第百十七話 決戦の地へ
ゼノンの暗黒闘気拳が不発に終わっている頃。
地上での闘いも正念場をむかえていた。
「はぁ・・・はぁ・・・年寄りに長期戦はキツイぞ・・・」
ハゲたドワーフ——ゾファルは息を切らせながら悪態をつく。
鉄球の棘は欠けて次第にデカい球体を投げつけている呈になっている。
「気づいてるゾファル・・・あの竜人、少しずつスピードが上がっているのよ。
それに身体を覆っているオーラ・・・あれは竜気よ」
ネルヴァも剣を地面に突き刺し、疲労困憊の様子だ。
「竜気か・・・竜人じゃからもしやと思ったが・・・厄介じゃな・・・」
二人とも会話をしながらも攻撃はくわえている。
少しでも手が止まるものなら、渾身の槍が飛んでくるのだ。
声を発せないトラムは黙々とカロットの死角からナイフを投げ続ける。
トウ・バレンシアの千手同様、トラム・ザムのナイフも無限のようだ。
「諦めないで・・・きっとあの変態がくるから・・・マサムネがくるから!!」
ビビは祈りを込めて闘気の矢を放つ。
天空を舞い、弧を描き、まるで流星のようにカロットへと降り注ぐ。
流れ弾がいくつか倒れている四季騎士に当たっているが、誰も気づかない。
戦争とは無情なものだ。
ザイ・カロットはダメージを受けながらもせまりくる攻撃をいなす。
一対四の闘いは長期化していく。
▼▼▼
霊峰ノースノーザンパイル
雪が降り積もる極寒の土地に、一人の男が埋もれていた。
「マサムネ、起きて」
男の側にいる一人の少年が話しかける。
プス。男は雪に顔を埋めているので返事ができない。
代わりに表に出ている尻で返事をする。
「神相手に下品、早く立つ」
少年は腕をかざし、埋もれていたマサムネを雪から出す。
「修行は終わったよ。見事。
最後に踏ん張ったその力、忘れないでね」
しかしマサムネは、返事をしない。
どうやら気を失っているようだ。
「時間がないから転送するよ。
ここよりも気圧が低いところに送るからバッチリ目が覚めるよ」
そうして武神タウ・ミノフスキンはマサムネを転送する。
決戦の地、その遥か上空へと。