第百三話 君の引き立て役になりたい
「どういうことか説明してもらえますか?ゼノン」
ジン・ノヴァはニコリと微笑みながら目の前の魔族に尋ねる。
「言葉通りの意味さ。魔族を背負っているお方に花を持たせようと思ってね」
ゼノンは、淡々と話しを続ける。
「要はマッチポンプさ、君の引き立て役にオイラはなりたいと言っている。互角の闘いができるかはわからないが、きっとここにいる皆にとって良い余興となるはずだ。戦争の前に士気を高めることは必要だろう?オイラを利用してくれ」
マイクの音を切っていたので、会場にはゼノンの声は聞こえない。
(どういうつもりだ・・・あの出来損ないが流暢に提案してくるなんて・・・しかし、雑魚が粋がった所で俺に勝てる道理はない。魔族のエリートと落ちこぼれの差をみせるのも必要か・・・屋敷の件もある。部下の中にはアイツに一目置く奴も少なからずいた。ここで実力差を見せつけてやるか。どうせ奴のことだ、やせ我慢が上手になっただけだろう。ハッタリだけで、このジン・ノヴァを倒すことはできん)
この間13秒。
ジン・ノヴァはマイクのスイッチを入れる。
「おお、我が友ゼノンが激励の演舞に来てくれた!皆!この男に盛大な拍手を!!」
ノヴァのマイクパフォーマンスで会場は盛り上がる。
ゼン・ゼノンの落ちこぼれ具合は魔族の誰もが知っている。
そんな男が無謀にもニューリーダーにケンカを売ったのだ。
闘いの前に一方的な虐殺ショーが見れることに戦士達は歓喜した。
「では、いくぞ、友よ」
(時間が惜しいので早めにきりあげよう。アイツは遠距離魔法ができない。遠くからコレでフィニッシュだ!!)
「ツインセイントノヴァフレイム!!」
ノヴァは、両手を前に突き出すと、掌から白い熱線が放出される。ジン家は光魔法の家系、光属性はお手の物だ。さらにジンは神童と呼ばれ、幼い頃から全属性魔法の適正があった。これは、光と炎属性の混合魔法、並の相手だと一溜まりもない。
ゼノンは、せまりくる熱線に手を突き出す。そして―――
「永遠なる豚野郎」
直撃した。