第百五話 最後の修行
「ひゃい!!なんじゃい!」
気づいたら、犬神家の一族のような格好で雪面に刺さっていた。
容赦のない冷たさのおかげで、頭の中がクリアになっていく。
「おれは・・・あれ?ビビは?みんなは?」
マサムネは辺りを見渡す。
360度雪で覆われた氷の世界だ。
側には一人、おそらく自分自身をここまで連れて来た少年だ。
「タウ・・・あなたがここに?」
「そう。修行の続きする」
タウは断言した。マサムネの意思確認は以前の問答で行なった、他にどのような事態になってもそれが優先されるのだ。
「修行は、一つだけ。終われば解放」
タウの一言にマサムネの顔は明るくなる。正直、早くビビたちと共に闘いたいと思っていた。しかし、行ったところでトウ・バレンシアに勝てなくては意味がない。
それはそれ、これはこれ。ならばマサムネは早急に闘いを終わらせねばと決意した。
「わかった、どうすればいい?」
「この樹を斧で斬る。それでオシマイ」
タウは、そばにある大きな大樹を指さした。
関取が三人分くらいの太さのある樹だ。
(マジか・・・ドラゴニウムと融合した今のオレなら、これくらい一撃でいけるだろう。なんだよ、こんなことで強くなれるのか・・・)
この間10秒
マサムネは、斧を呼び、そのまま大樹の前で踏ん張り、構える。
カコーン
一閃、マサムネは全力で大樹に向かって斧を打ち込んだ。
しかし、大樹はびくともしない。傷一つつけることはできなかった。
「その樹の名はガオケレナ、伝説の巨樹。人間が一生かけても傷一つつけられないぐらい硬い。あまり舐めるな」
タウの言葉は厳しかった。
マサムネは、決意を新たに斧を振るう。
カコーン
乾いた音だけがむなしく、霊山に響き渡っていた。