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ユニバース!  作者: ふぁい
第伍章 魔族侵攻編
71/130

第七十一話 それぞれのそれぞれ

「はぁ、はぁ、はぁ」


ゼノンは息を切らして走っている。

戦場の奥の方でマサムネが見えた。

しかも、ボコボコに殴られている。



(急がないと・・・相手はあの、『トウ・バレンシア』だ)


どうやらゼノンの見知った人物が、

マサムネの相手をしているようだ。


しかし、戦場の端から端までは遠く、ゼノンが目的地のちょうど真ん中ぐらいに到着する頃、全ては決着した。


マサムネは消え、トウは無頼へと帰投する。

ゼノンは黙って見ることしかできなかった。

その場に立ち尽くすゼノン。


そこへ、




「そんなに一生懸命で、どうなさったんです?ゼン家の跡取り」




ゼノンは声のした方に視線を向ける。

先ほどまでトウ・バレンシアと互角に闘っていた男だ。

遠くからは良く見えなかったが、服装が同じだ。




「・・・あなたはマサムネの味方なのか?」




ゼノンは男に問いを投げかける。

ヤグルシは、不敵な笑いを浮かべている。


「質問に質問で返して恐縮です。その質問、そっくりそのまま、

 あなたにします。あなたは、マサムネ君の味方ですか?

 全力で走っていましたが、トウ・バレンシアと闘うおつもりだったのですか?

 魔族のあなたが・・・。あんな服を着ていない人間を助ける?

 堂々と、あなたの父君へ宣言できるのですか?

 

 無理でしょう。

 あなたは父に逆らえない。昔からそうだったでしょう。

 グズ木偶の坊野郎と呼ばれて何も言い返せなかったじゃないですか」




なぜか、目の前の男はゼノンの素性を全て知っているようだった。

ゼノンは俯いたまま顔を上げることができない。



(・・・この男の言っていることは正しい。

 オイラは父に逆らうことができなかった。

 幼なじみからもイジメられて、ただふさぎ込んでいた。

 そんな自分が、何ができようか。あのマサムネが歯が立たない相手なのだ。

 役に立つハズがなない。出っ歯の男の言う通りだ・・・)



「マサムネ君は、あっしが転送しました。おそらく無事でしょう。

 あなたは、もう帰りなさい。弱者はこれからの闘いでは不要。

 その命、大切にしたほうがいいッスヨ」


そう言い残し、ヤグルシが転移魔法を使おうとした瞬間、


「待ってくれ、出っ歯さん!オイラを無頼へ送ってくれないか?

 送ってくれるだけでいい!!お願いします」



ゼノンは頼み込む姿勢のまま跳躍し、そのまま土下座へと移行した。



これが秘奥儀、ジャンピング土下座である。



「妙な技を使いますね・・・。そんな事をして、あっしに何か得でもあるんでしょうか?」



ヤグルシは意地悪な笑みを浮かべて、ゼノンを見下ろす。



すかさず、ゼノンは起き上がる。



「・・・オイラに・・・オイラにできることは・・・これだああああ」


掌に魔力を込め、ゼノンはヤグルシの出っ歯目掛けて正拳突きを打ち込む。

闇の波動がヤグルシの歯を押し込んでいく・・・。



なんと!ヤグルシの前歯が引っ込んだのだ!!



「アンタの出っ歯は治した!コンプレックスだったんだろ?わかるぜ」



ゼノンは晴れやかな迷いなき表情だ。



「く・・・出っ歯が全員、コンプレックス持ちだと決めつけるな!!

 唯一のアイデンティティだったのに・・・。

 風俗店で出っ歯軍曹プレイができなくなったッス・・・。トホホ・・・。

 やる気は充分みたいッスね。

 わかりました。あなたを無頼へ送ります。見返りはもういいッス」



ヤグルシはニコリと笑い、印を結ぶ。

ゼノンは光に包まれ、やがて消えた。









同刻、レオンガルド見張り台。





「そんな・・・マサムネが負けた?」


ビビはショックを受けているようだ。

出会ってまだ1日も経っていないが、

マサムネは、殺しても死ぬような男ではない。

そんな男が惨敗したのだ。信じられないのも無理はない。



「あの消え方・・・おそらくヤグルシが転移でどこかへ飛ばしたのでしょう。

 ヤグルシは運命神の側近です。おそらく、マサムネさんは無事です。

 心配いりませんよ。ビビ」



スノウは至って冷静に事実を告げる。


「あなた、あの男を知っているの?アタシには見えた。

 地蔵の攻撃を全てかわしていた。

 あんなスゴい人を知っているなんて、あなた何者なの?」



「・・・その質問に答える前に、あなたにも一つ聞いておきたいことがある。

 ビビ・・・あなた、ハーフですか?」



「ハーフ?エルフか、ハーフエルフかってこと?アタシは純粋なエルフよ。

 それが何か関係があるの?」



「ふふふ、ユニバースでの話ではありません。()()()()話です」



スノウは首に下げたネックレスを外し、ビビに見せる。


ビビも持っている、神様から貰った翠色の石だった。

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