第五十話 ドヤ笑顔
マサムネとゼノンは遺跡の入口まで戻ってきた。
ヒゲの親父が出迎える。
「おう、兄ちゃん!!どうやら、無事に戻ってきたな。3日も戻って来なかったから、死んだと思っていたぞ。その格好を見ると色々あったみたいだな・・・」
マサムネは、親父にスキルカードを渡す。
「ふむ・・・ささ、30階層突破だとおお。するってえとまさかその格好は・・・」
「ああ、なんとか竜に認めてもらえて盾をもらった。今は金属の下着にしか見えないかもしれないが・・・これは盾だ」
親父は驚きながら、マサムネの股間を凝視している。
「何言ってるかよくわかんねえが、そのフロント部分の迫力・・・本当に竜なのかもしれねえな・・・。これはすぐにギルドへ報告しなきゃなんねえ!すげえよ。アンタがユニバースで一番の冒険者かも知れねえぞ。しかもたった2人で攻略だなんて。うん?隣の兄ちゃん・・・・おめえまさか・・・5年前にこのダンジョンに潜った魔族じゃねえか?」
ヒゲ親父は、ゼノンの肩に飛びつき前後に揺らしている。
もしかすると、マサムネが竜に認められたことよりも驚いているかもしれない。
「・・・オイラがこの遺跡に入ったのは確かに5年前だ。覚えているのか?」
「当たりめえよ!俺はアンタの連れと、戻ってきたら連絡するって約束してたんだ。まさか、本当に生きていたなんて・・・こんな嬉しいことはねえよ!!」
ヒゲ親父は目を真っ赤に腫らして泣いていた。
つられてマサムネも泣いてしまった。漢の涙には弱いのだ。
「クラノスケが・・・オイラを待っているのか・・・」
ゼノンの顔も泣きそうになってきている。
「さあ・・・どうだろうな。遺跡から出てきたぐらいは、心配そうな顔してたさ。でも、この5年間アイツがこのダンジョンに来ることはなかった。一度たりともな。噂じゃ、今は王国の将軍をやってるって話じゃねえか。なんだか気にいらねえぜ」
ヒゲ親父は今度は顔を真っ赤にして怒りだした。
「なんだよ、その白状なヤツは!!俺もなんか許せねえぜ!!」
マサムネも親父につられて怒っている。漢の青筋にも弱いのだ。
「マサムネ・・・・オイラ、あなたのおかげで助かった。感謝している。だが、一緒にいけるのはここまでだ。行くところができた。オイラ・・・クラノスケに会いにいく。会って言いたいことがある。無事に生きて帰ってきたら、あなたに恩返しをさせてほしい」
ゼノンは覚悟を決めた表情でマサムネに語りだす。
「待てよ、兄ちゃん!もしかして、将軍に会いにいくのか?一人なんて無茶だぜ。今、王国には将軍が新設した魔族殲滅部隊『抜群』がいるんだ。魔族の兄ちゃんがいけば、たちまち殺されちまうぞ!!」
親父は親身になって、ゼノンを説得している。本当に優しい髭なのだ。
「まてい、二人とも。まあ、落ち着け。ゼノンは一人で行かさない。この戦———俺が武力介入する!!いい策もありまぁす!!」
左手は腰にあて、右手は天に向かって指をさす。
そう言うマサムネはドヤ笑顔だった。