第三十五話 嘆きの遺跡のゼノン
嘆きの遺跡。
王都レオンガルドから北西に位置するダンジョンだ。
城塞都市トラバキア、魔法宮ディバインセレナ、王都レオンガルド。
隣接する3大都市から多くの冒険者が攻略にチカラを入れている。
だが、最下層第三十階層の攻略は未だ誰もなしえていない。
クラノスケは、ビビことヴァルヴァラ・ニコラエヴナと神官エステルの3人で、遺跡の入口に到着した。
そこには見慣れた大男が仁王立ちをしている。
「ゼノン、ゼノンじゃないか!! 」
「おお、クラノスケ、・・・ここで待っていると必ず会えると思っていたぞ 」
「そうなのか、待ち合わせ場所は決めてなかったから、当分会えないと思っていたぞ。
一緒にダンジョンに入るか? 」
ゼノンの執念には驚いていた。確かに待ち合わせ場所は決めていなかったが、
こんな所で合流できるなんて。ゼノンの闇魔法拳は強力だ。きっと戦力になる。
「クラノスケさんの知り合いの方ですか?魔族の方ですよね?」
エステルは、少し驚いているように見えた。
「うん?魔族だと何かマズいことでもあるのか?レオンガルドにも魔人は沢山いたように思ったが 」
クラノスケは、疑問に思ったことを口にした。転移者にユニバースの人種問題のことはわからない。
「いえ、ですがユニバースにおける魔族の方には、凶暴な方がいるんです。特に銀色の髪は、『魔界九家』の証、魔族第一主義の方々なのです。魔族の為なら殺人、強盗、陵辱、排泄、場所を構わず行なっている野蛮な人たちなんですよ 」
(エステルは、嘘つくようなタイプではない、何より可愛い。
魔界九家か・・・確かに、敵にすると厄介だな・・・)
エステルの言葉を受けて、クラノスケはゼノンをちらりと見る。
どんどん泣きそうな顔になっている。
「エステル、俺は、君が嘘を言っているようには思えない。魔界九家は、悪いヤツが多いのかもしれん。だが、このゼノンは大人しいしヤツだ。仲間のピンチの時には勇気を持って助けに来てくれる。心配しなくていい 」
クラノスケは胸を張ってエステルに言い切った。
ゼノンに対して悪い感情を持っていないのは本当だ。だが、言い切った真の目的は、
偏見を受けている者に手を差し伸べる俺ってナイスガイだろ、アピールだ。
「クラノスケ・・・ありがとう・・・ 」
ゼノンは目に涙を浮かべているが、笑顔だ。
「クラノスケさんが、そういうのなら、私も大丈夫です。みなさん、すみません。
初対面なのに嫌なことを言ってしまって・・・。ゼノンさんよろしくおねがいします 」
「・・・ああよろしく 」
「話はまとまったみたいね。じゃあ早く入りましょう! 」
ビビは特に気にしていないみたいだった。サバサバ系エルフなのだろうか。
4人は受付にスキルカードを見せ、ダンジョンへと中に入っていった。
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