春スキー
春スキー出発の日がやってきた。
私たちは上野駅で落ち合った。
はじめてお目にかかる課長さんの奥様は
私と同年配なのに、ろうたけた雰囲気がただよっている。
「いいなぁ!」と、憧れをいだいてしまった。
安西さんのフィアンセは3歳ほど年下のせいか
まだキャピキャピ感が残っているような可愛い方だった。
お二人とはすぐに打ち解けることができた。
男性3人は背が高い上に、
ダウンジャケットを着ているのだから
大男に見える。
その上、3人とももうこれ以上は入らない
というほど中身を詰め込んだキスリングを背負い
スキーを担いでいるのだから、
その威圧感は半端ではない。
他の乗客が「小さく見えま~す!」
そんな大男が3人もそろっている有様は
なにか浮世離れしていて
漫画の世界の中にいるようだった。
翌朝、目覚めると、
寝台列車の窓外は一面の銀世界だった。
美しい!
そして、なんと驚いたことに
ところどころに桜が咲いているではないか。
北国にやっと訪れた遅い春を
謳歌しているように。
幸い天候に恵まれた。
ホテルに到着するとまずは休憩。
寝台列車で眠れなかった人は
仮眠をしておくようにとのことだった。
午後は目の前に広がるゲレンデでスキーを楽しんだが、
翌日の強行軍のことを考えて早めに切り上げ、
作戦会議を開いた。
八幡平まではほとんど登りなので、登山靴で出発する。
先頭の課長、次に続く安西さんが、足場を踏み固めていくので、その足跡を登っていくこと。
吹き溜まりなどに落ち込むと大事に至ることもあるので、新雪を踏まないようにすること。
雪が深くなってきたら、スキーにシーリングを付けてスキーで登る。
体列は課長、安西さん、安西さんのフィアンセ、課長の奥様、私、藤沢さんの順となった。