。
「ふけの湯だ!」誰かが叫んだ。
そう。
いつの間にか、私たちは「ふけの湯」の目の前まで
来ていたのだった。
「ふけの湯」は良い宿だった。
癒されるというのはこういうことを言うのかもしれない。
ふとそんな気持ちにしてくれる宿だった。




