第三十七話 ボスーーそして・・・
「ここが10階層か・・・ 」
クラノスケたちは、順調にダンジョン攻略を進めている。
途中、モンスターの他に、床を踏むと矢が飛んできたり、
有毒ガスが出てくる罠があったが、全てゼノンを盾にして進んだ。
矢傷を受け、毒をくらう度にエステルが治癒魔法をかける。
回復し、元気になると怪しい箇所にはゼノンを前に出させる。
途中からゼノンの責任感からくるものなのか、
他のメンバーが罠をくらう瞬間には、ゼノンが自ら飛び込むようになった。
ゴブリンが得意とするカバディの応用みたいだ。
「ありがとう、ゼノン、本当に頼れる奴だよ 」
言いながらクラノスケはゼノンの髪をクチャクチャにする。
クラノスケは良いことがあれば、頭を撫でたり、ハグをすれば、
人類皆喜ぶと思っている。仲間を盾にした罪悪感は皆無だ。
現在、一行は、10階層にある大きな扉の前で休憩をしている。
部屋の中はボスが出てきそうな雰囲気だ。
「よし、ゼノンの体力が回復したら入るか」
クラノスケは、ボス部屋(仮)のドアを思いっきり押して開けた。
ギィー
民族楽器ギロを奏でるような音がする。
ガシャン!
4人が部屋に入ったと同時に、天井からシャッターが落ちてくる。
「閉じ込められた!みんな気をつけろ! 」
クラノスケはパーティ全員に注意を促す。
真剣に指示を出しているが、気分は最高だ。
部屋の中心に魔法陣のようなものが描かれている。
その魔法陣の上に全長4メートルはある牛の化け物が立っていた。
「ミノタウロス! 」
エステルが叫ぶ。同時にビビが矢を放つ。
「壱・弐・参・肆・伍・陸・漆・捌・弓! 」
同時に9本の矢を放ち、円を描くようにしてミノタウロスの身体に突き刺さる。
直撃した瞬間、ミノタウロスは爆散した。
「・・・やったか・・・ 」
ミノタウロスは塵となっている。
確認と同時に身体に力がみなぎる。
経験値がパーティ全員に入ったようだ。
「すごいな、ビビ。必殺技を温存していたんだな。出番がなかったよ」
クラノスケは、笑顔でビビに話しかける。
剣を振って戦うことで、スキル面での成長ができなかったことは残念だったが、
楽して経験値が入ることは素直に嬉しい。
「ひひひ、出番とっちゃったわね・・・なんかお香くさいわね 」
勝利ムードから一変。空気がひりつく。
辺りをお香のようなニオイが立ち込める。
突然、魔法陣から紫色の煙が噴出した。
「なんだ・・・すごい圧力が・・・」
「動けな・・い・・・・」
4人は全員が金縛りにあったかのように動けなくなる。
クラノスケは思い出す。
(確か、あれはゲームで見たことがある。RPGの定番のボスキャラだ。
ギルドの受付嬢も30階層にいるって言ってたっけな。
どの冒険者もまだ倒したことがない伝説の存在・・・)
『 ドラゴン 』
煙が無散し、
絶対的な存在が現れた。
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