第五十四話 ゼノンの答え
ゼノンはクラノスケとの冒険の日々を思い出す。
出会い、魔法で石を顔にぶつけられた。 −1
仲間になろうと誘ってくれた。 +1
ボスゴブリンとの闘いでは、やって欲しいことをしてくれなかった。 −1
王都ではぐれた自分を探すこともせず、新しいパーティを作って、
ダンジョンまで行っていた。 −1
自分が魔界九家と知っても差別せず仲間だと言ってくれた。 +1
ダンジョンでは、自分を盾にして罠を攻略した。 −1
竜の前では自分を見捨てて一人だけ逃げた −1
エステルをジロジロ見ていてロリコンだと思う。 +1
全身タイツのナルシスト −1
・・・答えは、でた。
「オイラは・・・仲間を見捨てるようなナルシストの仲間になるつもりはない。
殺れるものならやってみろ。このロリコン変態全身タイツ野郎!」
ゼノンは、中指を立ててクラノスケに宣戦布告した。
思い返すだけでも、コイツにはロクなことをされていないなと感じた。
「おれが、ロリコンだと・・・。どどどっどーしてそれを知っているのだ!」
クラノスケは、チラリとシャー・カーンを見ながらゼノンを問いつめる。
「・・・見てりゃあ・・わかるぜ」
ゼノンはニヤリと笑って、大理石のテーブルを思い切りひっくり返した。
クラノスケは、後ろにふっとぶ。
「将軍・・・・えええい、誰かヤツを殺せ!!手段は選ばん!!」
シャー・カーンの合図で、扉から多くの武装した魔族が入ってくる。
たちまちゼノンの周りは、兵士でいっぱいになった。
「・・・数が多いな・・・道連れは何人ぐらいだ・・・」
ゼノンは拳に魔力を込めて周囲を威嚇する。
同族を道連れにしても良かったが、半分はハッタリだ。
狙いはクラノスケの首。殺すことはできなくとも、顔面に拳を100発は叩き込みたかった。
(差し違えてでも、やりたいな。アイツの顔面をぐちゃぐちゃにしたい)
ゼノンは死を覚悟した。
兵士に突っ込むと見せかけてクラノスケに決死のアタックをかけようする。
そのときだった。
どごおおおおん
突如、天井が崩れ、瓦礫が振ってきた。
何かの魔法だろうか、強い衝撃で城の屋根をぶち破ったようだ。
兵士たちは、瓦礫で押しつぶされたものもいる。
間一髪かわしたゼノンは天井があった所を見る。
空が見えた。
すっかり夜になっており、月がとても綺麗だった。
王宮に突入する前に出会った男のことを思い出した。
「いざとなったら空から突入できるんだ」
「・・・マサムネ・・・か?」
「間に合ったみたいね」
あいた穴から誰かがひょっこり顔を出す。
空から振って来たのは、全裸の男ではなく、
金髪のエルフ、ヴァルヴァラ・ニコラエヴナだった。