第五十五話 再会のエルフ
ビビは天井の空いた穴からこちらを応接間を覗きこむ。
エルフの金髪は、月夜に映えた。
ゼノンは空を見上げてしみじみ思う。
ビビは5年前と変わっていない。
エルフという種族は見た目がそうそう変わらないみたいだ。
「ゼノン、無事で良かったわ。話したいことはたくさんあるのだけれど・・・」
ビビはその場から飛び降りる。そして見事に赤絨毯の上に着地した。
「まずは、コイツらをぶん殴ってからね」
ビビはその場でクラノスケとシャー・カーンに宣戦布告をした。
「ビビ、久しぶりだな・・・。しかしこれは何のマネだ?」
クラノスケはビビの方を向いて問いかける。
平静を装っているが、声に怒気が含まれている。
「久しぶりねクラノスケ、武勇はトラバキアにも届いていたわ」
ビビは満面の笑顔でクラノスケの目を見つめる。
「でも、アタシの『千里眼』は誤摩化せないわ。インチキ変態ゲス野郎」
そういって、ビビはクラノスケに中指を突き立てた。
「ほう、トラバキアでは千里離れた所でも見渡せる弓師がいると聞く。
どこかから、朕と将軍が会っていたのでも見られましたかな」
シャー・カーンも会話に入ってきた。
その笑みからして、兵士が壊滅したこの状況に対してもまだ余裕があるようだ。
「まあ、そんな所ね。クラノスケは、まあ初めて会った時から胡散臭いヤツと思っていたからね。気づいてなかったと思うけど。このナルシスト!」
ビビはまたもクラノスケを挑発した。
クラノスケの顔が歪み、真っ赤な色になっていく。
「このビッチめ!!そこの愚図木偶の坊ゲス野郎と一緒に地獄へ送ってやるよ」
といって、腰につけていた剣を抜いた。
ゼノンは、思考をめぐらせる。
(2対2か・・・シャーは、ああ見えて戦闘力は高いほうだ。オイラでも足止め程度には、なるだろう・・・。情けない話だが、後はビビ頼みになるな。クラノスケも戦闘力は未知数。ビビとクラノスケの二人が5年でどれだけ強くなったかが鍵になるな)
この間、0,6秒。
「ゼノンは、あのターバン男を足止めしておいて。クラノスケはアタシがやるわ。エステルの敵討ちもあるし・・・いいわよね?」
ビビは正面の敵を見据えながらゼノンに話しかける。
「・・・わかった・・・来てくれてありがとう。感謝」
ゼノンも拳に魔力を込めながら話す。
「ふふふ、良いわよ。アンタは良い人って思っていたから」
ビビとゼノンが臨戦態勢に入ると同時に、クラノスケとシャー・カーンも武器を構える。
クラノスケは剣、シャー・カーンは、金属でできたチャクラムだ。
今まさに、2つの激闘が始まろうとしていた。
その時、
「将軍、クラノスケ将軍!!」
王国の衛兵が一人、応接室へと入ってくる。
「なんだ?この状況がわからないのか?」
クラノスケは苛立ちながら、兵士を睨みつける。
「申し訳ございません。ですが、外で暴れていた賊を捕縛しましたので、
連れてまいりました」
衛兵は達成感に満ちた表情だ。
「それは、後だ。今は忙しいんだ。バカ」
クラノスケは聞く耳持たない感じだ。
「え、実はもう運びこむ寸前です」
と、報告している衛兵の後ろから何かを引きずっているかのような音が聞こえてきた。
同時に兵士たちの会話も聞こえてくる。
「おーい、もうすぐ応接室だ、将軍に見せれるぞー頑張れー」
「めちゃくちゃ重てぇなあ・・・なんでこんな容れ物にいれたんだ?」
「仕方ねえだろ。縄で縛っても切っちまうし、鉄の錠をはめても破壊しちまうんだ」
「だからって、これはねえだろ」
兵士が四人掛かりで運んだ「それ」は、ゼノンたち4人の視界に同時に写った。
「「「「アイアンメイデン」」」」