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今世界で起こっていること

  王は続けた。「いま北部前線では二つのことが進行している。一つは五年前からはじまったオーク共との戦争だ。この五年間に我々はいくつかの砦を落とされた。というのも奴らは非常に高度な軍事行動をとるようになったのだ。オークがある程度統率した軍事行動をとることは知られていたが、前線指揮官によれば今の奴らの軍隊は人間のそれと遜色ないかそれ以上のもののようだ。オークは死を恐れない勇猛な戦士だ。これが高度な作戦行動の元にあるとなると、非常な脅威だ」王は目を細めて北の地平線をにらみつけた。王の脳裏では激しい戦闘で命を落とした兵士たちの亡骸が映し出さえていた。「そのうちに軍隊の中に人間が紛れ込んでいるのが目撃された…そして奴らは、オークたちに混じり、魔法を使い兵たちを殺し始めたのだ。」

「国賊の魔法使いが、スタウダマイアーの他にもいるということですか?」

「そうだ。そして、やつらの中には極大魔法まで使うものが現れた」

「極大魔法…」

「発動に数日かける大がかりな魔法だ。炎の嵐を起こし百もの稲妻を落とす。我々の砦はこういったものに対してまったく防御を有していない。そしてこういった魔法を使えるものは極々一部に限られる。特に『大乱の雹』と呼ばれる、特大の雹を降らす大嵐の魔法は、この世でたった一人しか使えるものがいない」

「それがスタウダマイアー氏であると」

「そうだ。きみに任務を与える!」王は鋭い眼光でクリスの目を直視していった。「敵陣深く浸潤しスタウダマイアーを抹殺しろ!これが任務の一つだ。」

「は」クリスは答えた。「して他の任務とは?」

「もう一つはカマラン山脈を越えるルートの探索だ。この斥候任務に君が最適だと翁から推薦があった。カマランは人間を寄せ付けぬ巨大な山脈だ…だが千年前にロキが軍隊を連れて通過している。何か峠道のような人知れぬ隘路があるのだろう。これを発見し軍隊を先導しろ。そしてゆくゆくはアスタロトを抹殺するのだ」王は今や先ほどまでの嘆きを打ち捨て、堂々たるさまで述べた。「なにか質問は」

 クリスは一瞬迷ってから口を開いた「スタウダマイアーがアスタロトと接触したとお考えになる根拠はなんなのですか?」

「それは私から話そう」王の重臣たちの一人が答えた。彼はエルフの古老だった。こぶだらけの古木でできた杖にようやっとよりかかり立っていた。鋭く尖った耳の穴から細く白い毛がたくさん飛び出していた。

「古代の魔法には強力すぎる故禁忌とされた術がいくつもある。例えばヒトを作る魔法…ホムンクルスを作る魔法などだ。それは人の道理から外れすぎた魔法ゆえエルフやドワーフ達の間でもはるか昔に捨てられた魔法だ。そして、ほかにもこういった魔法がある…人を蘇らせる魔法だ。そしてその人間を操る魔法などだ」

「前線からはこういった報告がある」王がその先を引き継いだ「一度殺したオークたちが蘇り再度襲い掛かってきたと。死んだ軍友が突如敵軍に紛れ襲い掛かってきたと。無論オークが蘇生魔術など知っているはずがない。どんな人間でもだ。これは古代の叡智に触れなければなしえないことだ」

「アスタロトの権能だ」エルフの古老が言った。彼の目は興奮で見開いていた。「彼は配下に下った者に過去と未来の叡智を授ける。アスタロトの知識だ」

「僭越ながら申し上げます」クリスは言った。「それでもアスタロトそのものに魔法を授かった根拠はないのでは?例えば先ほどの石碑のように古代の魔法が再度発掘されたのやもしれません」

「いやアスタロトの知識だ!」エルフが叫んだ。極度の興奮で彼の目はむき出し瞳孔は完全に開いていた。細く鼻血が垂れ白い口髭を真っ赤に染めた。「アスタロトなのだ…彼の叡智、彼の見る未来、それが二千里離れたワシを呼び寄せるのだ。君は、魔法使いでないから分からない…むしろ毒手はそういったことに影響を受けないよう訓練を受ける。君と私は真逆だ。魔法使いは感覚を解き放ち大気の精霊たちの声を聞く…すると聞こえてくるのだ、アスタロトの囁きが!どこからともなく…どこでも雑念として入り込む。食事をしていると耳元でささやく。夢の中に立ち現れる!彼の持つ未来、無限の知識、誰も知らない過去の歴史たち…彼は呼んでいるのだ!私を!私たちを!世界中の魔法使いたちを!無限の力が!」彼はそう叫んだあと皆の視線を感じふと我に返った。そして気恥ずかしさに身を縮こませながら、小さな声で言った。

「無論私が王の元を離れるはずはない。私はこの国に永遠の忠誠を誓っている。あくまで仮定の話だ…だがしかし、仮に私がアスタロトの元に馳せ参じれば、私の望みの幾何かは手に入るだろう…それは確かに感じるのだ…」エルフはみなを見渡しながら言った。

「アスタロトは確かに復活したのだ」

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