第百三十話 夕日で育む関係性。
ピンポーン
ドアのチャイムが鳴る。
「今日は最高の一日だ」
フライドチキンをバーレルで、ピザのLサイズを二枚。
配達員からの届け物をテーブルにビッシリと並べていく。
食べきれるか食べきれないかは問題ではない。
好きな食べ物を並べること、そして無理をしてでも食すること。
それが大事なのだ。
「よし、今日は空気も澄んでいるし、外で食うか」
そう言うと水鏡マサムネは、テーブルに置いてあるピザの箱を持ち、
ベランダへとむかう。
偶々10階の部屋を借りることができたおかげで眺めは抜群だ。
ここから星を眺めたり、風を感じたりすることはシバシバある。
物思いにふけるということは大切なことだ。
今日は夕日がとてもきれいだった。
沈む太陽をぼんやりと見るだけで、心が洗われるようだ。
そんなことを思いながら手に持っているピザを頬張る。
1枚2枚・・・夕日に見惚れながら食べていく。
3枚目を口に入れた時点でピザが喉につまった。
マサムネは大慌てで飲み物を探す。
慌てすぎて、手に持った物を次々と投げていく。
ジュースもお茶も見つからない。四畳半の部屋へとダイブ!
そこでマサムネの意識は途切れた。
▼▼▼
男は思考を巡らす。
(まだ、大丈夫だ。覗こうとしていたとはいえ、この状況では盗撮カメラもない。証拠はゼロというわけだ。ただの隣同士の住人がベランダで目が合っただけ。良くあることではないか。ここは冷静に爽やかに)
「こんにちは」
「こんにちは」
隣に住む金髪の女性は男に向かってニコリと微笑む。
「見てください、夕日がキレイですよ」
「そうですね。ワタシもそれを見ようと思って出てきたんです」
「そうなんですね。あ、これは失礼しました。そういえば、ご挨拶がまだでしたね。私は不動ユキミツという者です。これからよろしくおねがいします」
「ご丁寧にありがとうございます。流石、日本の方は礼儀正しいですね。私は外国からコチラに来たばかりで、マナーとかがまだわかっていないことも多いかと思います。よろしくお願いします」
「はははは、そんなことはお気になさらず。お名前をお伺いしても?」
「ヴァルヴァラ・ニコラエヴナです。どうぞビビと呼んでください」
「じゃあ・・・ビビさんですね。よろしくお願いします」
ここで男――不動ユキミツは難局を乗り切ったことに安堵する。
(グレートだぜ。冷静に対処すればこれくらい造作もない。
それどころか、ちょっとした知り合いになれたではないか。
ここからは覗きをしなくとも、ちょっとベランダから顔を出して交流する関係が始まるかもしれない。手料理を分け合って食べるみたいな風習があると教えていけば、部屋に上がりこむことも可能・・・。
グレートだ。そんなドラマみたいな展開・・・・)
「あると思います!!」
不動ユキミツは感情が高ぶり思わず声にだしてしまっていた。
しかし、ビビは特に気にしていない様子だった。
「ところで不動さん」
「なんでしょう?ビ、ビビさん」
「どうして、ズボンもパンツも履いてないんですか?」