第百二十四話 泥仕合へ
「アイムール流操斧術弐式――乱れ金盞花!」
マサムネは、突っ込んでくるトウに対して斧を振り回す。
トウは千手で迎撃する。
「ふはははは、無駄だ!貴様の竜闘気も俺のバリアで無効化してやる!!昔からバリアは絶対無敵なのだ!!」
しかしマサムネの斧は千手に弾かれることなく、千手を打ち砕く。
「やっぱりな、おめえのバリアは限定なんだよ。闘気には闘気、竜気には竜気といった具合に対応したバリアを貼らなきゃ防げねえんだ。だったら勝機はこっちにあるぜ。竜気か闘気どっちで殴るでしょうか!!」
「このくそ全裸ああああああああああ」
ここからは泥仕合だった。
マサムネの竜気か闘気のどちらかを込めた斧を、トウが竜気か闘気のどちらかを帯びたバリアで防ぐ。気が合えば、マサムネが殴られ、気が合わなければトウの千手が砕けるという寸法だ。お互いに身を削り合うデスマッチが始まったのだ。
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「はあ・・・はあ・・・はあ・・」
クラノスケは疲労困憊で思わず地面に剣を突き立てる。
もうこの場所で何日クリスタルと闘ったのだろう。
体力が続く限り光速ビームを躱し、クリスタルを潰す。
倒れると魔法神の怪しげな魔法で無理やり回復され、また闘う。
彼女曰く、この空間は魔法の力で時間の流れがないのだとか。
原理はわからないが、焦る必要はないということだ。
せっかくならジックリと力を蓄えて戦場へ戻ったほうがいい。
誰にも負けるわけにはいかない。
自分には妻と子どもを取り戻さなくてはならないのだ。
「立ちなさい、クラノスケ。このままでは、かの地蔵はエスタの手駒に倒されてしまうわ」
アレクシアは頻りにクラノスケを急かしていた。時間の流れが違うのなら問題ないように思うのだがどうなのだろう。
「キシシシシ、アレクシア様そう急かさないでやってくださいよ。休憩がてらアッシとお話でもいたしませんか?」
突如、魔法神とクラノスケしかいない空間に眼鏡をかけた男が一人現れた。
「あら、エスタの右腕ではないか。久しいな。1000年ぶりか・・・何用だ。消し炭にされにきたわけではあるまい」
魔法神は突然の訪問者に心当たりがあるらしい。言動から友人というわけではなさそうだ。
「クラノスケさんにとっては、初めましてですかね?何度かニアミスはしていたのですが、アッシはヤグルシと言います。以後お見知りおきを。きっと忘れられない名前になると思いやすよ。キシシシ」
ヤグルシと名乗った男の軽妙な態度に魔法神の空気が変わる。このままの調子だと、本当に消し炭にされそうだ。
「そんな殺気出さないでくださいよ〜今日は大事なお話をしにきました。
ミレニアムアームズの話です」