第十五話 熟女との戦い
「さあ、どこからでもいいわ。かかってきて」
熟女はマサムネの前に立ちふさがった。
5分前までは本気で、熟女とダンスできると喜んでいたのだが、
戦いと聞いて少し落胆している。
しかし切り替えの早いマサムネはこうも考える。
戦いとは、観察だ。ジロジロ見てもいい。いや、ジロジロ見るものだ。
熟女の身体をジロジロ見ることができる。
普段なら、キモい死ねと言われる。
だが、今なら合法だ。
「その条件、請け負う」
仮面の紳士がそこにいた。
「いい表情ね。いいわ、どこからでもかかってきな。
なんなら、あんたの得物を使っても良いわよ」
熟女は、余裕綽々でマサムネを挑発した。
確かに、森では戦斧を振り回しているだけで終わってしまった。
あの黒ずくめの男、死体は結局見つからなかったし。勝ったかどうかも微妙だ。
今、自分の武術がどこまで通用するか見てみたい。
「こおおおい!エクスカリバアアア!」
街の入り口に立てかけておいた戦斧は、マサムネの声に呼応するかのように天高く昇り、ギルドの屋根を突き破ってマサムネの元へと飛んできた。
斧が空けた穴から日の光が差し込む――
「おねえさぁあん、いきます 」
マサムネは、上段の構えから戦斧をふりおろした。
ブォン
「 ぐはぁ 」
一振りで衝撃波が発生する。
近くで見ていたグランツェは吹き飛ばされて壁に激突した。
しかし、衝撃波も斬撃も熟女には当たらなかった。
「くそ、くそ、くそ、」
マサムネはがむしゃらに斧を振り回す。
その度に衝撃波が生まれ、気絶しているゴンズとグランツェに
追加ダメージを与えていった。二人の周囲が血で染まる。
しかし、熟女に斧は当たらない。
約3時間がたった。ゴンズとグランツェは、虫の息だ。
「ふぅーふぅーふぅー」
「スタミナはまあまあね。でも、戦いは素人。
今までは運が良かったのね。でもオシマイよ 」
そう言った刹那、熟女はマサムネの懐に飛び込み
顎に思い切りアッパーを食らわせた。
マサムネ、ダウン。意識はあるが起き上がることができない。
完敗だ。3時間かけて一撃も攻撃を当てることができず、こちらは一撃で動けなくされる。圧倒的な力量の差をマサムネは痛感した。だが、清々しくもあった。
そんな寝たきりのマサムネに熟女は言う。
「あんた、センスはいいと思う。磨けば光るよ。どう、ウチのギルドで働かない?
ちょうど、酔っぱらいを抑える役が足りなかったのよね。
悪い話じゃないと思うわよ。武術も教えてあげる。うふふふ
アタイは労働力を確保できる。あなたは、戦う術を学べる。
あんな怪しいカッコしてたんじゃ、住むとこもないんでしょ。
ギルドの離れが空いているわ。
そこに住みなさい。家賃は給料から天引きでいいわよ。
ついでに朝ご飯もつける!」
「よろしくお願いします 」
マサムネは、最高に男前な顔で答える。
「うふふふ、アタイはギルドマスターのアイムール。よろしくね」
マサムネは異世界で就職が決まった!
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