第六十二話 俺のしあわせ
「ドラゴン級ですって。そんなランク聞いたことないわ」
スノウの言葉にビビは驚いているようだ。
ギルドには、冒険者のランクが設定されている。
ランクにより、受けられるクエストの目安となっているのだ。
ランクは下から
ゴブリン級
オーク級
オーガ級
サイクロプス級
ガーディアン級
グリフォン級
となっている。
ちなみに、ビビは5年間でグリフォン級へとランクを上げている。
グリフォン級になると、二つ名が国から貰えて、とてもいいのだ!
「これまで我が国ではグリフォン級がトップランクだったのですが、あなたが、嘆きの遺跡の竜を討伐したので、新設しました。いかがでしょうか。受けられるクエストも、報酬もゴブリン級とはケタ違いにはなると思います」
スノウは分厚い髭を触りながらマサムネに語りかける。
(確かに悪い話ではなさそうだ。いきなりギルド最強の冒険者として認められるのだ。
人に認められることは、素直に嬉しい。また正直、路銀にも困っていた所だ。
何か金策はないかと考えていた。報酬額が増えるなら願ってもない話だ。
素直に受ける以外選択肢はないだろう)
「だが、ことわる」
マサムネは、キメ顔でそう言った。
「バカなのですか?だから、ずっと裸なのでしょう?さっきから黙って聞いていれば、スノウ様から、このような破格の待遇などそうそう得られるものではありませんよ」
後ろで控えていた女騎士リエータがマサムネに対して反論する。
スノウは、興奮する側近を諌める。
「リエータ、それぐらいにしておきなさい。マサムネさんにも何かお考えがある筈。
良ければ聞かせてもらえませんか」
スノウからは笑みが消え、真剣な表情だ。
先ほど、部下を諌めたばかりだが、その瞳からは信じられないというような気配がする。
「そうだな・・・まず、おれは竜を倒していない。このパンツを貰ったから、認められたのかもはしれないがな。真実は違う。それに、急にゴブリン級から昇格したらよ、生活が一変しちまうよ。ダメだね。そんなの。人間、宝くじが当たったとしても幸せになれるとは限らない。分不相応な待遇は、身を滅ぼすんだ。地道にコツコツ昇っていくよ。それが俺が掴んでいる幸せだ」
マサムネはまたもやキメ顔でそういった。
そのとき、扉から兵士が息を切らして入ってきた。
「はあはあ・・・・賢者スノウ様、報告します。東より敵襲、敵襲です」
「むむ、東となれば魔族軍か。数はどれくらいだ?」
「その数・・・500万です。総攻撃かもしれません」
マサムネたちは、城の見張り台へと走っていく。
そこから見る景色一体が変わり果てていた。
東の地域が一面、黒い塊で覆われていた。