第二十二話 漫画を読んでいたおかげ。
お疲れ様です。
「エクスカリバーの形が・・・」
戦斧の柄が短くなっていき、手斧サイズに変化した。
両刃は、大きくなり、片方の刃には、
ノコギリのようなギザギザの刃になっていた。
「これはもしかしたら火を起こせるかもしれない・・」
ギザギザの刃を見てマサムネは閃いた。
以前見た漫画で包帯ぐるぐる巻きの男が、
ギザギザの刃の剣で炎を操っていたのだ。
マサムネは試しに、マッチに火をつけるように
ギザギザの刃を床にこすりつけた。
バチッ
火花が出る。いける・・・いけそうだ。
だが、炎とまでにはいかない。
何か油のようなものがあれば・・・。
皮脂・・・5年間蓄積された顔の皮脂を使えば・・・。
マサムネは顔を手でゴシゴシし、取れた油を斧のギザギザ部分に塗りたくった。
これならば・・・。
その時ーーー
「見つけたぞぉお、リンの敵ぃ」
青い髪かつ青いローブで全身を包まれた青ずくめの女、ピョウ・ブリザドリスが、
アイムールの部屋へやってきた。
「お前は、誰だ?」
早く、手斧の実験をしたいのに、アイムールを助けたいのに・・・
イライラしながらマサムネは女に尋ねた。
「ワタシは、魔界九家が一人、ピョウ・ブリザドリス。この街を凍らせたのはワタシ。
どう、悔しい?あなたみたいな無能力者にはなす術もないでしょう」
マサムネは目の前の女が何を言っているのか、一瞬理解できなかった。
「この街を凍らせた・・・だと?」
全ての元凶が目の前にいるのだ。
マサムネは、かつてない怒りを覚えーー笑った。
笑顔の全裸男が再びを斧を振るう。
マサムネは、ギザギザの刃を地面にこすり付ける。
火花が煉獄の炎になって、斧に纏う。
解説しよう。
皮脂を集めたからといって、都合よく燃えるわけではない。
マサムネはユグドラシルの森で、煉獄の炎によって灰になった経験がある。
そこから再生したマサムネの身体に煉獄の灰の成分が宿ったのだ。
それが5年分の皮脂と融合し、非常に燃えやすい油となった。
ちなみにマサムネは異世界に転移してから1度も風呂には入っていない。
ギルドにシャワーや風呂もあったのだが、いけるとこまでいこうという謎のチャレンジ精神が、この好機を生んだのだ。
「摩・擦・熱ーー!!!
バイバイゴシゴシとは真逆の理論で、マサムネは煉獄の炎を放った。
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