第八話 森の変態、その真骨頂。
「ボルケーノ!ボルケーノ!ボルケーノ!ボルケーノ!ボルケーノ!ボルケーノ!
ボルケーノ!ボルケーノ!ボルケーノ!ボルケーノ!ボルケーノ!」
全裸の男を見た瞬間、リンは、炎魔法を連射した。
(あれは、ヤバいものだ。奴から発するプレッシャーはもちろん、
全裸で、マッチョで、笑顔って最悪だ。
さらに持ってる斧が凶悪。戦斧というのだろうか。
柄が長く先端に鋭い両刃がついている。もしかして、ミレニアムアームズなのか・・・。
会話をする必要なんかないんだ。早急に処理しないと・・・)
この間0.6秒。
マサムネの身体は、一瞬で炎に包まれ、消し炭になった。
「やったか!!俺様の炎を持ってすればこれぐらい造作もない」
リンと、深紅のゴーレムが突然の脅威を排除し、感極まっていると、
奇妙な変化が起こった。
マサムネの灰が集まって再生をはじめたのだ。
集まった灰が口の形をして語り出す。
「どうやら、世界樹の葉を主食にしたおかげで、自己再生能力を得たようだ。
しかもこのスピードなら『瞬間再生能力』だな!!」
リンと深紅のゴーレムの前に全裸の男が再生し、顕現した。
全裸の男は優しく語りかける。
「大丈夫、おれイヤ、ぼかぁ悪い奴じゃないよ。君たちと話がしたいんだ」
そうやって全裸の男は両手を広げて魔族二人に近づいてきた。
「く、くるなああああボルケーノ!!ボルケーノ!ボルカノン!!」
リンは、笑顔で近づいてくる全裸の男に危険を感じ、再度、炎魔法を放った。
しかし、心がひどく乱れてしまったので、狙いが定まらない。
炎弾は、あさっての方向に飛び、木に火をつけてしまった。
火は隣の木にうつり、ドンドン燃え広がっていく。
世界樹の森の一部が燃えている。マサムネの家である森が。
「おまえは、森を燃やすのか?森の敵か? 」
マサムネの顔色がみるみる変わっていく。
今にも戦斧を振り回し、突っ込んできそうだ。
そのあまりの形相に恐怖し、リンは言葉がでてこない。
代わりに、震えた声で深紅のゴーレムがマサムネに話しかけた。
「おい、止まれ、変態。この場には15万体のメタルガーディアンがいるんだ。いかに不死身の変態とて、いつかは疲れるんだ。動けなくなるハズだ。おとなしく投降しろ。その手に持っている戦斧を渡すんだ 」
その挑発に呼応するように、リンたち魔族の後ろから、地平線いっぱいのゴーレムが姿を現した。
100体200体の話ではない。地平線の向こうがゴーレムで溢れて見えない。
数万体のゴーレムが敵意をむき出しに襲いかかってくるのだ。
そのあまりにも異様な光景に、誰もが畏怖を覚えそうなものだ。
だが、マサムネは無表情。怯まない。
相手が誰であろうと、森を焼かれた恨みを許すつもりはないらしい。
「是非もなし。戦斧が欲しけりゃくれてやる」
マサムネはハンマー投げの要領でクルクル回転し、両手で思いっきり、戦斧を投げ飛ばした。
ズガガガガ
戦斧は、クルクルと横に回転しながら、弧を描くように飛び、
地平線いっぱいのゴーレムを薙ぎ払っていった。
ゴーレムに当たる度に砕け、破片が吹き飛び、また次のゴーレムに当たる。
中には戦斧の衝撃でドミノ倒しになるゴーレムも。
「とりあえず第一波は、ぶっつぶしたかな。なかなかいい武器だな。戦斧」
マサムネは、この戦斧をエクスカリバーと呼ぶことにしたらしい。
「こい、戦斧!」
マサムネが戦斧を呼ぶと、敵陣に突き刺さった戦斧は、自動で浮かび、
マサムネの手元に戻っていった。
「いい子だ、戦斧」
と言いながら、マサムネは戦斧に口づけをする。
刃物に正面からキスをしたものだから、顔に縦線一筋の傷がついた。
だが、ゴーレムの数は多い。第一波を退けたとはいえ、
まだまだ空から万単位のゴーレムが降ってくる。
マサムネは、倒すのが面倒になってきていた。
そこで考える。
(あの深紅のゴーレム。奴は隊長機に違いない。
倒すと他のゴーレムも止まる筈だ。なら奴を殺ろう。
でも、ボスキャラには必殺技を使わないとだな。一応、見せ場だし。
斧の必殺技か・・・派手なのは、薪割りダイナミックだ)
解説しよう。
薪割りダイナミックとは、空高くジャンプし、
天空から薪割りのごとく、敵を一刀両断するカッコいい斧技である。
この間、0.6秒。
マサムネは、地面を思いっきり蹴り、跳躍した。
高く、高く、高く・・・。
気づいたら雲の上を飛んでいるーーまだ上がる。
マサムネは、雲を飛び越え、成層圏を突き抜け、呼吸困難になり、気絶した。
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