第三十四話 偽りではあるが、とびきりの笑顔
そそくさとギルドを出ようとするクラノスケに、
二人の亜人が話しかけてきた。
一人は、弓を背負った金髪のエルフ。
耳は尖っていて背はクラノスケと同じぐらいだ。
一人は、帽子をかぶり神官のような格好をした獣人。
こちらは、背が低い。
帽子を冠っていて耳が見えないが、顔の様子から狸型の獣人のようだとクラノスケは感じた。
「急に話しかけてすみません、私はエステル・ヤンジーといいます。
神聖都市ラカルを飛び出し、旅の神官をしております 」
狸獣人はエステルと名乗り、お辞儀をした。
挨拶で垣間見える所作から位が高い神官をしていたと想像できる。
エステルは続ける。
「初対面でこのようなお願いなんて、大変無礼なのは承知ですが、
私たちとパーティを組んでいただけませんでしょうか? 」
(なんて可愛いんだ。礼儀作法も完璧じゃないか。背も小さいし問題ない。
ノータイムオーケーを出してしまう所だった。いかんいかん、尻軽冒険者と思われてしまう。
ここは、一旦保留の返事だ。まだ早い)
「パーティメンバーはもうそちらの女性もいるのではないか?
明らかに弓の達人のような雰囲気を感じるぞ。戦力的には充分なのでは? 」
と、クラノスケは隣のエルフにも話を振る。
(うん、このエルフは並の顔だ。全然魅力を感じない。だが、エステルだけとばかり喋っていると、ロリコンがバレてしまう。ここは平等に話しかけよう。ぶっちゃけこのエルフに達人の雰囲気も異性としての魅力も全く感じない。ゼロだ。だが、初対面の冒険者だ、ちょっと持ち上げてやろう。会話が弾むかもしれん)
この間、0.6秒。
エルフが答える。
「確かに、ワタシの弓はすごいわよ。でも、女二人だと何かと危ないのよね。実はさっき、受付の人との会話を聞いてしまって、あなた全属性魔法が使えるっていうじゃない。そんな人、本当に珍しいのよ。見た目もとても紳士そうだし、ね、お願いします。一緒にドラゴンを倒しましょう! 」
(唐突なお願いではある。だが、自分は紳士・・・。この女エルフ並の顔だが、見る目はあるな。ゼノンともまだハグれたままだし・・・一緒にいってみるか。続けるかは、ダンジョンで戦いながら考えよう )
「わかった。では仮パーティというのはどうだろう。嘆きの遺跡の10階層を目指す。
そこで戦いながら、連携や性格などの擦り合わせをしつつ攻略していく。
お互いお試し期間という訳です 」
「ふふふ、お試し期間、いいですね。ありがとうございます。
とりあえず、よろしくおねがいします。ビビ、あなた、自己紹介まだですよ 」
「あ、そうか。ごめんなさい。アタシはヴァルヴァラ・ニコラエヴナ。西の城塞都市トラバキア出身よ。
得意な武器はもちろん弓。目が良いから、かなり遠くの敵も狙い撃てるわ」
と、ヴァルヴァラ・ニコラエヴナはクラノスケにウインクをする。
(汚い、やめろ。いかん、笑顔だ。第一印象は大事だ。エステルたんかわいい。エステルたんぺろぺろ)
クラノスケは、ユニバースに来て最高の笑顔を見せた。
こうして、パーティは結成されたのだ!!
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