第百十話 現界
「バカな・・・バカだとは思っていたが・・・敵の挑発に・・・」
ゼン・ヴェルトは絶望した。
ザイ・カロットが地上へ降りた後、魔族艦隊はまさに地獄絵図になったからだ。
クラノスケの広範囲光魔法、ビビのビーム連射、そしてアクアジェラートの秘密兵器、施設中の電力をフル活用し発射する高エネルギー波。電力源は、もちろん人力である。
そんな高威力の範囲攻撃を立て続けに直撃した艦隊はほぼ壊滅状態となった。
咄嗟に防御魔法を展開した艦もあったが焼け石に水。
ほとんどがエンジンを破壊され海へと墜落していった。
「グヌヌ・・・まさか味方がここまで足を引っ張るとは思っても見なかったぞ・・・。こうなったら・・もうこの怒りは自分の拳でぶつけるしかないぞ!!白兵戦だ!!!」
魔族の指揮官はその場にあるものを壊しまくり、叫びながら指令をつげた。
一方その頃、人間サイド。
「うおおお、敵がゴミのようだ・・・」
スノウは興奮している。
ビビやクラノスケなど後方で待機していたメンバーと同じく戦況を見守っていたのだ。
「同士たちよ!!選定者たちによる、圧倒的な範囲攻撃が決まった。形勢は自軍に傾いているといえるだろう。兵の数で圧倒的に劣勢だった我が陣営、その差をゼロに近づけたのは大きい!この戦、勝てるぞ!!」
高揚したスノウは周囲に檄をとばす。これまで王国の宰相として、度重なる魔族の襲撃に頭を悩ませていたのだ。その闘いが終結するかもしれないのだ。熱狂するのも無理はない。
「四季騎士よ、このまま連携してザイ・カロットを倒しましょう!!クラノスケさん、ビビさん、隙あらば狙撃してくださいね」
スノウの怒濤の提案にクラノスケとビビは愛用の武器を構え直す。
「 いいえ、グッドルッキングはここまでよ 」
その声が聞こえた刹那、まるで時が止まったようだった。
茶色い髪を靡かせ、聖なる法衣に身をつつむ絶世の美女がそこにいた。
その場にいた誰もが何か声を出そうにも出せないでいる。
無理も無い。それほど、目の前の存在に心を奪われてしまったのだから。
魔法神アレクシア・グッドローズが現界した。