第四十八話 竜と全裸、その行方
(やったか・・・)
竜が放ったブレスにより、マサムネは塵となった。
その十秒後ーー
マサムネがいた地点にきめ細やかな粒子が集まり始める。
その粒子一粒一粒が、隣同士でくっつき、無数の黒い塊を形成していく。
その姿は灯りに近づいていく蛾の大群のように見える。
蛾は、次第に人の形を形成し、そして、
「ふはははははは。俺は・・・俺は・・・不死身だああああ」
両手を腰にしたポーズのままマサムネは復活した。
全裸で豪快に笑うその姿は、悪魔のようにも見える。
笑った時に見える異様に白い歯が恐怖を倍増させた。
竜は生まれて初めて冷や汗をかく。
(こんなんどないせえっちゅうねん。復活ってセコすぎるわ・・・だが、諦めるな、ワシ。運命神から、せっかくもらった命だ。最後まで足掻いてやる!!悪魔のような彼奴とて、無限に復活できるワケじゃない・・・ハズ。ヤツの生命力か、ワシの体力、どちらが持つか勝負だ!!)
竜の身体から白い湯気のような気体が放出していく。
絶望に支配されてなるものか、そんな気迫が込められているようだ。
その後、46492回、竜は反重力ブレスをマサムネに放った。
つまり、46492回、マサムネは塵となった。
(ぷひゅーーーーもう・・・何もでねえ・・・)
チカラを使い果たした竜はその場に倒れ込む。
「終わりか・・・思ったより持ったな。では、お別れの時間だ」
マサムネは、戦斧を振り上げるーーー
斧を振り下ろすこともなく、そのまま倒れてしまった。
数時間後。
「いやー空腹で倒れるとは、予想外でしたよ。助けてくれてありがとうございます」
マサムネは、3日間仁王立ちで竜のブレスを受け続けた。
倒れた原因は、脱水症状だったのだ!
「よい、ワシとて本当は人間と仲良くしたい。だから血を与えた、応急処置だがな」
「うお、なんだこれ、頭の中に直接声が響いてる。すっげぇ、おれ、竜と会話してるよ。すっげぇ」
「そうか・・・言われてみればワシも神様以外とは全く会話をしておらぬ。不思議な感覚よ。心が熱くなっていくのう」
「へえー竜も人間らしい所だあるんだなあ・・・。竜よ、殺意をむき出しにして、申し訳なかった。それなのに、命を助けてくれてありがとうございます」
マサムネは、竜に見事な土下座をした。
「ふふふ、よい。三日三晩、命を削りあった仲ではないか。しかし、どうしてまたワシに戦いを挑んだのだ?」
「はい、スノウという旅の賢者から、あなたを倒すと魔法宮の結界を解いてくれるという交換条件をもちかけられまして・・・。それでこのようなことになった次第です。ただ、命の恩人を滅ぼすワケにはいきません。魔法宮に行くのは、諦めます。仕方ない。」
「賢者スノウ・・・なるほど。お主、彼奴に試されておるぞ・・・。ならばこれを持っていけ」
竜はそういうと、体内からドロドロの物体を吐き出した。
物体は、よく見ると竜の顔を模した盾だ。
「これは、スヴェルという盾だ。持ち主に合った形に変化する。ワシがチカラを認めた証となるだろう。持って行くが良い。これならば賢者も文句は言うまい」
「なんか、くせぇけど、ありがとうございます。血を分けてもらって、盾までいただくなんて・・・」
「ふははは、良い。気にするな。お主のように我を恐れず、裸でぶつかってくる勇気ある者は好きだ。その盾で大事な者でも守ってみせよ」
「ははは!大事なモノだなんて・・・盾なのに、パンツみたいな使い方じゃないですか!こうやって、股間の前に持っていってガード!!なんつって」
ふざけながら、マサムネは股間に盾を持っていく。盾の持ち手は形を変え、マサムネの腰に巻き付く。ちょうど股間の部分に竜の顔がフレームインする。
「うおお、この盾・・・おれの身体に絡み付いて、股間にミラクルフィットしてしまった・・・。これ、外せますよね?」
マサムネは、慌てながら竜に尋ねる。だが、身体はクネクネしてなんだか気持ちが良さそうだ。
「・・・・ああ、お主が外すと思えば、瞬時に外せるぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しばらくこのままにしておきます」
マサムネは、竜から盾を手に入れた!!