第六十六話 全裸男のサハギン祭り
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ」
ゼノンは階段を駆け下りていく。
(どうして、オイラは走っているんだ。
人名救助の為。これは納得だ。
人が死ぬのは見たくない。後味が悪いからだ。
では、助けたらそのあとは、どうするんだ。
魔族と戦えるのか? 否。
シャー・カーンの話を断ったのは、
クラノスケがクソ野郎だったからだ。
アイツの仲間になんかなる必要はない。
だが、魔族と人間が仲良くなることは大賛成だ。
マサムネにビビ、良い奴は人間サイドにもたくさんいる。
じゃあ、マサムネ達が魔族と戦うなら、おれはどうすればいいんだ。
同族を殴れるのだろうか。
戦えない。知らない奴だから、酷い奴だからといって魔族全部と戦うことはできない。
じゃあマサムネ達を見捨てるのか。できない。
どうすればいい。どうすればいいんだ)
ゼノンはいつのまにか屋外の壁まで到達し、
気づいたら壁を拳で殴り、粉砕していた。
溜まった水が空いた穴から少しずつ流れていく。
ポタポタとゼノンの拳からも血が流れ、水と混じりあう。
魔族の青い血は、水の中ではとても見つけ難く、すぐに見えなくなってしまった。
▼▼▼
「サハギン食うどおおおおお」
マサムネは、魔族軍の奥の陣地へと降下した。
今回、大気圏突入は自重。あまり高度を上げすぎると狙いが定めにくくなるためだ。
威力も強大すぎる。敵だけでなく味方まで消滅させてしまう。
そんなバカなことはできない。
目の前に美食があるのに、消滅だなんてとんでもない。
できれば生け捕りにしたい。マサムネの決意は固かった。
マサムネの全裸スカイフォールを直撃したサハギンはビチャビチャになった。
肉片と体液が混じりあい、食べるどころか見られたものではない。
半径200メートルにいる他のサハギンたちも同様の状態だ。
マサムネは、ビチャビチャの塊の中から目玉らしきものを拾い上げ、口にいれた。
「くちゃくちゃ、うむ塩気が効いているな。しかもDHAが入ってそうだ」
全裸男のサハギン狩りがはじまった!
「おうりゃああああ」
マサムネは、戦斧を振り回す。
高速で迫りくる鉄塊に巻き込まれたサハギンの身体が弾け飛ぶ。
魔族軍の後方では、死の嵐が巻き起こっていた。
「ムシャムシャ、パクパク」
マサムネは、粉砕したサハギンの腕や足を丸かじりしている。
斧刃には水色の血がベッタりとついている。
その血を拭って、突如、自分の顔に隈取の化粧をしていく。
これからさらにサハギンを殺す。
そのメッセージを込めたのかは定かではない。
だが奇しくも水色の隈取は、冷酷さを意味している。
顔は隈取、股間は竜、他は裸の変態一人。
異世界ユニバースに絶対に見たこともない新作歌舞伎が爆誕した。
(この肉、味はあまりしないな。だが葉っぱに比べると格段にいい。
肉質はパサパサしている。醤油が欲しい所だ。
味は兎も角、腹いっぱい食べてみるか)
だいたい200本ぐらいだろうか。
マサムネはサハギンの手足を食べ、それの50倍くらいの死体の山を築いた頃。
「わーお、マジでアタオカな奴が現れたなぁ。ちょっと遊ぼうぜアンちゃん」
アタオカとは、頭がおかしいの略語である。
小麦色の肌にアロハシャツ、魔界九家が一人、カイ・ウォーターサーブが現れた。




