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ユニバース!  作者: ふぁい
第八章 人魔決戦編
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第百二話 開戦前

少し時間は遡る。


アクアジェラート侵攻二日前、


魔族の魔族による魔族の為の国――大国無頼にて




「兵器搬入急げ!!遅いよ!何やってんの」


「仕方ないだろう、九家の半数以上が当主不在なんだ!」


各区画で怒号が飛び交っている。

先日、首都孤月に緊急会議が開かれてからというもの、

無頼では戦争の準備が急ピッチで行なわれているのだ。



その狙いは、一つ。

人族の領土を手に入れること。



九家筆頭のトウ・バレンシアがそう命じたようだ。

当主が次々と倒されていく中、市井では降伏ムードが高まっていた。



しかし、トウの分析では人間側にも戦力は残っていない、

魔族が全兵力を投入すれば、100%勝てる、とのことだ。


普段は感情が読めない地蔵が拳を振り上げて演説する。

他の九家当主も心を動かされたようだ。



兵器部門は、武器の知識が豊富なザイ・カロット。

部隊編成は、九家一の古参、ゼン・ヴェルトが取り仕切っている。

総大将は、筆頭戦力のトウ・バレンシア。


残る一人はというと・・・



「ジーク・魔族!!」


演説の練習をしていた。



ジン・ノヴァ――魔界九家ジン家当主。

その若さにも関わらず、当主の座に君臨し、

魔族の中でも新時代のプリンスや若頭という声も少なくはない。

その甘いマスクと圧倒的な戦闘力で、今回の戦でも武功を期待されているのだ。



「ノヴァ様・・・そろそろ時間です。緊張されていますか?」



ジン家の側近がノヴァの私室まで迎えにきていた。



「緊張だと?死にたいのか?無頼の民はいま、新しいリーダーの声を待ちわびているのだ。言わばウエルカムモード。臆するわけがなかろう。ついてこい」



プラチナの髪をなびかせ、ジン・ノヴァは堂々と扉を開けた。

演説会場は、トウ家区画コロシアム。



約1000万人を収容できる会場には、各家門に属する戦闘員たちが一同に会し、

士気を高めようと今か今かと指揮官の言葉を心待ちにしている。




しばらくして、ジン・ノヴァが会場に到着し、コロシアムの中心へと足を進める。

今回、ジン・ノヴァが演説を任されたのには理由がある。

先鋒部隊の指揮官として若きリーダーシップを発揮して欲しい。

そんな他のベテラン当主たちの期待のあらわれなのだ。老兵は若手にチャンスを与える。

こうでなくっちゃ魔族の未来も明るくない。と考えたのだ。


ノヴァ本人も、目立つことは嫌いじゃない。むしろ大歓迎なのだ。

この闘いで武功を立てて、アナウンサーの嫁をもらい、

結婚インタビューで「この女性の前では鎧を脱いでもいいんだ、そう思いました」とか、言いたいらしい。



そんなニューリーダーが司会からマイクを渡され、声を発しようとした瞬間。



「ちょっと待ったああああ」



客席から大声をあげて、一人の魔族が降りてくる。


銀色の髪をなびかせ、黒ずくめの装束を纏った紫色の男。



ゼン・ゼノンだ。



「ジン家当主、ジン・ノヴァ殿、其方に決闘を申し込む」


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