第百二十九話 ●●の場合
「ふぅ・・・」
男は今しがた賢者タイムを終えた。この男、この日6発目である。
今日は仕事が休みで1日予定はない。
だったら平日の3倍だ。という意気込みでの荒技だ。
恐ろしいことにこれをあと何度行なっても、男の欲は衰えない。
底なし沼なのだ。
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴る。
男は急いでズボンをずり上げ、カメラから来客者を確認する。
「すいませーん、水鏡さんの御宅でしょうか?宅配便です!」
「ああ、水鏡さんなら、2つ隣の部屋ですよ」
「あ、そうでしたか・・・大変失礼いたしました」
そういうと配達員は、男の部屋を後にして2つ隣の部屋へと向かった。
もう少しだけ賢者タイムの余韻に浸りたかった男は酷く苛立つ。
「こういう時はアレをしよう」
男はベランダに飛び出し、隣の部屋を覗き込む。
部屋と部屋の境界は低い壁がしかれている。
だが、災害時に避難しやすいように蹴破れるくらい薄い。
男はその壁にそって木の板を立て掛けていた。
マンションのベランダというスペースを活かしたガーデニングだ。
実際は植物に興味など微塵もなく、ただ盗撮用のカメラを設置しやすいように置いているだけだ。
この仕組みを利用すれば隣の部屋のリビングぐらいは覗くことができる。
2週間くらい前から隣の部屋は留学生が引っ越してきていたのだ。
どこの国かは定かではないが、ハーフのようだ。全裸とまではいかないが、
下着姿は拝むことができた。非常にヘルシーな肢体で、それを隠れて見ることに、男は快感を覚えた。
これまでは慎重にことに及んでいたのだが、苛立ちのあまり男は冒険してしまった。
「今日はダイレクトに覗いてやるぜ」
男はベランダの壁から頭を少し出し、隣の部屋を覗く。
既に自らのズボンは脱ぎ捨て、いつでも賢者モードになることができる。
これが成功すれば七賢者の誕生だ。まあ賢者は一人だけなのだが。
(今日はリビングにいないようだな・・・チッ、外出中か)
男はさらに苛立ち視線を隣のベランダに向ける。
金髪のハーフ美女と目が合った。




