第五十一話 マサムネの秘策
王都レオンガルド。
城と城下町を城壁が囲む、ユニバースでも有数の都市だ。
王都レオンガルドから西に数キロ離れた丘。
そこに二人の男が立っている。
「よし、ゼノン、君はここの反対側から城に入れ、俺はここから斧に乗って突っ込む。我ながら奇抜な格好をしている自覚はあるんだぜ。
これなら沢山の兵士が止めにくるハズ。正面で思いっきり暴れて騒ぎまくるから、その隙に王城へ入れ。大丈夫、いざとなったら空からでも突入できるんだ。俺のことは心配すんな。城で会おう、もちろん生きてな!!」
そう言いながらマサムネはゼノンを送りだす。
ゼノンは不安になりながらも王都の反対側を目指して歩き出す。
30分後、ゼノンは王都の東門付近に到着した。
何やら、兵士たちが騒がしい・・・。
ゼノンは聞き耳をたてる。
「どうやら西門に賊が現れたみたいだぞ。魔族かな?」
「城内にいる兵士が総動員で走っていっていたな。そんなにも大軍がきたのか?」
「竜がどうこう言ってるヤツもいた。あんなおぞましいものは見たことねえって」
(どうやらマサムネの囮作戦は発動したようだな。あの見張りも動くかもしれないしばらく様子を見よう)
ゼノンは物陰に隠れて待つことにした。
一方その頃マサムネは、
「おりゃあああ、俺は逃げも隠れもしないぞおお、出てこいやああ」
と、斧を振り回して地面を削りながら城門から出てくる兵士を威嚇していた。
城壁から約3分間隔で100本ほどの矢が飛んでくる。
そのほとんどを身体で受けながらもマサムネは怯まなかった。
「なんだアイツは、矢が効かないのか?人間のように見えるのだが化物か?!」
「魔法師部隊を呼べ!!ありったけの魔力で塵にするんだ」
西門の戦いは激化の一途をたどっていく。
一方東門のゼノンはというと、
(・・・くそう・・・・まだ城壁の中にも入れていない・・・)
東門の兵士はまだ見張りを続けていた。
確かにマサムネの存在は囮として一級品。だが、東門の見張りが持ち場を離れる理由はなかったのだ!!
(ダメだ・・・・時間をかけすぎるとマサムネが保たないかもしれない。
ここは一か八か正面突破だ。5年前とはいえ、これでも冒険者だったんだから、もしかしたら素通りできるかもしれない)
ゼノンは、淡い期待を抱いて、門の方へと歩き出す。
(気のせいか兵士の視線を感じる。あまり目を合わせない方がいい。だが挙動不振もいけない。あくまで自然体だ)
兵士の声が聞こえてくる。
「おい、見てみろよ、あの髪の色もしかして・・・」
「ああ、確かにリストに載っていたな!!ちょっと、そこの人、ちょっと」
ゼノンは兵士に声をかけられて身体がこわばる。
(リスト?指名手配でもされたか?もしくは、行方不明者リストとか。できれば穏便に進めたいな)
「シャー様から話は伺っております。ゼン・ゼノン様ですね。銀色に紫の髪色はゼン家の証、どうぞお通りください。謁見の間までご案内します」
まさかの大歓迎ムードだった。