第六十七話 セイの実感
サハギンの死体の山に座り、マサムネはサハギンを食べている。
「随分と派手に暴れちゃってるネ〜俺っち珍しくオコだわ〜」
カイ・ウォーターサーブは笑顔でマサムネに話しかける。
笑顔とは裏腹に並々ならぬプレッシャーを放っている。
「なんだ・・・チャラ男か・・・ユニバースにもいるんだな」
「チャラ男ってなんスか?俺っちのこと言っちゃってる?」
「ああ、まあ気にしないでくれ。もしかして、あなたは大将か?」
「そだね〜。だからアンちゃんがしでかしたことは、見逃せないヨ。
服装は好きなんだけどね。残念だわ〜」
「そうか・・・一つだけ言ってもいいか?」
「うん?いいよ〜お別れの挨拶みたいだね〜」
マサムネは、食べかけのサハギンの腕を投げ捨て、こう言った。
「あなたの部下たち・・・パサパサだな。臭みもある」
「ウォータープリズン!!!」
カイの右手から大量の水が飛び出す。
水はマサムネを飲み込み、マサムネを覆う。
水でできたボールの中に入れられてしまったのだ。
「ガボガボガボ」
「苦しそうだね〜人間は水中では無力だもんネ〜
ナハハハハ。俺っちオコらすと楽には死ねないヨ〜」
マサムネは手足をバタバタし、なんとか水球から脱出を試みる。
だが、身体が思うように動かなくなってきた。
マサムネの身体にだけ重しが乗っているようなそんな感覚だ。
「ナハハハハ、身体が重たいヨネ〜もしかして、俺たち相性バツグン?」
カイの後ろで何やら呪文を詠唱している女性がいる。
紫の髪の女性。派手なビキニを身につけ、褐色の肌をこれでもかと露出している。
魔導士というには似つかわしくない格好だ。
右手と左手には、刃物で斬ったような線が無数にある。
「フフフ相性抜群で嬉しいですわ。生きてるって実感できる」
魔界九家が一人、レツ・グラビアノスだ。
少し陰があるが、魔界九家でも一、二を争う美人という声もある。
といっても、他の女性当主は、ピョウ・ブリザドリスという醜女なのだが。
そんな九家トップクラスの美女は、鼻から一筋の血を流している。
(やっと動きが止められたわ。なんて膂力なの・・・。重力1000倍かけているのよ)
どうやら、レツは、重力を操る魔法を得意としているようだ。
「とはいえ、水中だとそう長くは持たないでしょう。
永遠に眠りなさい」
「ナハハハ、アンちゃんの敗因は、俺っちの深い心を怒らせたってことだナ〜」
マサムネは、身動きがとれなくなっている。
ユグドラシルの森では滝壺で水中訓練も行なっていた。
なので、十分程度の潜水には耐えられる。
だが、身動きが取れないと話は別だ。このままだと溺死してしまう。
(マズいな・・・。死にそうだ。しかし、あのねーちゃん、尻がヤバいな。
あの尻はいい・・・いいぞ・・・もっと別の角度で見てみたい・・・。
見てみたいんだ・・・)
マサムネの丹田から熱いパワーがこみ上げてくる。
尻が見たい。もっと尻が見たい。
性欲は、爆発する!
マサムネの意志に呼応するかのように、
そばにある戦斧が光を放つ。
(おお・・・戦斧よ、また進化するのか。
よし・・・こい!!この窮地を乗り越えるぞ!)
「うお・・・まぶし・・なんだヨ〜変身か!!」
「何よあの光・・・生きてるって実感できる・・・でも少し怖い。
お尻がソワソワするわ」
マサムネは光に包まれる。
そして、形が変わっていく。
ビョウ・ブリザドリスとの闘いでは、戦斧から手斧へと形態変化をした。
環境を打破する為の変化だ。
だが、今回の変化は、斧ではない。
マサムネが変わっていく。
マサムネの手足にサハギンのヒレが生えてきたのだ!!