第三十二話 冒険者ギルドへ
翌日、クラノスケは冒険者ギルドへ向かった。
目的は冒険者登録とダンジョンクエストを受注することだ。
元の世界へと帰るには、他の転移者を殺さなくてはならない。
だが、転移者も他の神様から転移者特典として強い能力を与えられている筈。
ならば、それを超えて強くなる必要がある。
冒険者になり、ダンジョンへ潜れば効率にレベル上げができる。
と考えたわけだ。
昨日、神フォンが光ったことから、少なくとも一人は王都にいる。
クラノスケにとって吞気に修行をしている暇はない。
早急に強くなっておく必要がでてきたのだ。
クラノスケの表情は決意に満ちていた。
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レオンガルド冒険者ギルド
クラノスケはちょうど胸ぐらいの高さのスイングドアを開けた。
西部劇の映画なんかで見たことのあるドアだ。
ギルド内は酒場とクエスト受付が併設しており、人で賑わっている。
各テーブルでは、荒くれ者たちが、笑いながら酒を飲んでいたり、裸で踊っていたりしている。
冒険者というのはどこへ行ってもこういうものなのだろうか。
「下品だな・・・。早く用事をすませよう 」
クラノスケは、受付の列にならんだ。
この人数なら少し待てばいいだろう。
待つことは苦手ではなかった。思考を巡らせていると時間をつぶせる。
考えることは嫌いではない。ぐるぐると同じことを考えるのは「悩み」になるが、
建設的に考えて結論に近づけていくことは「思考」だ。
思考はいい。前に進んでいると感じるからだ。
(どれ、今も思考の時間に興じるか。今日のテーマは何にしよう・・・。苦手なタイプとかどうだろう。
うーん、おれは、品がない男性が苦手だ。会話中に不用意にツバを飛ばしてくるヤツとか嫌だな。地面に吐くとか問題外だ。うーむ・・・デリカシーがないヤツが嫌いなのだろうか。羞恥心がないとでもいうのだろうか。例えば、屋外で全裸など言語道断だ。そんなヤツがいたら、剣で八つ裂きにする勢いだ。八つ裂き・・・か覚えておこう。自分の嫌いなタイプを把握していくことは、この異世界生活においても重要かもしれない。物事を引き受ける時や、相手を生殺与奪する際の判断材料にしよう。お、順番がまわってきたぞ)
「すいません、冒険者登録をしたいのですが 」
「ご新規の方ですね、そうしましたら、スキルカードの登録をさせていただきます。このカードにあなた様の血を一滴垂らしてください 」
と受付嬢が1枚のプレートを出してきた。
郷に入れば、郷に従えーー
血を垂らすことに一瞬戸惑ったが、
指示どおりにプレートに血を一滴垂らした。
プレートが輝きだす。
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