第三十八話 絶望の果てに
竜が雄叫びを上げる。
石畳がたわみ、いまにも床から外れそうにガタガタと揺れる。
あまりの圧力に、全員がその場に膝まづくかのように這いつくばる。
(なんだ・と・・顔を上げることすらできない・・・
なぜ、竜がここにいる。最下層にいるんじゃないのか・・・
ヤバい、このままだと・・・全滅する)
クラノスケはチカラを振り絞り起き上がろうとする。が身体が動かない。
気力でなんとかなるというレベルではない。
クラノスケは背中で絶望を感じていた。
だが竜は容赦しない。
口を大きく開ける。
「ブ…レスがくる・・ぞ・・みんな逃げ・・・ 」
竜は口から火炎を吹く。RPGでは定番だ。
だが炎と表現するにはまだ足りない、
全てを破壊するかのような禍々しい光線が放たれる。
地面をせり上げ、4人を直撃する・・・かに思えた。
「ゼノン・・・」
ゼノンは立ち上がり両手に闇魔法の波動を集めて竜のブレスを受け止めている。
「・・・・みんな逃げ・・・ろおおお 」
だが放たれた閃光の威力は強く、徐々に押されていっている。長くは持たない。
「今の内に!!」
上からの圧力を利用して、ビビが左に横跳びし、矢を放つ。
「壱・弐・参・肆・伍・陸・漆・捌・弓! 」
ミノタウロスを爆散させた技だ。
矢は円を描くように竜へと向かっていく。
が、竜の堅い皮膚は、すべての矢を弾き落とす。
クラノスケもビビと同じ方向に転がりながら、ブレスの射線から退避する。
「ストーンバレット 」
渾身の魔力を込めて石弾を射出するが、竜に届く前に地に落とされた。
「ぐがああああああああ」
ゼノンはチカラの限りを込めてブレスを右にそらす。
それた閃光は、壁を突き抜けていく。
「いやああああ」
ビビが叫ぶ・・・ゼノンの右腕がない。
先ほど、閃光を弾いた時に腕ごと持っていかれたようだ。
「ビビ、しっかりなさい、ビビ!!」
エステルが叫ぶ、ビビは視線が定まっていない。
「ここまでのようね、ビビ、転移石よ」
と、エステルはビビに青色のクリスタルを投げつける。
クリスタルはビビに当たると砕け散り、ビビの姿が光に包まれて消えた。
「エ、エステル・・・い・・今のは? 」
クラノスケが尋ねる。叫んでもいないのに、声が枯れている。
「察しが悪いわね。これは転移石。一時撤退よ。
短い間だったけど、ここまでのようね、さようなら 」
と、エステルは転移石を叩き割ろうと腕を振り上げる。
今まで見たこともないような冷たい眼差しをしていた。
クラノスケはエステルに飛びつく。
「・・・・けて・・・・だずげで・・・ぐでえええ」
泣きじゃくるクラノスケ、エステルともみ合いになり、
転移石は、ゼノンの足下に転がっていく。
「ゼノン!! 」
クラノスケはゼノンを見る。
だが、ゼノンは青い石をじっと見つめている。
「・・・・よごせ!」
クラノスケはゼノンの顔面に前蹴りをいれ、よろめいた隙に転移石を掴む。
間髪入れずにその場で叩き割った。
クラノスケは光に包まれて、消えた。