第八十七話 太陽フレアで煮る
「あの・・・タウさん・・・溶かすって・・・いったい・・」
マサムネは恐る恐る質問する。
「ドロドロに溶かすという意味、肉体改造には構成要素を変えることが必要」
「身体の70%は水分とかそういうことを変えるってことですか?元の形には戻れるのですか?」
「平気。マサムネの体質は瞬間再生能力がある。それに鉱物を混ぜる。硬くなる。もしかしたら魔力を帯びるかもしれない。やる価値はある」
「鉱物?」
「そこに立てかけてある」
タウは壁にたてかけてある、竜の盾を指差す。
マサムネが、先日まで下着として履いていたものだ。
「あれを?」
「ドラゴニウムで出来ている。ユニバースで一番硬い金属。魔力との親和性も高い。マサムネが魔法を使えるようになればさらに化ける」
ゴクリ。
マサムネは生唾を飲み込む。
(ドラゴニウム・・・なんてカッコいい響きなのだ。ドラゴニウムとの融合なんて熱すぎる展開だ・・・。でも)
「どうやってその硬い金属を溶かすのですか?」
タウは今度は空を指差す。
「太陽の熱を使う。このコンロ、カチッとすると太陽フレアが出る。それで煮る。鍋の温度が1500万℃くらいになるから大丈夫。痛みは感じない」
「せ、せんごひゃくまん・・・」
マサムネは動揺している。ユニバースに来てから大抵のことでは驚かなかったが、
タウの小屋は驚きの連続だ。
「わかりました。では、よろしくお願いします」
マサムネは覚悟を決める。
何度か塵になったことがある。今回も一瞬だと考えた。
「わかった、準備する」
そういうと、タウはコンロを点火させる。
「イグニッション」
コンロから青みの混じった白色の炎が飛び出す。
「今から鍋をこの上に置いて、ドラゴニウムを入れる。炎が熱すぎて、鍋が十分しか持たない。躊躇せずに飛び込め」
「わかりました。飛び込みますから絶対に押さないでくださいね」
マサムネは固唾を飲んで、その時を待つ。
コンロの上に鍋が置かれる。大人が3人は入れるくらい大きな鍋だ。
太陽フレアの上に置いた瞬間から鍋の色が真っ赤に染まる。
間髪入れずにタウは竜の盾を浮遊させ鍋へと放り込む。
盾も一瞬で溶け、銀色のドロドロとしたものに変貌した。
「次、マサムネ」
マサムネは意を決して飛び込もうとした。が、タウに宙に浮かされ、心の準備関係なく、
大鍋へ放り込まれた。
「ちょ・・・まっ・・・あっつ」
その言葉を最後にマサムネも太陽フレアの余熱に包まれる。
鍋の中でマサムネが溶けたものとドラゴニウムが混ざり合っていく。
残されたタウは、コンロを止める。
そして、窓を全開にして中身の入った鍋を全力で外へと放り投げる。
鍋は、水切り石のごとく、雪面を蒸発させ跳ねていく。
不思議と中身がこぼれることなく、鍋は雪山を高速でくだっていった。
これ陸章終わりです。
まさかのドロドロエンド。
明日から7章です。
よろしくお願いします。




