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彼女の行動が可愛くてしょうがない


「絶対に無理だって」

「ううん、そんな事ない。成功してみせる!!!」

「倍返しされる未来しか浮かばないよ」



 11月の下旬。

 クラスメイトで同じ部活の大地と一緒に購買から戻って来た時に、そんな会話を聞いた。不思議に思っていると僕の彼女である星夜が、友達のゆかりと何やら話している。



「ふっほほ、ほふほふ?」

「あー、うん。座る座る」

「いや、何で分かるんだよ……」



 大地から座らないのかと聞かれ、普通に答えている。そんな受け答えを聞いていた友達からそんな事を言われる。

 ちょっと考えて「大地だし?」と答えると「なんじゃそれ」と、納得したようなしていないような顔で弁当を頬張っていた。


 チラリと星夜の事を見てみると、彼女は何やら熱弁している。

 本好きなゆかりはそれを一通り聞き終えると「無理だね」と否定的。すぐに「協力してよ!!!」とお願いした星夜に首を振った。


 集中して聞いてみると「怖いし無理」とか、「巻き添えはごめんだ」と。

 まるで自分が被害を被る様な言い方だ。不思議に思っていると友達がこそっと聞いて来た。



「んで、どうするんだよ。お前は」

「何が?」

「もう少ししたら12月。12月っていたらよぉ……」



 あぁ、そうか。

 12月はクリスマスがあるね。例年通り、パーティーする予定でいる。去年は僕の家でやったから、今年は星夜の家かな。

 大地とゆかりも誘うつもりでいる。そう言ったら、目を輝かせて「ほむ!!!」と聞いてくる。



「今のは何となく分かった。ホントかって言いたいんだろ」

「んぐ、んぐ!!!」



 そんな嬉しそうに首を縦に振られてもな……。

 よく食べるもんね。ちゃんとお弁当を持って来てるのに、こうして足りないからと購買に色々と買って来る。

 そこで待ったをかけたのは、聞いて来た友達だ。



「おい、例年通りにやるのかよ」

「いけない?」

「それでアイツは満足するのか」

「……」



 ま、そう聞かれるのは無理ないね。

 でも急に恋人だからといつもの態度と変えると、星夜は対応出来ないのかすぐに慌てる。

 慌ててる姿も可愛いし、ちょっとした言葉で顔を赤くする。色んな顔を見れて嬉しいのだというのと「はいはい。ごちそうさま」とげんなりとした。


 聞いて来たのはそっちだよね?

 その反応はおかしいぞ。



「じゃあ、毎年なんかプレゼントしてんの?」

「小物とかノートとか。でも、そうだね……。今年は違う物を送ってみようかな」

「……むむ」



 隣を見るとしょんぼりとした様子で、黙々とパンを食べている。

 あぁ、誘えられなくてショックなのか。

 それとも沢山の料理が食べられなくてショックなのか……。



「2人が作ったケーキ、美味かった。……また食べられると思ったんだ」

「あーうん。なんかごめん」



 そんなにショックを受けるとは思わず、反射的に謝ったよ。

 僕と星夜が作ったケーキ、そんなに好評だとは思わなかったな。終業式の日にケーキでも贈るか。

 


「本当か!? 約束だぞ!!!」

「う、うん。大丈夫、忘れないから平気だから」

「よっぽど美味かったんだな。……あ、俺は来年に予約いれとく」

「しれっと入るんだ」



 両手を握って嬉しそうに言われたら、作らないなんて言えないしね。

 来年に予約を入れるって言うのがなぁ。少しだけ、嫌な感じに思えるのは気のせいかな。


 ……お母さんに色々と相談しないと。



 12月のある日。

 部活帰りにふと街の風景を見る。頭の中で星夜と歩くならどこが良いのかと考えてしまう。

 パンケーキが美味しかった喫茶店は絶対に入れよう。マスターの淹れるコーヒーは美味しいし、苦手を克服してくれたのもある。


 知っている街がクリスマス仕様になっていくのを見ると、同じなのに何だか違うように思えた。

 ショーウィンドウにあるアクセサリーを見て「あっ」とある事を思いついた。


 

 終業式を終えて、部活の帰りに大地に家に寄って貰った。

 約束通りケーキを作ったし、家族分も含めて渡すと泣きながらお礼を言われた。大げさな気もするけど、ちゃんと星夜とで作ったと言うと更に泣かれた。


 電話で星夜にクリスマスにデートをしようと誘う。嬉しそうに行くと答えてくれたから、それを聞いただけで満足してしまう自分がいる。

 我ながら単純だとも思うが――それも含めて僕だしね。


 とは言えちょっと予想はしていた。

 彼女は楽しみな事があるとテンションが上がってなかなか寝れない。その日に着て行く服やカバンもちゃんと用意してるんだけど、決まって寝坊している。


 予想通りと言うべきか、星夜は遅刻してきた。

 慌て過ぎてて、水たまりにも気付かないでいた。あのままだと服だけでなく、彼女が寒くしてしまう。

 送ってくれた星夜のお父さんが気付いて、代わりに水たまりで服を汚したけど。

 顔を青くする星夜に、気にするなと言って車を走らせた。そのままテンションが下がっていく星夜に、僕はあの喫茶店に行こうと誘った。


 カフェラテを飲んで一息をつく。

 落ち着いた雰囲気の店内に優しいマスター。さっきまでデートを楽しむ余裕がなかった星夜だったけど、どうやら調子を取り戻したようだ。

 今では嬉しそうに玉子サンドイッチを食べている。



「ん~~。サラダも美味しい♪」

「あ、ちょっと待って」

「え」



 キョトンとする星夜が可愛い。

 そう思いつつ、頬についたマヨネーズをペーパーで拭きとる。途端に真っ赤になると「な、な……」と言葉に出来ないのか口をパクパクしている。



「拭き取らないで、すくって食べれば良かった?」

「っ!? そ、そんな事言わないでよ!!!」



 うがーーと文句を言われるけど、そんな姿も可愛いからなぁ。

 必死で否定してるけど、ちょっとは期待してたって事かな。クスクスと笑う僕を、反省してないんだと更に怒りを見せる。


 星夜は気付いてないんだろうけど。

 僕達のやり取りをマスターも常連さん達も密かに見てるって事に。普段ならこんな恥ずかしいやり取りは外じゃしないと言ってるもんね。


 僕と一緒で星夜も、デートが楽しくてしょうがないんだ。

 同じ気持ちなのが嬉しくて、嬉しくて――。

 だからこそ最高のプレゼントを渡したなと思う。喜んでもらえるかなと考え、楽しくなっている僕に星夜は「イチャイチャ禁止!!!」と言い放つ。


 絶対に無理なんだよ。

 そう思った僕の気持ちは、常連さん達に伝わったのか無言で頷ていた。星夜は最後までそれに気付く事もない。








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