02 好奇心
今日もいつも通り、狩りへ出かけようとしていたが父さんに呼び止められる。
なんでも、今日は仕事の用事で帝都までいかなきゃならないため、帰るのが遅くなるとのことだ。
「りょうかーい。それなら今日は村長おばあちゃんのところで夕飯食べるよ。」
「ああ、助かるよ。今日の夜、注射はしなくていいから、代わりに錠剤を飲むように。」
「わかってるよ。ユア!準備できた?」
ユアはドタドタと音を鳴らしながら階段を駆け下り、僕の隣に来る。
「できたよ。お父さん、行ってきます!」
「行ってきまーす。」
「いってらっしゃい。」
父さんはいつも通りドアの前で微笑んで立っており、僕たちが狩りに出るのを見届けた。
――
ああー。今日も森は心地がいい。なんだろう。すごいしっくりくるんだよなー。
「クスクス。お兄ちゃんは森だとすごい生き生きするよね。」
「え、そう?でもなんか居心地よくない?」
「そうだね。空気が気持ちいいよね。」
のんびり気ままに会話しながら森を散歩する。そう、狩りといってもいつもこんなものだ。森を歩いて、獲物を見つけるまでだらだらする。だらだらさいこー。
なんといってもユアと話すのは楽しい。これがあれか、いわゆる波長が合うってことなのかもしれない。それにユアはめっちゃ可愛い。贔屓目なしで可愛い。サラサラの栗色の髪にきれいな黄色の瞳、もうキュンキュンする。ユアと結婚したいなあ。でも、僕はお兄ちゃんだし、我慢しないと…。それに村の男子たちがユアのことを気にしているのは知っている。いつかはあいつらの中の誰かが……。どうしよう、我慢できる気がしない。もう他の誰かに取られるくらいなら……。
「だいじょうぶ。私はお兄ちゃんとずっと一緒だよ。」
「…ユアー!!」
うれしさのあまり、ユアに抱き着くウィル。
あー、もうお兄ちゃんじゃなければなあ…。そんなことを考えていると…。
「あ、反応があった。あっちのほうに魔物がいるね。どうする?」
探知魔法を使っていたユアが訪ねてくる。僕もなんとなく気配をとらえていたが、正確な方向まで。さすがユア。
「そうだね、村まで来ると危ないし、倒そうか。それに魔物肉もおいしいし。」
「そう思ってるのはお兄ちゃんだけだよー。」
――
難なく魔物を倒し、血抜きを終えた二人は、近くの河で魔物肉を焼きながら休んでいた。
「わあー、おいしそう。ユアは食べなくていいの?」
「それおいしいと思うのはお兄ちゃんだけだって。全部どうぞ。」
こんなにおいしいのに。
そう思いながらウィルは骨付き肉にかぶりつく。幸い、二人とも火属性が扱えるため、肉を焼くことができるのだ。
「そういえばお父さんってどうして帝都まで行ってるんだろ?」
「仕事でだって。父さんは研究者だし、それ関係じゃない?」
あまり今まで気にしていなかったが、僕たちは父さんがどんな仕事をしているのか知らない。家の地下室も父さん以外行けないようになってるし、この世界のためになることを研究している、とだけしか。いつか教えてもらえる日が来るんだろうか。
「ふーん。お父さん、大変なんだね。」
「そうだな。…なあ、ユア。そろそろ森の奥行かない?」
「だからダメだよお兄ちゃん。またお父さんに怒られるよ?」
「今度こそだいじょうぶ。今父さんは帝都に行っていないし、最近ここら辺の魔物じゃ相手にならないだろ?」
「えー、でも…。」
「少しだけ、ちょっと行くだけでいいから。な?」
「うーん、まあ、ちょっとだけなら…。」
「やった!じゃあ早く行こう!」
ウィルの押しに負けたが、内心で本当は少し興味があったユアは強引に森の奥に連れられていく。