第四話 回復の理由
「まさかボロボロの身体が修復するなんて!」
マサムネは起き上がって辺りを見回した。
(首もよく回る。手足も動く、どこも痛くない!
これが転移特典なのか?自己修復能力・・・。運命神に要望していたものとは違う。
でも、もしそうならやってみたいことはある。とにかく確認してみよう)
マサムネは目の前にある大きな木に向かって、正拳突きをした。
ドスッ、ドスッ、ドスッ。
大木はびくともしなかった。反対に、拳は血まみれに。木の枝が傷口に刺さっている。
(うん、痛みはある。傷は治るか?)
マサムネは拳を見つめる。1、2、3秒経過。
拳は、血まみれのままだった。
(転移特典は、自己修復能力ではない・・・。ではおれは何故、助かったのだ。
何か魔法にかかった? 否
誰かがポーションをくれた? 否
何かを口にいれた?葉っぱを食べたような。葉っぱ?まさかな・・・・)
マサムネは、足下にある緑色の葉を口に入れた。
味はしない・・・が、拳の傷がみるみるふさがっていく!
「なんと!ここは世界樹の森かよ!!」
マサムネは興奮して、その場で叫んでしまった。誰もいない森に男の声がこだまする。
(なるほど、冒険のスタート地点としては悪くない。
まずは水辺を探すところから始めよう。生活基盤を確保して、そしたら修行だ。
あんな怖くて情けない気持ちはもうたくさんだ。身体を鍛えよう・・・。
どんだけ殴られたって、空から落ちたってビクともしない身体になるんだ。
世界樹の葉で回復するなら、少々追い込んでも大丈夫だろう。
思えば、空から落ちて、死にかけたこともプラスだったのだ。
今まで怠惰な生活を送っていた俺を、運命神が叱咤激励してくれたのかもしれない。
死ぬ気でやれっていうメッセージだったんだな・・・。ありがたや・・・。
そう、死んだら終わりなんだ。強くなりたい。いや、絶対に強くなってやる)
「ありがとう、運命神・・・。空から落としてくれて。おれ、頑張ってみるよ」
マサムネは高らかに拳を天に上げて、それは、いい顔で宣言した。
この大いなる勘違いが、ユニバースの危機を救うことになるとはまだ誰も知らない。
運命を司る神すらも・・・。
天界にて
「やっっべ、転送座標ミスった。高さの計算入れてなかったわ。アイツ生きてて良かったぁ」
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