第四十話 見張りは、見た
「突然の訪問、失礼したします。拙者、スノウ=ライトニング。
王室で、賢者をやっております。いやはや。 」
クラノスケの部屋には蒼いローブを身に纏った老人が目の前にいる。
サンタクロースのような白い髭をたくわえ、目元の皺が優しそうな雰囲気を作りだしている。
「クラノスケ殿、王国で働く気はありませんか? 」
「突然ですね。どうして私が? 」
「実はギルドから報告がありまして、貴殿とヴァルヴァラ殿は、ミノタウロスを最速で倒した冒険者であると。そんな将来有望な若者を、冒険者として遊ばせておくには勿体ないと国としては判断いたしました 」
「一体何をすれば? 」
「王国ではこれから、魔族殲滅の特殊部隊を新設することになりましてな・・・。
貴殿には、隊長をお願いしたいのです。もちろん、戦いの前に、充分な訓練ができるよう、設備や訓練官は、こちらで準備いたします。給金が貰えて、安全に訓練ができる職場です!有事の際は指揮だけとってくだされば・・・。 」
(ダンジョンでレベル上げをしていると、竜みたいな強すぎる敵に遭遇するケースだってある。実際に死にかけたしな。うーむ、だが王国にいるとなると自由はきかないのではないか?訓練官が暑苦しい奴だったらいやだな・・・)
「訓練官は、どのような人なんですか? 」
「元冒険者の獣人です。幼子のように小柄な女性ですが、剣の腕はグリフォン級でもトップレベルと言われていました。充分な訓練ができるかと 」
「わかりました。お引き受けします 」
クラノスケは、自身にできる最高に男前な顔で答えた。
だがクラノスケは気づかない。
スノウが部屋に来てからずっと、神フォンが小さく揺れていたことに・・・。
▼▼▼▼▼
5年後―――
レオンガルドの見張り台。
二人の見張りが、城塞都市方面を監視している。
「いいなー鳥は自由で。おれもどこか旅に出たいよ」
「何ぼやいてるんだ。しっかり見張れ! 」
「いてーなー殴ることないだろーが。それに、誰も攻めてこねーよ。
クラノスケ将軍がいればウチと戦争するような国はないだろうぜ 」
「まあ、そうか。だからといって手を抜いていいというわけではない 」
「固いこと言うなよ・・・。あれ?おい、あれ見えるか?鳥だと思っていたけど、鳥にしちゃあ大きくねえか?」
「見えねえよ・・・。ちょっと双眼鏡貸せ!なんだありゃ?竜か?!竜がこっちにくるぞ! 」
「慌てるなバカ野郎、竜にしては小さすぎるだろう。せいぜい人間サイズだ」
「じゃあ、なんで竜の顔があるんだ?・・・あれは、腰の位置だ。下半身が竜で、上半身が人間か?そんなケンタウロスみたいなもんが飛ぶのか?」
「じょじょに見えてきたぞ・・・足は・・・人間の足だ。
なんか変な棒みたいなものに乗っている。股間は・・・竜の頭だ。
上半身は人間・・・か・・・あいつ股間以外裸だな 」
「するってえと、奴は全裸で竜の頭をパンツ替わりに履いてるってことか!! 」
「なんか、笑ってるぞ。ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ 」
「全軍に通達、股間が竜でそれ以外全裸の男が笑いながら飛んできたぞ。いいから兵をかき集めろ。総員戦闘配備だ。一斉射撃で迎え撃つ! 」
飛んできたのは、マサムネだった。
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これにて、3章終了です。
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