第五十二話 驚きの白さ
「ゼノン様、こちらが応接間になります。しばらくお待ちください」
ゼノンは、見張りに案内されるがままついて来た。
レオンガルド城、応接室。
真っ赤な絨毯の上に大理石で出来た立派なテーブルが置かれている。
その大理石を囲むように華美な椅子が置かれていた。
室内は二十畳程の大部屋だ。貴族がパーティでも開くのだろうか。
壁際には、これでもかと意味ありげな絵画や銅像が飾られている。
そんな広い部屋にポツンと魔族が一人。
ゼノンはテーブルの一番端の席に座っている。
(シャー・カーンが、オイラを探しているだって・・・。何か狙いがあるのだろうか)
ゼノンは、見張りが言っていたシャーという者に心当たりがあるようだ。
華美な部屋の雰囲気に慣れていないのか、またはこれから会う男が苦手なのか、
ゼノンはソワソワしている。落ち着かない様子だ。
20分ぐらい待っただろうか。
獅子の紋章が入ったドアが開かれる。
「おおーやはり、ゼノン君だね!!まさかまた会えるなんて・・・」
頭に黄色のターバンを巻いた褐色の男が現れた。
両手の指には一本ごとに色の違う宝石の指輪がはめられている。
「お久しぶりです。カーン様」
ゼノンは男が入ってくると同時に立ち上がり、お辞儀をする。
「そんな、畏まらないでくれたまえよ。朕は君が子どもの頃から知っているんだよ。
いわば、叔父みたいな者さ。なんだったら父と呼んでくれてもいいんだよ。
ハッハッハ・・・顎が外れそうさ・・・とにかくかけてくれたまえ」
と言いながら、シャー・カーンはゼノンに着席を促す。
笑うとハッキリするのだが、シャー・カーンの歯は全て金歯だ。
「・・・そういって貰えると嬉しいです。父とはもう何年も会えていません」
ゼノンは俯きながら答えた。
「これは、失言だったかな。いやいや、子を心配しない親などいないよ。
ヴェルト様もきっとゼノン君の身を案じていたに違いない。
寡黙な人ほど、情に厚いって言うしね。あの人は違うか!!ハッハッハ」
シャー・カーンは、金歯をむき出しにして爆笑している。
何が面白いかはゼノンは理解できなかった。
カーンは続ける。
「ところで、ゼノン君、ここで出会えたのも武神様のお導きあってのこと。
宿命だと思わないかい?今日は折り入って、君に巡り会わせたい人物がいる。
このレオンガルドの将軍だ。どうぞ、入ってくれ」
獅子の紋章が入った扉はもう一度開かれる。
王国の将軍。
荘厳な鎧を身に纏う、威厳のある髭ダンディ。
ゼノンはそんな偏見を持っていた。だが、そのイメージは見事に打ち砕かれる。
扉の向こうからくる将軍と呼ばれた男は、白の全身タイツだった。
「・・・また会えて嬉しいよ、ゼノン」
クラノスケだった。




