第五十七話 そしてまたどんの引き
アイアンメイデンから全裸の男が飛び出してきた。
見慣れない光景に空いた口が塞がらない者。
マサムネの持つ異様な雰囲気に呑まれ、腰を抜かした者など、反応は様々だ。
「マサムネ・・・良かった無事で・・・傷は大丈夫なのか?」
ゼノンはマサムネの元へ駆けつける。
アイアンメイデンの中の棘によって、
マサムネの身体は全身小さな穴が開いていた。
そこから血がボトボト落ちていっている。
だが、ゼノンの目の前でマサムネから垂れている血が、
ビデオの巻き戻しのようにマサムネの身体へと戻っていく。
血が戻り終わるとたちまち穴も塞がっていった。
「すごい・・・不死身なの?」
ビビは顔を両手で抑えながらも、指の隙間から全裸の男の一部始終をバッチリ見ていた。
「うお、すっげぇ、エルフだ!金髪だ!!くんかくんか」
マサムネは、ビビを見るやいなや、縮地をつかい接近する。
全員が気づいた時にはビビのすぐ後ろで髪の毛の匂いをかいでいた。
「いや・・・ダメよ・・・そんな・・・」
ビビは頬を赤くしてモジモジしている。
「将軍・・・今の動き見えましたか?」
「ああ・・・見えたのは見えた。だがかなり素早い動きだ」
と、シャー・カーンとクラノスケがマサムネの動きについて話そうとした瞬間、
シャー・カーンの身体が地面に倒れた。後頭部を床に打ち付け気絶してしまった。
「あっけないな・・・でも、こいつが悪い奴だろ?」
そう言ったのはマサムネだ。
どうやら、ビビの髪の匂いを嗅いだあと、一瞬でシャー・カーンに近づき、
足払いで倒してしまったのだ。
「うわ、コイツ金歯じゃねえか。指輪も宝石だらけだ。よし全部貰って帰ろう」
そう言って、シャー・カーンの口の中に手を突っ込み1本ずつ歯を抜いていった。
抜くたびにシャー・カーンは叫びと共に意識が戻るが、マサムネはターバンを掴んで、
床に叩きつけた。
周囲の衛兵も、そばにいたクラノスケでさえ、恐怖で動けなかった。
関わったら殺される。痛みよりも酷い仕打ちをされるかもしれない。
そんな恐怖をマサムネから感じていた。
歯を抜いた後にターバンを掴んで床にたたきつける。
意識が戻り、また気絶をすることを繰り返していると、
シャー・カーンの口から泡が出てきた。
10の指から宝石を全て外し、口内の全ての金歯を抜き取り、
それらをシャー・カーンの被っていたターバンの中に入れた。
ターバンの下はキレイな禿頭だった。
さっきまで笑いまくっていた男が数分後に、
泡を吹いて身ぐるみをはがされたのである。
一同どん引きだ。初対面の相手にここまでできるだろうか。
金髪のエルフだけが頬を赤らめてマサムネを見ていた。