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そうしてぼくは家族の大切さを知る

 

 帰った途端、話があると妹に言われ机の前に正座させられた。なぜかあの自殺少女もいる。


「その、そっちの子とはどういうご関係?」

「同級生。なんなら、3年間同じクラス」


 妹に尋ねると、どこか機械的な返答が返ってきた。


「学生だとは思ってたけど……」


 まさか妹と同級生とは思わなかったな。


「全部聴いたよ。自殺、しようとしてたんだろ」

「……うん」


 ぼくは正直に頷いた。彼女がいるなら、ごまかせないだろう。それに、ここで嘘を言うのはなにか違う気がしたから。


「でもその、死ぬのはやめたからさ」


 だからもう済んだこと。……と、そうはいかないことは、さすがのぼくにもわかった。


「生命保険、解約しろ」「は?いやでも、あって困るもんでもないだろ。ここまで保険料もちゃんと払ってるし。将来なにがあるかも」「いいから解約しろ!」


 妹に、どんと胸を叩かれた。大した衝撃じゃなかったのに、その拳は胸の奥までよく響いた。


「死ぬなよ……」


 か細い声でぽつりとそうつぶやいた妹に、「……ごめん」と、ぼくにはそう答えることしかできなかった。


 妹に嫌われていると、そう思っていた。けどそれはぼく自身の願望だったのかもしれない。嫌われていれば、悲しむ人がいなければ死んでも別に許されると、そう思いたかっただけなのかもしれない。


「もう、死なない。お前が死ぬまで、絶対死なない」

「わたしが死んでも死ぬなよな!」


 妹は、またポカポカと胸を叩く。


 ……こんなぼくにでも、悲しんでくれる人がいる。そのことに胸が苦しいような、温かいような。ぼくは泣く妹を抱きしめようとして、「やめろ気色悪いっ」と突き飛ばされた。


……意外と元気そうでなによりだ。


 ぼくらのやりとりを静観していた自殺少女が、突き飛ばされたぼくを見てクスっと笑った。



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