第七十九話 乾杯
ユニバース西部にある【城塞都市トラバキア】
竜人族が治めるこの街は、強さと礼節で規律を保っている。
初代町長キース・トラバキアは、まさにその典型。
誰もがキースに憧れ、敬い、銅像を建てるぐらい尊敬されている。
そんなキースの銅像がある街の中心地点。
トラバキア市民が待ち合わせ場所に良く使うので、人通りがとにかく多い。
その広場に突如、空から光がさしこむ。
ぱあああああああ
「えええ!人、多っ!!」
金髪青眼のエルフが、光の中から現れた。
「なんだなんだ、新手のアイドルか?」
「お母さん、あの人、すごい肌を露出しているね」
「しっ、見ちゃいけません、自信があるのよ。お母さんもあと、5歳若けりゃ、太もも出したわよ」
「親方、空からエルフのべっぴんさんが降ってきたぞ」
(何よこれ・・・いきなり目立ちまくりじゃないのよ・・・・とりあえず、場所を変えましょう。異世界といえば、冒険者ギルドね)
ビビは、記憶を失っていたが、ファンタジーの世界への順応は早かった。
おそらく、前世では、夜な夜な、なろう小説サイトに足を運び、ファンタジー系のランキングを上からチェックしていたのだろう。最近のなろう系は、タイトルがあらすじも兼ねているので、どんな話か把握し易い。しかも面白い作品ばかりなのだ。逆に短いタイトルの作品は、中身で勝負するから作者の腕の見せ所だ!!なので、ランキング外の短いタイトルの作品も面白いモノが多いのだ!!
トラバキア冒険者ギルド
ビビはスイングドアを開けて中に入る。
ギルド内は、酒場と併設している。
荒くれ者が、テーブルの上で騒ぎまくり、中には裸で踊っていたりする者もいる。
冒険者というものは、皆こんな感じなのだろうか。
(なんて活気があるんだろう・・・。ムキムキマッチョの裸見れたわ。ラッキー)
ビビはギルドの受付へは行かず、酒場のカウンターの席へ座る。
「マスター、キツイの1本ちょうだい」
「・・・あいよ」
「なんだ姉ちゃん、見ない顔だな。ミルクでもいかがでちゅか〜ぎゃはははは」
2つ隣のハゲマッチョが絡んできた。
ビビはマスターからジョッキを受け取り、ハゲマッチョに近づく。
「お近づきのシルシよ。乾杯しましょ?」
ビビはハゲマッチョにウインクを飛ばす。
男はもうデレデレだ。
「ぐへへへ、今日は良い酒が飲めそうだ、かんぽがぱ」
ビビは、ジョッキを握りそのまま、ハゲマッチョの顔面に右ストレートを打ち込む。
男は吹き飛び、そのままのびてしまった。
「おい見ろよ、鋼のダストンを吹き飛ばすなんて、あの女只者じゃねえぞ」
「何よ。ダラしないわね。私の酒が飲めないっていうの?」
ビビは持っているジョッキを一気飲みし、乾かす。乾杯の言葉を体現していた。
その後、ビビは三日三晩、そこで酒を飲み続けた。