第九十八話 尻の痛み
(顔がヒリヒリするな。あとなぜか尻が痛い)
マサムネはむくりと起き上がる。
クラノスケが発した魔法弾を全弾顔面に直撃したのだ。
熱かったり冷たかったり、痺れたりなどなど、顔面がお祭り状態だったが、
次第に痛みはひいていく。
しかし、なぜか尻がチクチクする。
何か針のような鋭利なもので刺されたようなそんな痛みだ。
ふと顔を上げると、目の前に剣を振りかぶったクラノスケがいた。
マサムネはそれを咄嗟に白刃どりする。
「おい、気をそらすな集中しろ、これは真剣勝負なんだぞ・・・横やりが入ったからといって容赦はせんぞ」
クラノスケはゆっくりと顔を近づけながらマサムネに凄む。初めて会った時と比べると格段に圧力が大きくなっている。
「横やりってなんのこと・・・だぁ」
クラノスケの腹部に蹴りを入れて後ろへと振りほどく。
クラノスケとの距離が開くと、再度尻がチクチクする。
「お前まさか・・・気づいてないのか?」
「だから何のことかわからんぞ。尻がチクチクするだけだ」
「後ろを振り返ってみろ!!バカ野郎!!」
「真剣勝負の最中に背なんか向けられるかバカ野郎!!」
だが尻の痛みは消えない。
「お前・・・矢がずっと尻に当たってるんだぞ?」
「なんで気づかないかなぁ・・・つか、鋼の矢を弾く尻ってなんなの」
聞き覚えのある声がした――
マサムネは後ろを振り返る。
足元には、20本以上の鏃が拉げた矢が落ちている。
さらに後方には呆れた顔で弓を構えた金髪のエルフが立っていた。