第九十七話 一進一退
(やっときたか・・・エクスカリバー・・・これだけ時間がかかったってことは、遠くから来てくれたんだな・・・ありがとよ、相棒)
マサムネは、銀色の斧を握りしめ構える。
刃を後方にした下段の構えだ。
クラノスケの方はというと、剣道の上段の構えをとっている。
剣と斧が開けた穴で、海水が勢いよく食堂に入ってきている。
監獄の兵士や囚人たちは、パニック状態だ。
そんな喧噪の中、無言で睨み合う二人の男。
海水が足首まで溜まってきているが、微動だにせしない。
お互いが見せる筈のない隙を伺っているのだ。
最初の一歩はマサムネが先だった。
バシャバシャと水を跳ねながら、対戦相手の方へと走る。
お互いが間合いに入ると同時に渾身の一撃を繰り出す。
振り下ろした剣と振り上げた斧がぶつかると、
衝撃波が発生し周囲にある物や人が吹き飛ばされてしまった。
そんなことには気にも止めず、二人は攻撃をやめない。
1、2、3撃目までは、お互い全力で刃をぶつけ合うことができた。
しかし、斧の連撃に向かない特性からか、徐々にマサムネが剣を受け止めるだけで精一杯。片やクラノスケには余裕が生まれ、隙をついた攻撃ができる。
かに思えた。
マサムネは、上段からの剣撃を後ろへ飛んでかわし、その反動を利用して、全力の横薙ぎを放つ。咄嗟に剣の腹で受け止めたクラノスケはその衝撃のまま後方へと吹きとばされた。
(くっ、やはり一撃の威力は奴に分がある・・・ならば)
「こちらは手数だ!エレメンタルバレット!」
クラノスケの身体から、7色の魔法弾が射出される。
マサムネは、斧を扇風機のように回転させ、全弾撃ち落とす——には成功したのだが、そのまま斧も手から落としてしまった。
「痺れた・・・雷弾か・・・」
「ふふふ、詰みだな。エレメンタルバレット」
クラノスケは、先ほどと同じく7色の魔法弾を発射、同時に自らも突進する。
トドメを刺しにきたのだ。
絶対絶命・・・しかし、マサムネはニヤリと笑った。
「・・・斧よ俺の正面で回転しろ」
「ば、バカな・・・音声操縦だと・・・」
クラノスケは焦る。
(このまま魔法弾が撃ち落とされると今度はマサムネの拳と音声操縦の斧が襲いかかってくる。突進した状態では危ない)
咄嗟に、自分にブレーキをかける。
しかし、斧は地面と平行に回転している。そのまま魔法弾は斧の横を飛び、全弾マサムネの顔面に命中した。
「突っ込んどきゃよかったよ・・・」