第九十九話 雪解け
「あ、撃っちゃった」
振り向いたマサムネに驚いたのか、金髪のエルフ、ビビは構えた矢を手から放してしまう。
矢は勢いよく真っすぐ飛び、寸分のズレなくマサムネの股間に命中した。
キン
しかし矢は弾かれる。
「なんで股間に当たって金属音がするのよ・・・。つーかごめんなさい」
「うんうん、そうだね、謝罪が先だね。なんで俺の尻を狙ったんだ?新手の求愛行動か?」
「ちちち違うわよ!!あなた・・・不死身じゃない?お互い無傷で闘いを止めたかったのよ。
二人が争う必要なんかないじゃない!」
ビビは顔を真っ赤にしながら弁明をしている。
「争う理由ならあるさ。コイツはな・・・熟女好きとホザきながら実際はロリコンだったんだ。
仲間と見せかけて騙し討ちをしたんだぞ。許せるもんか」
「熟女好き・・・」
「だから誤解だってんだろ。仕方ない・・・プリシラあああ、プリシラどこだああああ」
マサムネは大声でプリシラを呼ぶ。出てこなくてもいいのに、崩れたガレキの後ろからプリシラがヒョッコリ顔を出す。
「ほら、クラノスケ俺を見ろ。無反応だろ?ついでにビビも見てくれないか?」
プリシラのほうをチラチラみながら、マサムネは腰に手を当てて仁王立ちをしている。
威風堂々。そんな言葉が良く似合う、いで立ちだ。
「なんでアタシまで見なきゃいけないのよ・・・バカじゃない」
「確かに・・・誤解・・・だったのか・・・」
クラノスケはその場にヘタりこむ。
「ふう・・・わかってくれたらそれでいいよ。で、ビビは何をしにきたんだ?」
「実際の所用事があるのは、クラノスケね。スノウから書状を預かってきているの。
声に出して読んではダメよ?黙って読んでね」
ビビは座り込んでいるクラノスケに手紙を渡す。
クラノスケは、表情も変えずに手紙を読み、しばらくして手紙を自ら出す炎で焼却処分した。
「・・・了解した。ありがとう。ビビ」
「気持ち悪いわ・・・クソロリコン」
ビビは罵声を浴びせたが晴れやかな笑顔だった。
「さて、用事も済んだことだし、脱出するわよ。マサムネ、クラノスケはどうする?」
「「おれは・・・」」
「プリシラさまああああ、たいへんですうううう」
食堂の入り口から看守兵が一人、勢いよく入ってくる。
「ど、どうしたデチか?」
「東の海より艦隊多数。水上にも空中にも戦艦が攻めてきております!!
トウ・バレンシアが魔族を率いて総攻撃をかけてきました!!」
事態は思わぬ方向へと進んでいった。
お読みいただきありがとうございました。
これにて七章完結です。
明日から八章です。