第百二十二話 ゼノンのトラウマ
ガギィ
爆風を利用したマサムネのエクスプロージョン薪割りを、トウ・バレンシアは背中の腕で受け止めた。あまりの衝撃に地蔵の足首が地面にめり込んでいる。
「竜闘気か・・・いつぞやとは違うみたいだな」
残りの腕でマサムネを迎撃しようとするが、マサムネは腹を蹴って距離を取った。
「そのまま黙って埋まってりゃあ地蔵らしくなるってもんだぜ」
「マサムネ・・・遅すぎよ・・・もう」
ビビは目を真っ赤に腫らしてマサムネを見つめている。
「ビビ・・・」
そんなビビをマサムネはそっと抱き寄せる。
全裸の男がボロボロのエルフを抱きしめる。知らない人がみたら通報される案件だ。
しかし、マサムネはそのままビビを抱きかかえるとゼノンの方へぶん投げた。
「今から大暴れするからな。ゼノン、頼んだぜ・・・」
ものすごいスピードで飛んでくるビビをゼノンは咄嗟に抱きかかえ、そのまま倒れ込んでしまった。
「無茶するなぁ・・・もう・・・」
ゼノンは呆れた声を上げながらも表情は紳士の顔をしていた。
突然、初めて女性に触れる機会がやってきたのである。ダラしない表情はできない。
あくまで無理やり押し付けられヤレヤレ感を出す。そうすればこのピンチを乗り越えられる。そう思っていた。あとは手汗がひくのを待つばかりだ。
「ゼノン・・・股間がファイトマンマンよ?」
ビビのじっとりとした一言にゼノンは氷つく。またどこかの草原で寝そべった時に思い出すトラウマとなったのだ。
「さて・・・待たせたなお地蔵さん。決着をつけようぜ」
マサムネは笑いながら斧を構える。前回完敗した相手だが不思議と恐怖心はなかった。
先ほどのザイ・カロットを瞬殺できたことも自信に繋がっている。自分は強くなった。やるだけのことはしたのだ。
「フフフ・・・腕を上げて来たようだな・・・楽しませてくれよ」
マサムネのリベンジマッチが始まった!